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吉村昭 / 新潮社 (109件のレビュー)
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総合評価:
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bookrokuid
なんだろうな...海の恵みの描写とか四季の移り変わりの描写とかうつくしい風景目白押しのはずなのに人々の暮らし描写の陰鬱さがそれに並ぶ不思議。村から出たいとも思わず村長を中心に一致団結することで暮らしが…成り立つ不思議。地方の因習ネタのホラーとか好きなんだけど現実に即するとなるとこうなるのか...続きを読む
投稿日:2024.02.06
ユーイチ
一人前の漁師/大人になるという自覚が芽生え始めた少年が主人公。出稼ぎ(身売り)により父が不在の三年間を描く物語。 読み進めて早い段階から、自然現象に左右される寒村という共同体の、心細さと危うさが重く…のしかかり息苦しさが続く。それでも、主人公が徐々に成長して生活は安定に向かうのかと思った矢先、ついにお舟様が到来し、寒村の日常は狂い始め、あまりにも悲劇的で無情な幕引きへ。 村人の自死シーンでサラッとギョッとすることが書いてあったり、村人達の犯す大罪がテキパキ機械的に進んだり、文体/描写はかなり淡々としていて、だからこそ抵抗できない暴力の怖さ不穏さを強く感じた。一方で、クライマックスの母の健気な強さには胸を貫くような切なさがあり、あわや落涙するところだった。 230ページとは思えないくらいズシンと重厚/濃厚な一冊。続きを読む
投稿日:2023.11.10
ポレポレ
このレビューはネタバレを含みます
本作は少年の視点から綴られる僻地の寒村の3年間の物語だ。大人が年季奉公で廻船問屋に売られ、未成熟な子どもが一家の労働力として漁をせざるを得ない貧困。村に大きな幸を齎す“お船様”(難破船)を求めて祈り、実際に到来したなら情け容赦無く積荷を奪い取る共同体全員での犯罪。その“お船様”によって富ではなく疫病を齎され、村があっという間に崩壊寸前にまで追い込まれる厄災。これら苛酷で不幸な日々が無駄を削ぎ落とした簡明な文章によって描写され、読者に強烈なリアリティーを与えてくる。
投稿日:2023.10.26
bmaki
会社の先輩からお借りした一冊。 この作者の本は、漂流から2冊目かな? 漂流もこの先輩からお借りした本だった。 漂流もリアリティ溢れ、臨場感が半端ない小説だったが、この本も凄い! 目の前に情景が現れ…る。自分がその村に迷い込んだような錯覚を起こす。 すっごい惹きつけられる小説なのだが、常に恐怖感が付き纏っていた。 何処か不気味で、何かに怯えながら読んでいた気がする。何に怯えていたのかは、読み終わった今も謎だけど(^◇^;) 北の海に面した、貧しい村が舞台となる。 痩せた土地には雑穀しか育てたない為、村民は鰯やイカ、タコ、秋刀魚などを採り、隣村まで売りに行き、穀物と交換してギリギリの生活を送っていた。 いや、ギリギリ以下の生活だったのだ。 そんな村だが、冬の海が荒れ狂う頃、貨物を乗せた船が座礁し、荷を村民で分かち合うことができた。 それはお船様と呼ばれ、村民はわざと天候の荒れる日に塩を作るために火を起こし、船を村の方へ誘い込むのだった。 そんな村にある日災が起こる。。。続きを読む
投稿日:2023.09.25
yama3plus
「破船」は2022年の本屋大賞の「超発掘本!」選ばれた本でもあります。本屋大賞の「超発掘本!」とは、ジャンルや刊行年を問わず今読み返しても面白い本が選出されるものです。 日本海沿岸の閉鎖的な貧しい…寒村。土壌が痩せて作物もうまく育たず、魚介類もその場しのぎ程度の漁が精一杯の土地。村人たちは近海を通る貨物船の船荷をあてに座礁を祈る。 生きることがこんなに苛酷だとは...。ちょっと気分が暗くなってしまいますが、海外でも広く評価され、多くの国の言語に翻訳された作品でもあります。続きを読む
投稿日:2023.09.17
深川夏眠
既に記憶も定かでないが、ひと月ほど前、 どこかで絶賛レビューを読み、興味を持ったので購入、 読了。 しかし…… そのレビューを最後まで読まなければよかったと後悔。 何だかよくわからない状態で本編を読み…進めた方が 終盤の衝撃が大きかったのでは……と。 そう、つまり、当該レビューは ガッツリとネタバレしてくれていたのです……(怖)。 もっとも、購入時点で帯の煽り文句を読んだら、 ネタバレレビューに接しなかった人でも オチには見当がつくはずで……。 作者の名前はぼんやり見知っていた程度。 で、(未読だけど) かの有名な『羆嵐(くまあらし)』の作家か、 そうだったのかと今回初めて認識(←ぼんやりしすぎ)。 さて。 藩という語が出てくるので、設定は江戸時代と思われる。 九歳の少年・伊作(いさく)の目に映る、 生まれ育った海辺の寒村。 三人称一視点で淡々と進行する、さして長くない物語は、 容赦なく貧しい村の厳しい状況を活写する。 飢えから家族を守るため、性別問わず若くて体力のある者は 年季奉公という名の身売りで村を離れていく。 伊作の父も三年契約で峠を越えた。 父が報酬を得て達者で帰るまで、 伊作は母と共に幼い弟妹を守らねばならなかった。 伊作は漁に出、 民(たみ)という名の少女に仄かな恋心を抱き、 製塩にも携わり、弟・磯吉に漁の手ほどきをし…… やがて、行事を通して村落の秘密に接する――。 終盤の大惨事は、村民一同が長年に渡って積み重ねた 罪業に対する罰のようにも受け取れる。 もう少し詳しいことを 後でブログに書くかもしれません。 https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/続きを読む
投稿日:2023.08.31
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