【感想】こころ

夏目漱石 / 新潮社
(1312件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
535
393
227
24
7
  • 一度は読んでおきたい作品です

    こういった本というのは人生で一度は読んでおきたい本です。
    主人公の”私”が敬意を払い信頼している”先生”。
    人生の中でそういう人に巡り会えることはとても幸せなことです。
    しかし、その先生にも、人には言えない過去があり、
    その人生を一通の手紙で受け取ったとしたら。
    信頼してくれる書生に対して、なぜそのような手紙を書こうと思ったか
    そして、受け取った主人公の”私”の心情はどうなってしまうのか。
    読み終えた後に胸に突き刺さる作品です。
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    投稿日:2015.07.08

  • 語らないことを語る こころ

     「先生と私」・「両親と私」・「先生の遺書」 の構成が実に見事です。
    家族構成あるいは人間関係図, そして時代が違っても、人の世の姿の根本は変わることなく繰り返されている感が、そこかしこに垣間見える幾つものループによって読者を引き擦り込み、次々に頁を捲らせます。 そして、「先生の遺書」 を読み終えた後に 「私」 が語り出す 「先生と私」 ...で、 読者は再び小説の冒頭部に引き戻されます。
     言葉の厳選が強く感じられる作品ですから、旧字・当て字にめげず、原文で読むことをお勧めします。
    小説の中心を成す 「先生」 は、語り手 「私」 の記憶の中で殆ど喋りません。
    「先生」 が遺書で一気に語る過去は、喋りではなく、推敲を重ねた長文です。 あからさまに細かく事実を語っているようで、真実は実は語らなかった姿にこそあったと感じられます。 最期に、明治天皇の崩御に際して自殺を決心したと述べつつも、死の大義名分でしかなく、殉死が真実ではありません。
     そして、何故、「私」 に遺書が送られてきたのかを深く考えさせられ、人の 「こころ」 を想わずにはいられません。
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    投稿日:2014.09.15

ブクログレビュー

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  • みさきんぐ

    みさきんぐ

    何度目かわからない再読。
    「いやそうはならんやろ!」と思わずに、自分の価値観をいれずに、登場人物たちに寄り添って、彼らの人となりや価値観を偏見を持たずに理解するようにして読みたいと思う。

    投稿日:2024.04.07

  • risa

    risa

    どす黒くてどうしようもないこの心は、
    自分だけが持っているものじゃないんだってことを教えてくれた。
    明るい内容じゃないのに、ものすごく心が救われる。

    人間みんな、そんなもの
    そう割り切って生きていこうって
    諦めとはまた違う勇気を貰えた。

    この小説に出逢えて本当に良かった。

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    投稿日:2024.03.27

  • movieychang

    movieychang

    このレビューはネタバレを含みます

    読むのに3ヶ月かかった。 ”私”といる時の先生は厭世的なのに Kといる時の先生は俗っぽくて感情が剥き出しなのが面白い。Kの死後とその前で気持ちが変わったのもあるけど。人によって性格が違うように見える先生の本当の性格がわかるのは”私”の手紙の上だけなのかもしれない。
    お嬢さんが見た目も中身も綺麗なままでいて欲しいと思って自分の最期までも死体を見せようとしないのも、わかるなあと思ってしまった。綺麗な人には綺麗なものしか見てほしくないなと思った。Kの死体の描写がついさっきまで生きていたものであることがわかるような書き方で気分が悪くなりそうになった。襖に散った鮮血を想像してしまった。
    女性の描き方が前時代的と言われているが、実際前時代の作品だし仕方ないなあ。”私”や先生の語り口は女性をものとして扱っているように見えるがKの死後の奥さんの段取りの良さや全てを見透かしていそうな妻の様子はどの登場人物より頼り甲斐があるように感じた。

    好きなところ:「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」 「ある時私は突然彼の襟頸を後ろからぐいと攫みました。こうして海の中へ突き落したらどうするといってKに聞きました。Kは動きませんでした。後ろ向きのまま、ちょうど好い、やってくれと答えました。私はすぐ首筋を抑えた手を放しました。」 「自殺する人はみんな不自然な暴力を使うんでしょう」

