【感想】人間の建設

岡潔, 小林秀雄 / 新潮社
(182件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
50
62
34
6
1
  • 数学のような知の最先端の現場で出てきた感情の問題とは?

    小林は岡の『春宵十話』という随筆集に感銘を受け、対談に臨んでいるので、合わせて読みたい。
    事実、岡の話には考えさせられる点が多かった。

    神風に見られる日本人の自我の話は『永遠の0』に感動している我々に浴びせられた冷や水のようだし、数学者の考える「1」という観念、何であるかわからないしあるのかないのかもわからないが、この中に全体がある、なんて深遠な禅問答みたい。
    他にも、赤ちゃんの話では、自他の別もないのに、親子の情が先に育つということや、人間というものは感情が納得しなければ、本当に納得することの難しい存在など、われわれのどこに根本があるのかがよくわかる話。
    「矛盾がないことを説得するためには、知性が説得しても無力なんです。心が納得するためには、情が承知しなければなりません」
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    投稿日:2014.08.14

  • 「春宵十話」を読んで

    印象的だったのでリーダーストアで購入できる岡潔関連の著作を全部買ってみました。
    「春宵十話」の次に読んだのは「春風夏雨」、その次がこの「人間の建設」です。

    元々対談形式の文章があまり好きではないので、読後もこの考えは変わりませんが、初めの内はやはりつまらないかなと思いながら読んでいました。
    中盤あたりから共感したり興味を持ったりするような会話があり、読んでおいて良かったと思います。

    何故か小林秀雄が岡潔にインタビューをするようなイメージを勝手に持っていたのですが、小林秀雄が熱く語る場面も多く(そちらの方が多いのかも知れない)、ただ単に質問と回答ではなくお互いに考えを語りあうといった本でした。
    読み終えた後、なかなかユニークな本だったなぁと思いました。


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    投稿日:2015.02.04

ブクログレビュー

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  • Karen✲*゚

    Karen✲*゚

    普段使ってない脳みそを使って読んだ感じ、まさに筋トレというか脳トレ…!教育分野に関しても言及されていて、とくに素読教育の是非はわたしも賛成。初等教育の時点では子供たちはスポンジのように知識をスイスイ吸収していくので、九九だけと言わず、国語分野でも素読を入れるのは良いかもしれない。ちなみに教育に携わる者の給料が薄給なのはこの時代からだったのか…

    p.115
    小林 言葉と言うものを、主人はそれくらい信用していると言う、そのことなのです。言葉の組み合わせとか、発明とか、そういうことで新しい言葉の世界をまた作り出している。それがある新しい意味を持つことが価値ですね。それと同じように、数学者は、数というものが、言葉では無いのですか。詩人が言葉に対するような態度で数と言うものを持っているわけですね。

    岡 言葉が五十音に基づいてあるとすれば、それに相当するものが数ですね。それから作られたものが言葉ですね。

    小林 新しい数を作っていくわけですね。

    岡 数というものがあるから、数字の言葉というものが作れるわけですね。

    《読みたい本》
    小林秀雄 ドストエフスキイの生活、本居宣長
    プラトンの本
    ドストエフスキー カラマーゾフの兄弟、罪と罰、白痴
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    投稿日:2024.04.12

  • 9worldss

    9worldss

    このレビューはネタバレを含みます

    うーん難しい。普段使わない脳みその筋肉が頑張っている音がした。数学者の文章って普段読まないから思考回路が違くて面白かった。あと唐突にはじまる形式なのも、面白い。

    最後の解説で、茂木健一郎が「声に出して読みたい」と書いてあったが、そんな暇ないんだが!?と思う。茂木さんとの格の違いを見せつけられる。

    ====
    数学は、発見の前に必ず行き詰まる。

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    投稿日:2024.03.03

  • ykikuchi

    ykikuchi

    二人の偉人が対談している。小林秀雄さんと岡清さん。国語と数学。
    二人の思想、見ている世界を自分は残念ながら眺めることができていないので、会話についていけないところも多々あった。
    岡潔さんの書籍は何冊か読んだことがあるが、小林秀雄さんの書籍はまだ読んだことがない。今度は、小林さんの書籍を手にしてみたい。続きを読む

    投稿日:2024.01.18

  • echigonojizake

    echigonojizake

    日本を代表する数字者と批評家の対談。150ページほどで読みやすいように思うのだが、あれって改めてどういう意味なんだろう?と再読したくなる一冊。

    扱うテーマごとに広さと深さが感じられる。ドストエフスキーとトルストイのやりとりはその象徴。
    ①数学を扱う岡潔が人間理解についてとても執着している点、②批評家の小林秀雄がアインシュタインを批判的に考察している点、③お互いを尊重し違いを認めつつ情緒という点で2人が合意する点などは興味深い。

