【感想】沈黙

遠藤周作 / 新潮社
(807件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
351
253
120
12
0
  • 内容は重めですが、遠藤さんの小説の中で一番好き

    遠藤さんは「不気味な静寂」を実に巧みに表現する作家さんだと思います。その場の空気、ほこりっぽさなんかまで伝わってきて、主人公と同調して息苦しささえ感じるほどです。この作品でも村に踏み込んだときの静寂が、恐ろしい予感と共に描き出されており、真にリアリズムを追及する作家なんだなとつくづく思います。

    クライマックスは、かつて敬愛した師との残酷な対面の場面。残酷なのは、なにもひどい体罰を加えられたり、むごい死に様の死体を見せられたりということではないのです。一番恐ろしい恐喝者は叫んだり激することをしないと言います。まさに、それ、です。

    遠藤さんは、「私はカソリックだが、私が生きていた時代に踏絵があったら、私は絶対踏んだだろう。間違いない。」というようなことを別のエッセイ集で語っています。そう素直に吐露できる人の書いた踏絵の話、興味がわきませんか?
    続きを読む

    投稿日:2016.07.20

  • 「神はいるのか?」

    2010/03/21記録。

    10年近く前に「深い河」を読んで以来の遠藤作品。

    物語は、尊敬してやまない先輩司祭のフェレイラが、
    島原の乱の後、切支丹への迫害がキツイ日本において、
    棄教したという知らせがローマ教会に入ったところから
    始まる。

    ローマ教会にとってフェレイラの棄教は、
    ヨーロッパ信仰の極東における敗北をも意味する。

    主人公ロドリゴと同胞のガルペは、マカオ経由で
    長崎に入り隠密行動の中で布教に務めるが
    やがて、囚われの身となる。そして、
    奉行所が切支丹信徒へ容赦のない迫害を加えるのを
    目の当たりにする。ロドリゴは神へ祈りを捧げるも。
    神は沈黙を破らない。決して救いの手は差し伸ばされない。

    まさに、「あなたは神を信じますか?」
    「神はいるのか?」を命題にした内容。

    前段は、なんとなくだるくてなかなか読み進まなかったが、
    ロドリゴの心の葛藤がクライマックスになるにつれ、
    カレの中の祈りとそこに含まれる疑念が渦巻く感じが素晴らしい。

    個人的に「絶体神」という存在はいないものだと
    思っているので、その点のロドリゴの苦悩に共感は
    しなかったが、極限状態に追い込まれた宣教師の苦悩の描写が
    素晴らしかった。

    最も興味深かったのは、フェレイラのいう、
    「日本には、キリスト教が根付かない。
    彼らは、神の存在を自分達の手でねじ曲げてしまい、
    大日と同じようなものにしてしまう。
    キリスト教にとって日本は沼地。根はいずれ腐っていく。」
    という内容。どういう事なのだろう。。。

    Wikiを読む限り、このあたりが遠藤周作がノーベル文学賞候補と
    なりながらも選考員から嫌われた理由なのだろうか。。。

    疑問は尽きないが、とりあえず読了。
    続きを読む

    投稿日:2013.12.26

  • 一神教への信仰

    ロドリゴの苦悩がひたすら重く辛かったが、宗教に縁遠い自分も一神教の神がどれほど絶対的な存在であるかを垣間見ることができてよかったと思う。井上筑後守やフェレイラが行き着いた「基督教が根付かない」との結論に至った特異的な日本の民族性には妙に納得。「信仰」の形は人其々であるが、ロドリゴの到達点は自分にとっては共感しやすいものだった。逆に彼が日本的な基督教に感化された部分があるのかなと考えだすと非常に深い。数年に1度は再読したい。続きを読む

    投稿日:2015.05.09

  • 信じる者は救われる?

    映画のCMを見て原作に興味を持ち、読んでみました。遠藤周作の本は戦国時代物を読んだ記憶があるのですが、キリスト教関係の本をたくさん書かれていたとは知りませんでした。
     この本とは関係なく、日本人ってそれほど神様に頼っていないのではないかと考えることがあります。地震や災害も神様が起こすこと、しょうがないよね、みたいな。
     本作を読んで、キリスト教はイエスによる救いをより強く求めている感じがしました(もちろん誤解があるかと思いますが)。主人公の宣教師は色々と苦難にあい、今こそイエスの奇跡が起こるべきだと考えますが、何も起きません。キリストも磔刑の時に「神よなぜ私を見捨てるのですか」と言ったとされています。
     そんなに都合のいい救いなんてないよね。と思ってしまう自分は普通の日本人なのでしょうか。
     遠藤周作がクリスチャンだったことも初めて知りましたが、さらにこのようなキリスト教徒の受難の時代の、ほとんど救いのない話を書いていたことにさらに驚きました。どういう思いを持って書かれたのでしょうか。他の本も機会があれば読んでみたいと思います。
     最後、主人公が心の中で折り合いをつけることができたのが、せめてもの救いでした。
    続きを読む

    投稿日:2017.05.01

  • 沈黙する神を信じられるのか?

