【感想】女の一生 一部・キクの場合

遠藤周作 / 新潮社
(48件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
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ブクログレビュー

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  • キじばと。。

    キじばと。。

    長崎に隣接する浦上村馬込郷に生まれたキクは、中野郷の青年である清吉に恋心をいだきます。しかしキクの兄の市次郎は、中野郷の者は「クロ」であるという理由で、キクが清吉とかかわりをもつことを反対します。やがて「クロ」とは、かくれキリシタンのことであったことが判明します。

    一方、日本にやってきたフランス人の神父であるプチジャンは、厳しい禁教令が敷かれていた日本で、役人たちの監視からのがれてひそかにキリスト教の信仰を守りつづけてきた人びとが存在していると聞き、彼らを見つけ出すことに情熱を燃やします。そしてついに清吉たちがプチジャンに接触を図り、プチジャンは彼らを正しい信仰へみちびこうと行動を起こします。しかし彼らの活動を知った奉行所に、清吉たちは捕らわれることになります。

    やがて江戸幕府の体制は崩壊しますが、そのあとの明治政府も禁教政策を引き継ぎ、清吉たちは厳しい弾圧を受けます。奉行所の役人である伊藤清左衛門は、清吉の身を案じるキクの弱みにつけ込みますが、彼女はみずからの身を削って清吉への愛をつらぬきます。

    「浦上四番崩れ」の史実をもとにした小説です。クリスチャン作家としてこれまで著者が手掛けてきたテーマが随所に示されますが、基本的にはキクの悲劇的な恋を中心にしたストーリーとなっています。
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    投稿日:2023.07.18

  • e-kakasi

    e-kakasi

     遠藤周作『沈黙』の初版本を半世紀前に読んで以来、遠藤周作のテーマにはずっと寄り添ってきたつもりでいたが、数年前、念願かなって、二泊三日ではあったが、長崎を訪れる機会に巡り合った時、私は、彼の地の切支丹の歴史はもちろん、「長崎」というものの本質的な姿、実体などもろもろ何も分かってはいなかったことを思い知らされた。唖然とするばかりだ。
     この『女の一生』一部、キクの場合を熟読した後の今も、頭の中の混迷はますます深まるばかり。

     とりあえず今、言えるのは、二部の「サチ子の場合」は、これを読んだ戦前戦中を生きた人々が物語の中に「あっ、サチ子は私自身だ」と感銘をもって共感できる典型を創造していったことだ。
     そして一部は、二部と真逆で、読者である「私の場合」とは全く別人の「キクの場合」を、物語を通して追体験させてくれた。ただ物語に登場してこない数多の人々の一人ひとりの"場合"が隠されていることを強く強く感じさせてくれる。何も、隠れキリシタンだけが長崎の歴史の悲劇を、ひとり背負っていたわけではない。それはキクがキリスト教徒ではなかったことからも推察できる。

    かなり言葉足らずの読後感で、誤解を招かなければと心配だ。
     が、私が大好きな戯曲『マリアの首』(田中千禾夫)の終末と、この一部キクの場合の終わりごろ、聖母マリア様がキクに話しかけるシーンが、降りしきる雪のイメージとも重なってとても印象的、詩的だ。
     やはり私は、未信者だが、母性的なマリア信仰にどうしても惹かれてしまうのだ。
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    投稿日:2022.08.01

  • カサンドラ

    カサンドラ

    このレビューはネタバレを含みます

    幕末の浦上四番崩れの一人を愛した「キク」の物語。

    「畜生ォー」。流刑地で主人公の怒鳴り声が響く。何に対する怒鳴り声か? 転んだ仲間に? 残酷な仕打ちをする役人に? 目に見えぬ権力に? それとも黙っている神に対してか?

    隠れキリシタンに対する投獄や拷問の小説は、読んでいてとても辛い。そして、私自身が無宗教のためか、信仰を棄てない信者の気持ちがわからない。口先だけで転ぶと言えばいいのに? なぜ?、と。

    拷問を避けるため、口先だけの”嘘”でも、キリスト教を棄てたと見做され、赦されないのか。「神」は、棄教を口走った弱者を見放すのか?本来、弱い人間こそ赦されるべきではないか?
    特に幕末の混乱の最中、そんなにも厳密・厳格なのか?と思えてしょうがない。

    エンディングで、「伊藤」が、津和野ですべてを話して、清吉に許しを乞う。「神は彼のような人を見放さなかった」という。拷問で死んだ人、獄中で亡くなった人、苦しんだ人、そして、キリスト教徒ですらない「キク」が、哀れでしかたなかった。”神”に赦されたとしても、私は、「伊藤」のような人間を、許すことができない。

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    投稿日:2021.11.14

  • 雷竜

    雷竜

     遠藤周作の本を読むといつもキリスト教の惨さを思う。どんなに祈ろうと、どんなに善行を積もうと、神は報いてくれない。それでもキリスト教信者は、神を信じ神に祈る。
     多神教徒なら都合のいい時に都合のいい神様に神頼みをするのに…
    でもだからこそ、心に滲みるのが遠藤周作の小説である。キクのような生き方こそ神様だよね。私は伊藤だ、熊蔵だよなぁって思いました。
     女の一生2部はないのかなぁ
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    投稿日:2021.07.04

  • 33panda

    33panda

     キクは気が強くて頑固で後先考えずに行動するタイプで、最初あまり良い印象がなかったが、“愛する者のために自分を犠牲にする強さ“に最後ウルっときた。

    投稿日:2021.05.07

  • たくぼん

    たくぼん

    このレビューはネタバレを含みます

    浦上四番崩れという明治初期のキリシタン迫害のことを題材にした内容。
    様々な登場人物の心模様が描かれて、人というのは弱い者だと、そして、神様など信じたりする事で強くもなれ、相手を思いやることが出来るようにもなるのだと思う。
    苦労をすることで、人々は繋がりをより強くし、相手をおもいやり、自分も成長していくものだと。

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    投稿日:2020.10.24

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