【感想】羆嵐

吉村昭 / 新潮社
(360件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
119
150
59
2
0
  • 大正時代の北海道はキビシイ

    大正の時代に北海道で発生したヒグマの被害、ノンフィクションです。吉村昭の作品は、当時ノンフィクションという言葉がなかったので「記録文学」と言われたそうです。文章は独特で、余計な抑揚などが無く事実のみを淡々と書き連ねて行きます。登場人物の心の中の言葉などは一切無く、その人がどんな表情で発言したか、など、外から見て分かる「事実」のみで進行していきます。その独特の文章のせいなのか、そんなに何回も出てくるわけではないヒグマの恐怖がすごく伝わってきます。ヒグマの恐怖以外にも、当時北海道に開拓に入った人々の暮らしが大変厳しいものである事もよくわかり勉強になります。壁は板ではなくワラ(だったかな?)で、板壁の家は大変裕福だったそうです。そして家の入口は、なんとムシロだったそうです。冬は雪が積もる極寒の地でムシロは厳しいです。橋は雪が積もって使い物にならないので、冬には、なんと、橋の横に氷の橋を作って利用するのだそうです。吉村昭なので、この辺は事実なのだと思います。
    今でこそ、電気も通り交通もよくなり、本州と変わらない暮らしだと思いますが、大正の時代は普通に生きる事が大変だった事が良くわかります。まして冬にはヒグマです。こわいです。こうやって生きてこられた人達の子供の子供の子供が今生活している私たちだと思うと感慨深いです。
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    投稿日:2013.12.30

  • 本の表紙に出てる恐ろしい熊と対峙した、開拓者たちの記録

    三毛別羆事件(Wikipediaに詳しく載っております)という実在した事件の記録文学です。あくまで記録文学(ノンフィクション)ですので、登場人物の巧みな心理描写等はありませんが、悲壮感や閉塞感、そして自然には勝てないという絶望感を感じさせ、まるでその場にいるような臨場感を感じました。

    そして本作品のもう一つ見所は、日本の開拓民の生活ではないでしょうか。極寒の冬、決して防寒対策が十分とは言えない住宅環境などが待ち受けておりますが、開拓民は、野を耕し、村落を形成していったのです。今ある日本の農業の礎となったと考えると、少し感動しました。このような人々がいたという事やこんな事件があったということを風化させないためにも、本作はとても重要な作品だと感じました。
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    投稿日:2014.06.09

  • 村人はヒグマに勝ったが、

    第1次世界大戦勃発の翌年、北海道の貧しい村が巨大なヒグマに襲われる。村人は団結し、助っ人を呼び、ヒグマを倒す。しかし、次なるヒグマの恐怖に耐えられなくなった村人は次々と村を去っていく。

    投稿日:2013.09.28

  • 100年前の北海道

    ヒグマの恐怖もさることながら、たかだか100年前の北海道農民の貧しさが印象的でせつない。自然の一部でしかない「ヒト」なのである。

    しかし素人が鉄砲を持っていてもダメなんですなあ。

    投稿日:2016.10.09

  • スリル満点の羆禍。

    とにかくスリル満点だった。読む前は熊がそんなに怖いのか?と思っていたが、とてつもなく怖かった。映画の「ジョーズ」に匹敵するほどの作品だと感じた。

    北海道の開拓地に突如現れた羆の恐怖が書かれている。そのあまりの凶暴さ、強靭さに人間には対処できないかと思われたが、一人の初老の羆撃ち救世主のごとく現れる。

    この本を読んで羆は間違いなく「害獣」だと思った。そのまき散らす恐怖は現代ではなかなか想像はつかないが。
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    投稿日:2016.11.08

  • 本当にあった話

    時は大正時代、舞台は北海道・天塩地方。現代のように堅牢な家屋、オフロード車、道路などのインフラが揃っていれば、野獣など恐るるに足りなかろう。それらを全て欠いて、ギリギリの生活をしていたところを、自然の猛威に襲われた人々の恐怖と悲惨の物語。ちなみに、その後、同じ地域でヒグマが100頭以上狩猟されたとのことだが、そもそもそこはヒグマのテリトリーであり、人間は迷い込んできたエサでしかなかったということだろう。続きを読む

    投稿日:2013.09.28

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ブクログレビュー

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  • くわぱー

    くわぱー

    初めて吉村昭作品を読んだ。
    ノンフィクション小説ということで、心情や状況の描写が細かく臨場感が伝わってきた。熊退治に来た他の村人のお祭り気分に冷ややかな視線を送る描写など、吉村昭さんが細かく取材をされていたことが伺えた。続きを読む

    投稿日:2024.04.03

  • mi

    mi

    Wikipediaで舐め回すように読んだ事件を、至近距離からドキュメンタリーで見ているようで、とてもハラハラしました。

    投稿日:2024.03.19

  • 椋とんびの2

    椋とんびの2

    やー、怖かった。直木賞の「ともぐい」もドキドキしたけど、こっちのほうが格段すごい。視点がいいね。カメラでずっと追ってる感じ。何も起こらない景色までも、嵐の前の静けさを感じさせて、ハラハラドキドキです。
     この世で遭遇する可能性がある中で一番怖いのが羆なんじゃないでしょうか。もう、ゴジラですね。でもフィクションじゃないのですよ。
     吉村さんの筆力が、生前はそれほど評価されなかったのはなぜなんでしょうね。鈴木るりかさんは評価してましたけどね。それはそれですごいと思ったんですがね。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.19

  • のはら

    のはら

    面白い。自然の圧倒的な力を前にした時の人間の無力さ、人間くささ、諸行無常みがある(語彙力がアホですみません)。導入と終わり方も最高のエンタメ小説。

    投稿日:2024.03.16

  • 佐々木

    佐々木

    自然を前にして人間はなんて無力なんだと思い知らされた。文章だけで事件の緊迫した様子が想像出来ました。当時の人々はどれだけ怖かったんだろう。。

    投稿日:2024.03.10

  • メガネ

    メガネ

    羆が普通に出没する地域に実家をもつ者です!
    春から実家終いでひとりで片付けはじまるのに読んでしまったことを後悔してます(笑)キツネの鳴き声にもビビり倒す人間なので、被害者が出るたびに「ァァァ…」となりながら読み進めてました。今年は近所にこないといいな、と願ってます(笑)続きを読む

    投稿日:2024.03.04

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