    島原の乱をきっかけにキリシタン弾圧が激しくなった江戸時代。踏み絵を拒む農民たちは拷問をかけられ、死んでいく。その一方、信仰を広めようと来日したポルトガルの司祭は背教者となり、幕府より日本人名を授けられる。

    それじゃ、キリストの前では拷問で死んだものが善で、ポルトガル司祭は悪なのか。そんな簡単に割り切れるものなのか。沈黙する神の前で、その答えは出ない。
    続きを読む

    投稿日:2014.01.12

  • 神の沈黙

    普遍的なテーマを扱っているせいか古びていない。簡潔でたしかにドラマチック、読みやすい小説でもある。

    特に信仰のない身には「神の沈黙」は他人事ではあるが、この不条理な世界で寄る辺もなく一人きりであるという恐怖は信仰にかかわらず普遍的かつ根源的だと思う。続きを読む

    投稿日:2017.03.12

Loading...

ブクログレビュー

"powered by"

  • まに

    まに

    簡単な本ばかり読んでいた私にはレベルが高すぎました。
    ですが、調べながら読んでいく中で
    学ぶことは抱えきれないほどあります。
    学校で習った踏み絵はこんなにも残酷で卑劣な行為だったことを初めて知りました
    神様は人間の潜在意識の中に皆が持っています。
    ですが、神についての答えや痕跡がないからこそ、人は迷い、争ってしまう。
    宗教に対して偏見が多い日本で、この本を読んだ後、果たして今と同じ考えができるのでしょうか。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.21

  • りの

    りの

    少し古めの本だから難しいかなと思ってたけど、驚くほど読みやすくて内容も頭の中で想像できてびっくりしました。踏み絵は中学、高校の教科書で見たことあるなくらいの知識しかなかったけど、この小説の中でどんなに過酷な状況に追い込まれてたのか、司祭者からみる日本というのが新しくて感慨深かったです。もっといろんな人に読んでもらいたい一冊です。続きを読む

    投稿日:2024.03.21

  • な

    この本を中学3年の現代文の授業で扱ってくれて感謝しかない。一見読みにくいし、途中で読むのをやめたくなるような気持ちにもなるから。
    中学の頃から当たり前にお祈りしたり聖歌を歌ったりしていたけれど、私にとって、神とはどのような存在で、信仰はどのようなものなのかを考えたのはこの作品にであったことがきっかけだった。中学3年生の時よりも理解も進んでいるし、ロドリゴやフェレイラの気持ちに共感できる箇所が増えていた。続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • ごーだ

    ごーだ

    このレビューはネタバレを含みます

    キリスト教のような宗教が絡む小説を初めて読んだ。

    自分が特定の宗教をあまり持たない日本人として生きているため、主人公であるロドリゴに共感しにくい部分が多かった。そこまで、神にすがる感情を理解することに難しさを覚えた。
    また、逆にキチジローにはとても共感してしまった。はじめは卑下して読んでいたが、ページが進んでいくに連れ自分も彼のようになるだろうと感じた。

    小説のはじめでは、キチジローとロドリゴがかなり対照的に描かれていたのに対し、キチジローとロドリゴは棄教した点で形式上は同じような人物になってしまうのが可笑しかった。

    気になった部分は、
    「『彼等が信じていたのは基督教の神ではない。日本人は今日まで』フェレイラは自信をもって 断言するように一語一語に力をこめて、はっきり言った。『神の概念はもたなかったし、これ からももてないだろう』」(p.197)
    という一節。日本をよく表している気がする。

    キリスト教を弾圧していた時代を、パードレの目線で考えたことがなかったため非常に新鮮で面白かった。また、自分が宗教を全く理解できていないうえ、これからもずっと完全に理解することはできないのだろうと悟った。自分だけでなく日本人には、理解するような努力が一生必要なのだろう…。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.03.12

  • みんみん

    みんみん

    特に信仰してるものもないし、日本史にも疎い私でも読み進めることができ、物語の迫力に引き込まれました。

    わたしが譲れないものはなんだろう。なにを信じどこに向かって生きているんだろう?問いかけられるように感じました。特に“弱い者”として描かれるキチジローが自分の弱さと重なる気がしました。続きを読む

    投稿日:2024.03.10

  • ざわ

    ざわ

    ポルトガルから船で日本に向かうという部分からも滲み出るキリシタンの強固な信仰心。幕府のキリシタンへの弾圧のむごさに途中読むのが苦しくなりつつも、全世界で読まれ、映画化されるだけある壮大な名作。出会えてよかった名著。続きを読む

    投稿日:2024.03.02

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。