【感想】小さいおうち

中島京子 / 文春文庫
(470件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
131
186
103
6
3
  • 昭和モダンの喪失とある「秘密」の物語

    戦前の東京を主な舞台に、平井家という家庭に女中として入った山形出身のタキという女性が、自身の過去を振り返る形で語る、まるで細い糸を使って丹念に作られた繊細な織物のような物語を堪能しました。「昭和モダン」に彩られた首都東京の今からは想像もつかない「豊か」な情景が、「事変」から「戦争」に至る過程でその姿を失っていく様の描写の見事さに胸打たれつつ、平行して語られる、はかなさをまとったある「秘密」の物語が現在と過去を結び、少しの「謎」を残して物語を閉じるその余韻にも心揺さぶられました。本当に素晴らしい作品でした。続きを読む

    投稿日:2016.06.16

  • 戦争の頃の様子を女中さんの視点で綴っています

    女中さん、もうあまり使われない言葉かもしれません。
    家政婦さんとも、メイドさんともどこか違う、(私のイメージは、着物に白いエプロン)老女が、若かりし頃の記憶をノートに綴っていくのですが、今まで読んでいた本と違い、情報を制限された中で生きてきた方々のお話だったのでかなり新鮮でした。こんな戦争もあったのかもとどこか今の生活に似たところがあるようでゾッとする部分もあります。それにしても最期の展開は衝撃でした。思わず前のページに戻り、エラーでないことを確かめたほどです。読み進めると納得のいくお話になっています。面白いですよ。続きを読む

    投稿日:2014.08.30

  • 女中さんの回想録

    直木賞受賞作。映画化もされたようです。
    昭和初期から終戦までの家庭の風景や人々の心情を綴った女中さんの回想録。
    あまり戦争の悲惨さは伝わってきませんが、やっぱりみんな戦争によって引き裂かれてしまったんですね。
    回想録で終わるのかと思ったら、最後の数10ページで違ったドラマが。
    こういう終わり方は好みが分かれるかもしれませんが、個人的には好きです。
    ほんわか暖かい気分のいい読後感でした。
    続きを読む

    投稿日:2014.08.02

  • よく書かれている

    昭和初期から戦争になるまで、女中さんとしてある家で働いていたおばあさんの回想録。と、その甥の後日談。

    昭和初期の、お金持ちのおうちの生活や、女中さんが家族みたいに一緒に暮らしてることや、戦争がはじまったばかりの頃の、のん気な空気感がよく書かれてた。

    戦時というと悲惨な苦労話が多いけど、女子たちは戦争が本格的になるまでは、のほほんとしてたんだなと。知らないって、幸せなことだなーと思いました。まるで、悪いものから守られている、幸せな子供時代がずっと続いているみたい。

    「ハンケチ」「シチュウ」とか「ずいぶん経済に考えました」とか、当時の言葉遣いも面白いです。
    続きを読む

    投稿日:2014.07.19

  • ふつうのひとの歴史

    ”私たちと地続きの”戦前・戦中ということばが印象に残った。今よりもっともっと我慢を強いられ不本意のまま生きなければならなかった時代でも気高く明るく生きていた人々がいとおしい。タキちゃんは純朴で時子奥さまもとてもイノセント。分をわきまえてしっかり生きてる人は本当に美しいと思う。続きを読む

    投稿日:2015.04.12

  • 本来ならドロドロの・・・

    ドロドロの昼メロ題材になってもいいかもしれませんが、著者の才能なのか、人物や情景はサラリと描かれる。が、内に秘めたるモノはしっかり受け止められる。「誰々はこう思った、こうした」という断定的な感情、動作表現はほぼない。だからこそ、奥深い感情がより一層感じられるのかもしれない。映画は原作を超えられなかったかも・・・?観てないのでなんとも言えません。

    続きを読む

    投稿日:2014.07.18

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ブクログレビュー

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  • masamikita

    masamikita

    面白かったー!最後はびっくりな終わりかたでしたが。
    優秀な女中も、女中の幸せを願う女主人も素晴らしい。
    映画も見たいな。

    投稿日:2024.03.13

  • モコ

    モコ

    大好きな本です。
    辛く、暗い時代だったけど、それだけじゃない。幸せもあったし、人々の生活もあった。悩みも間違いもあった。痛感させられる作品。

    投稿日:2024.02.26

  • セシルの夕陽

    セシルの夕陽

    引き込まれた! 
    昭和10年〜戦後が舞台。
    戦争小説では決してなく、東京郊外に建った赤い屋根に白いポーチの洋館での物語。

    山形から女中奉公のために上京してきたタキ。
    美しい時子奥様へお仕えするタキの目線で起きた出来事を、回顧録として晩年綴る。

    ノートを読むのは甥の次男:健史。「頭の良い女中」と評されたタキ。その評価に値する仕事ぶりを、十二分に発揮した、と言うことか⁈

    物資が乏しくなるにつれ、創意工夫で乗り切る力、出会いと別れ。晩年の振り返った思い…。
    誰しも1つくらい、人生の終盤で省みる事があるのだろうか。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.15

  • kayohiro

    kayohiro

    昭和の市井のある女中と家族のひとつの物語。歴史の流れの中でもあったはずの素朴な日常と、それでも大きな流れに争い、それでも理不尽な選択を迫られる時代。タキや健史の[頭の良い振る舞い]の結果がどうだったのか、様々な解釈ができるが、それがよかったかどうかはわかりようがなく、その問いの答えを探し続けるしかない、というのも、また個人の人生そのものと、それが時代の流れに委ねられていることのように思えた。続きを読む

    投稿日:2024.02.13

  • skmths

    skmths

    昭和の市井のある女中と家族のひとつの物語。歴史の流れの中でもあったはずの素朴な日常と、それでも大きな流れに争い、それでも理不尽な選択を迫られる時代。タキや健史の[頭の良い振る舞い]の結果がどうだったのか、様々な解釈ができるが、それがよかったかどうかはわかりようがなく、その問いの答えを探し続けるしかない、というのも、また個人の人生そのものと、それが時代の流れに委ねられていることのように思えた続きを読む

    投稿日:2024.02.13

  • chisa

    chisa

    少し前に、映画を見て、本も読んでみた。
    時代を経て、戦時中、女中時代と現代の振り返っている時代が行き来する。
    こんな女中さんがいたら素敵だなと思う。
    戦時中、慎ましくなり、生活が変わっていく中で、こういう日常が実際にもあったんだろうなと思う描写だった。続きを読む

    投稿日:2024.02.02

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