    あと、釈迦の無明のくだりはじわりと良さが染み込んでくる。岡潔いわく、「人は自己中心に知情意し、感覚し、行為する。その自己中心的な広い意味の行為をしようとする本能を無明という。」
    自己中心に考えた自己を西洋では自我、仏教では小我と呼ぶとしたうえで、「小我からくるものは醜悪さだけ」という。デカルトに代表される西洋近代の考え方を批判するあたりはふむふむとなる。

    2人とも言葉をとても大事にしている。小林秀雄の以下の言葉が象徴的でした。

    ある言葉がひょっと浮かぶでしょう。そうすると言葉には力がありまして、それがまた言葉を産むんです。私はイデーがあって、イデーに合う言葉を拾うわけではないのです。ひょっと言葉が出てきて、その言葉が子供を産むんです。そうすると文章になっていく。文士はみんな、そういうやり方をしているのだろうと私は思いますかね。それくらい言葉と言うものは文士には親しいのですね。
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    投稿日:2024.01.09

  • palestine

    palestine

    ただのメモ

    無明≒小我≒西洋的な自我
    人は自己中心に知情意し, 感覚し, 行為するものであるが, 自己中心的な行為しようとする本能のことを無明という.
    岡潔は無明をおさえれば, やっていることが面白くなってくるというが, これは無明を超えた真の自分の心, ユングでいう自己から俯瞰してみるということなのだろうか.

    一番面白かったのは, 数学が抽象的になってしまったという話だった.
    感情的に矛盾するとしか思えない二つの命題を共に仮定してもそれが矛盾しないという証明が出てしまったことにより, 知情意の知のみの領域へ入り込んでしまった. 矛盾するというのは情であり感情の満足であるが, これが納得しなければ本当にそうだと思えない. 感情抜きには情熱は生まれないものであり, 数学が学問として改めてどうあるべきか考える必要があると言う話だった.

    理性(常識)は感情を元にして働く
    直観とは感情の満足・不満足である

    ベルグソン
    ベルグソンの考えていた時間は僕たちが生きる時間
    時間は心(感情)≒情緒の一種
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    投稿日:2023.12.29

  • キキ

    キキ

    二度挫折して、三度目の正直で読み切りました。
    150Pくらいの薄い本なのですが、体力使いました。

    「難しい」とは何か?
    「わからない」とは何か?
    これらを考えさせられました。
    世の中の事を大体わかった気でいましたが、全然そんなことはなかったですね。

    この本は読んでいるうちに(100P超えたあたりから)癖になるところがあります。体力ある時にもう一度読み返したいと思います。

    お二人(小林氏、岡氏)は文系と理系とで全く異なる世界で生きてきたのに、波長が合っている様子がうかがえます。とても不思議。
    お二人の住んでいる世界感が同じだからなんだと思います。
    反対に、私は「住む世界が違う」って、こういう事を言うんだなぁ、と感じました。

    まず、二人の会話に登場する共通言語について行けないのです。
    結構得意ジャンルと思っていた文学・美術の話が登場しますが、ついて行けない。
    例えていうなら、富士山の麓から頂上にいる二人の会話を聞いている感じ。自分の文化教養度の低さを感じました。

    例えば、文中にトルストイ・ドフトエスキー・ピカソ、と言った名だたる巨匠の作品が登場します。
    彼らが創った作品がどんなものか、ざっくりとした知識はあります。
    しかし、彼ら(小林氏、岡氏)のように時代背景や作者の思いまでくみ取り、作者がどんな状況下にいて、何を訴えたくてその作品を創ったのか。作者についてとことん調べ、作品と作者を紐づけたうえで一つの作品として見ているんです。そのうえで、「これは好き」「これは嫌い」と判断している。
    物事を深堀りするっていうのはこういう事なんだな、と勉強になりました。
    (私は作品単体としか見てないよ。。。「薄っぺらいな、自分」と思っていたけど、そういう事なんだと思う)

    文学に至っては、実際に読んでいるか、も会話の肝となります。

    ”「白痴」のムイシキン公爵とか…”
    普段、こんな話しますか?笑
    この会話について行くためには、「白痴」を読んでムイシキン公爵がどんな人物なのか、ストーリーで彼はどういう役目なのか、本を読んでいることが必要なのです。
    普段から何を見てどう感じているのか。
    対象物が私とは全く違う。笑(住む世界が違うって、ここの違いだと思う)
    「わからない」って純粋に思ったのですが、そりゃそうなのです。読んでいないのですから。
    この本を読んで、久しぶりに「わからない」って感覚を抱きました。
    同じ日本語を話しているのに、知識がない故に理解できない。共通言語について行けないって、こういう事を言いたいのです。

    ”わかるということはわからないなと思うことだと思いますね”(抜粋)

    ものすごく考えさせられる言葉です。
    こちらの書籍は「わからないな」だらけでした。。。
    私も「わかる」に一歩近づけたということでしょうか。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.21

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