【感想】漂流

吉村昭 / 新潮社
(150件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
67
62
13
0
0
  • 自分に限界を感じたら、読んでみてください。

    東日本大震災によって『関東大震災』や『三陸海岸大津波』が注目を集めた小説家吉村昭は、いま最も読み直されるべき作家な気がしている。

    吉村は、残された記録や資料、証言、現場検証を丹念に調べあげて書く”記録文学”の代表的作家。「3・11」を彼が経験していたらどんな小説を残したか、そして現実に彼がいない今、その代わりとなる書き手はいるのだろうか。もしくはネットの上の無数の声がそれにあたるのだろうか。

    本書は、震災のような多くの人間が共通に経験できるような事件ではない。土佐沖で難破し、伊豆諸島の無人島、鳥島へと流れ着いた船乗りの長平が、仲間たちが続々と死に絶える中、島唯一の食料であるアホウドリを食しながらサバイブし続けた12年間の記録。これは長平自身が残した日記などではない。救助後、漂流者を調べた政府(幕府)側の公的な記録から、つまり淡々とした事実からのみ気付きあげられた壮絶な物語なのだ。

    極限を生きた者たちに命を与える、作家にしかできない大切な行為の結果がここにある。
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    投稿日:2013.09.20

  • 今日の晩メシはアホウドリの丸焼き

    江戸時代、無人島に漂流した男の生還を描くサバイバル小説。彼を餓死から救ったのは島に生息するアホウドリの群れだった。この小説を読むと、無性に鶏肉が食べたくなる。

    投稿日:2013.10.04

  • 生き残る。故郷に帰る為に!

     江戸時代に黒潮に流され、絶海の孤島へと漂流した男たちの壮絶なサバイバルです。作者が幕府や藩の取り調べ書が元になっており、漂流者自身の話が元でないことは、ご注意してください。しかし、取材し書き上げた作品であるにもかかわらず、その漂流者たち自身が書き上げたもしくは漂流者たちの話を筆者が聞いて書いたように思えてしまいます。それ位リアルでした。

    水も無いうえ食料も乏しい島で生きなければならなくった漂流者たち。厳しい環境に絶望し、生きるのを諦める人も当然出てきます。絶望から脱した漂流者が辿り着いた答えは、生き残って帰る事。はたして帰ることができるのか?生きることの素晴らしさと絶望から立ち上がる勇気を与えてくれます。
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    投稿日:2013.11.02

  • ノンフィクションの凄さ!

    地味な文章だが、次第にストーリーにハマる。この状況からどうやって生き続けてきたのか、そして脱出できたのか、とにかく、これがノンフィクションの凄さだ。

    投稿日:2015.04.11

  • 人間の身体は働くようにできている

    無人島に漂着した長平は仲間が次々と病気で亡くなり1人ぼっちになる。孤独は何よりも辛い。渡り鳥の足につかまって脱出できないかなどと考えたりもした。しかし、どんなに嘆いてみたところで誰も救ってくれるものはいない。結局は自分のみを頼りにしなければ生きられぬことに気付く。一時は自殺まで考えるが次第に生きてみるかと思えるようになって行く。「夜と霧」のフランクル博士も「生きることは義務なのだ」と言っている。どちらも実話であり極限状態でも全てを受け容れることができる強さを人間は持っているのだと教えてくれる。続きを読む

    投稿日:2017.06.16

ブクログレビュー

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  • hihihideko

    hihihideko

    しばらく鳥肉が食べられなくなりそうでした…。
    悪夢を見るほど場面を想起させる圧巻の描写力で、読後はどっと疲れました。思い出すと今でも波に揺られている気がします。

    投稿日:2024.02.25

  • コバコーバ

    コバコーバ

    窮地に立たされた人の気持ちと、生き抜くための知恵。その知恵は、多くの事を知っていないとひらめかないものなんだなと思った。

    投稿日:2023.12.12

  • Steve Austin

    Steve Austin

    誠に壮絶な物語であった。

    実際にはそのような漂流者がいたと言う記録のみが残っているだけで、本当は何があったのか? 当然ながら詳細は一切不明。本当の物語は更に壮絶で文章にはできないような事もあっただろう。
    ■健康であることの大切さ
    ■目標を持って生きる
    と言う当たり前かも知れないが、基本的な事をあらためて教えてくれる小説てある。