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    投稿日:2024.03.24

  • 電車で読書

    電車で読書

    国語の教科書で出会って以来やっと読めました。
    おそらくまた読む日が来るだろうと思います。
    恥ずかしながら、私は漢字や慣用句など苦手でございまして、漢字を調べ、注解を読みながらやっと読めたレベルです。
    しかしながら、もう読み終えた、もう理解した、などと思わせず、またいつの日か読んだ時の自分がどう感じるのか期待させてくれるものでした。続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • フレフレ

    フレフレ

    このレビューはネタバレを含みます

    このストーリーの核になるふたり『私』と『先生』は、ふとしたことがきっかけで出会って以降、似た者同士で波長が合うことからお互いにシンパシーを感じ合っていて『私』側からは敬意『先生』側からはノスタルジーの入り混じった感情で結びついていたように思います。

    彼らは、学びが『アウトプットのためのインプット』でなく『インプットのためのインプット』を繰り返しているだけで、おたがい、なまじ手元の資産があるだけに当面の生活費を稼ぐ必要性にかられていないため、表面上で他人とおなじように学校に通って勉強をなんとなくしていても、そこで学んだプロセスを社会貢献のためにうまく活かすことができない、という病理を抱えています。

    良く言えば人の影響を受けない・流されない、悪く言えば空気が読めないふたりは、人間として当たり前の姿をして人間のことばを使ってても、社会に適応できない障がいという『こころ』の病を患って生きています。

    『先生』は、直感的に『私』が自分の二の轍を踏むことを危惧して、それまで隠していた自らの過去を手紙にしたためてカミングアウトし、そして、自分たちとおなじように心の病を抱えていたであろう、この話のもうひとりの重要人物である『K』について語り始め、ここからストーリーが本格的な核心に迫っていきます。

    自分が思うに『先生』は、幼少期の頃の家庭環境の変化で心に消えない傷を負わされたのが災いして、自らと同じ様な立場に置かれている人に『必要以上に優しくしすぎる』きらいがあったのかもしれません。そして、更にはこの話の中で彼は後に、その優しさを天地がひっくり返るような形で意趣返しに用い、残酷な仕打ちをしますが、それも目に見えない『こころ』に対する配慮を欠いた無邪気ゆえの過ちと映ります。

    ここではあくまでも先生の捉えたKの行動しか描かれていないので、Kそのものが本当に先生の言っている通りの人物であるかどうかは事実か幻想かで割れると思いますが、書かれているそのままを信じるなら、Kのこころは感情より理性へのリソースがほぼ全振りされているような状態で、自分の感情が自分でわかりかねるこころの病を患っているんだと思います。そうであるなら、勉学に勤しむ集中力がある一方での、彼の住まいや色恋に対する意識の低さも証明されるはずで、全てに納得がいきます。

    そして彼らふたりは、生きた時間に差はあれど結果は同じように自らを殺めることを選ぶのですが、Kは感情と理性の大きな揺れ動きで自らの精神を保てなくなった衝動的な死、先生は年輪を重ねた先にとうとう良心の呵責にたえられなくなった末の死、と、あたかも、かたやストレートパンチで場外K・O、かたや何十年もつづく緩いジャブを受け続けてのダウン、のようなタイプの違うこころのダメージの結果が描きだされていると思います。

    この手紙を汽車に乗りながら読んだ『私』がその後どういう道を進んだのかは具体的に明示されてはいませんが、『先生』が『私』に投げかけたのは、要約すれば、弱い心では自身を自立させることも他者を思いやることすらもできず、どんなに能力があってもだめなんだよ。というシンプルな事で、それが伝わったか、伝わらなかったかでその後の未来は真っ二つに割れるということを著者である夏目漱石は暗示したかったのかな、と、読み終わって落ち着いたいま、勝手に感じたところです。

    いろいろと個人的にも考えさせられる内容でした。
    また夏目漱石先生の他作品を読みたいですね。

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    投稿日:2024.03.18

  • kayohiro

    kayohiro

    先生のKに対する、複雑な、そして根源的な、嫉妬や信用や不信といった、こころの揺れ動き、そしてその残酷な結果を十字架に、行きつづける業の深さの描写が、まさに名作。

    投稿日:2024.03.02

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