    序章の旧日本兵の話も非常に興味深い。有名な横井さん、小野田さん以前にアナタハン島からの帰還者(アナタハンの女王事件)と言う事件があった事は全く知らなかった。
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    投稿日:2023.12.06

  • たるお

    たるお

    このレビューはネタバレを含みます

    江戸時代の漁師の漂流サバイバル小説。この小説を読むと、次のような効能が得られると思う。

    ・困難な状況に置かれた時、どういうメンタルで過ごすのが自分にとっても他人にとっても最善なのか
    ・日々食事にありつけるありがたさ、運動の大事さ
    ・ものを大切にしようとする気持ちが深まる
    ・一方で、必要最低限のものでも生活することができるんだというミニマリスト思考にとっても参考になる
    ・サバイバルの知識つけといた方がいいなという危機感


    冒頭に日本人のサバイバル例として戦後のアナタハン島の話や、横井庄一さん達のエピソードが紹介され、それも興味深く読み進めることができる。しかし本編はそれどころでない面白さで、江戸時代土佐の長平の話が始まり、漂流生活が始まるあたりから終幕まで一気読みしてしまうハラハラドキドキの展開の連続でした。

    まず船が漂流する怖さが存分に伝わってきます。悪天候のため2km先の島に泳いで行くこともできない無力感や、漂流時間が経てば経つほどにどんどん離れていってしまう無力感が存分に伝わります。

    漂流ものだと、例えば海外ドラマ「LOST」のように、漂流者同士のいざこざを描きがちですが、私はそういう人間の汚い部分を読まされるのは苦手です。この本ではそういった人間の汚い部分の描写が少ないので、読者として気持ちよく読み進めることができました。希望も見出しづらい極限の無人島生活なので、いざこざを起こしている場合ではないということもあるのですが、合計三度の漂着者が総じて「気持ちの良い男達」であり、困難な状況でも助けあい、思いやりがある日本人らしさが描かれているようで良かったです。

    また、私自身は無宗教で、どちらかというと欧米の宗教感に懐疑的でさえありますが、無人島生活でのこの状況で信心深くなっていく長平や、当時の人達が仏にすがる宗教感は説得力があり、それによって心を支えている姿がとても真っ当でリアルに感じました。

    これまでの読書歴ではサバイバルものだと、さいとうたかおの「サバイバル」が一番かなと思ってましたが、純粋なサバイバルの「過酷さ」「心理描写」「先行きのわからないドキドキさ」で考えるとこの小説の方が面白いと思います。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.12.04

  • エンガワ2000

    エンガワ2000

    4分の3くらいずっと無人島の話で、
    単調な生活のはずだが、次々ネタが出てくる。
    最後までずっと面白い。

    投稿日:2023.11.18

  • 達朗

    達朗

    とても面白かった。江戸時代の船乗りが太平洋の鳥島に漂流した後、試行錯誤をしながら祖国に戻る話。土佐で米を運んでいた長平ら4人は時化にあいアホウドリしか住まない孤島に漂流する。長平以外の3人は栄養失調などで死んでしまい一人で過ごすこととなる。その後儀三郎ら率いる大坂船、栄右衛門ら率いる薩摩船が漂流しその人らと生活をする。孤島で死を待つだけの生活を捨て船を作り島から抜け出し祖国に帰ることを決断した漂流民は流木などから船を作り見事八丈島に辿り着く。一人になっても1年以上島で生活した長平の気力がすごい。アホウドリが渡り鳥で一年中いるわけではないことに気づいたり、肉だけ食べても死ぬことだったり、水のため方など洞察力が優れていてまた忍耐も人並み以上のものがあるから生き抜けたんだなと思う。続きを読む

    投稿日:2023.11.17

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