【感想】わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

平田オリザ / 講談社現代新書
(321件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
98
115
46
5
1
  • すばらしい内容に思わず手を合わせました

    最近、特に自分よりも年下の人と、うまく会話が成り立たないことが増え、世代ギャップのせいかなぁとか、自分が能力不足のせいかなぁ等、悶々とすることが多かったのですが、本書を読みながら、長年の疑問が氷解していくような感覚を覚えました。

    ずっと、コミュニーションは分かり合うためにするものだと思っていました。もっと正確にいうと、充分にコミュニーションをすれば、当然、お互いに「わかりあえる」ものだと思っていました。しかし、著者である平田オリザ氏は言います。そうではないのでは。むしろ、対話とはどんなに話し合っても「わかりあえない」ことを前提として出発するものだ、と。本書を読んで初めて本書のタイトルの意味が分かりました。不思議な本ですよね。タイトルの意味が分かったから、おおよそでも何が書いてあるのか分かったからこそ、本書を手に取ったはずなのに。読了後、あまりにすばらしい内容に、思わず本書に手を合わせてしました。こんなに気が付かせて頂き、ありがとうございます、と。
    私にとっての圧巻は、筆者が教育現場での実践を通じて得た経験・知見を基に、今後の公教育が担う姿や役割を語るところです。着眼点も提案内容も社会の変化をしっかりと踏まえており、それでいて自分が今まで考えたことがなったものばかりで、とても新鮮でした。教育改革とは、実はこんなところから着手すべきものなのかもしれないと思いました。

    一読は百聞に如かず。強く、つよく推奨致します。
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    投稿日:2013.10.14

  • グローバル社会におけるコミュニケーションとは

    コミュニケーションの多様化について考えさせられた。日本社会と国際社会の対比で話が進むが、言語/国の数だけコミュニケーションはあると認識することが大事だと感じた。海外で働いていると「阿吽の呼吸」的なコミュニケーションは日本の強みだと思うので、この部分も大切にしていきたい。非常に読みやすい反面、実体験をベースにして話が展開するので、著者の言いたいことを系統立てて理解するのが難しかったかな。是非、再読したい。続きを読む

    投稿日:2015.05.09

  • 日本企業が本当に求めている本音と建前のコミュニケーション能力

    読んで感じたのが、日本企業の建前は「異なる文化、異なる価値観を持った人に対しても、きちんと自分の主張を伝えることができる」コミニュケーション能力があれば良いといっているが、本音ではそれだけではなく「上司の意図を察して機敏に行動する」「会議の空気を読んで反対意見は言わない」「輪を乱さない」といった能力を求めている。

    ここでお互いの認識の違いが生まれる、認識が違うものを押し付けられることは苦痛、これがパワハラになる。
    部下上司と話すときはお互いの認識を合わせることが大事だと思った一冊
    ※新社会人にもオススメしたい本
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    投稿日:2014.09.01

  • 演劇という視点から日本の教育問題に言及した、斬新で鋭い評論です

    小説『幕が上がる』を執筆した演劇家の平田オリザさんの評論文。
    日本赤十字看護大学の大学入試問題に出題されていた文章が面白かったんで読んでみた。
    日本人が弱いとされるコミュニケーション能力向上に演劇が有効であると考え、実際に全国の学校で活動されているそうだ。
    現代の学校教育の問題点や2020年の大学入試改革で求められる能力などにも言及し、教育論も展開される。
    今後求められる力は意見を言うことよりもまとめる力。
    そのために様々な社会的役割を演じる能力が大切であると主張する。
    とても説得力がある深い話だった。
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    投稿日:2017.03.15

ブクログレビュー

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  • kumalibre

    kumalibre

    数年ぶりの再読。いま改めて読んで本当に良かった。この本好きだな。仕事で受ける社内のウザったい問い合わせに対しても優しくなれる。結局これって対話のプロセスなんだ。対話のプロセスを辿るってことはすなわちその前提に違う価値観とか背景があるということ。別に以心伝心にわかりあえなくていい。わかりあう必要もない。でも真摯に言葉を尽くして少しでもお互いを理解して歩み寄れるようになるためのプロセスを経ることは間違いなく重要。そう思えばいちいち回答するのもそんなに苦ではないような気もする。もちろん多少はイライラするけどそこは寛容に。対話のためのトレーニングの1つ。書かれていたとおり、日本語教育からは対話の目的・意義・やり方が抜け落ちている。たぶん誰もが真摯に対話をできるわけではない。だから説明をしてあげる相手が対話を対話と認識していないと意味がないんだけど、でもこちらが少なくとも対話をし続ける姿勢を示すことに意味はあると思う。そう信じてやっていきたい。それってますますこれからの人事労務屋に求められるコミュニケーションなんじゃないかと思う。続きを読む

    投稿日:2024.03.02

  • nut

    nut

    私が考えてるコミュニケーション能力とはまた違った視点で書かれていてとても興味深かった。
    演劇を通すからこそ見えてくるコミュニケーションという、心理学ともまた違う視点。
    国や個人の歴史・経験・文化や育ちから生まれる少しずつの人の違い。
    移動しやすくなった今の時代だからこそ、その当たり前の事実をもう一度再認識するべきなのかもしれない。
    もちろん日本人の大事な部分は守りつつ。
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    投稿日:2024.02.12

  • コルベット

    コルベット

    女言葉こそ女性の社会
    進出を阻んでるという
    著者の主張は、

    なるほど、そんな観点
    があったかと目から鱗。

    言葉づかいの男女差は
    世界中にありますが、

    日本人は殊更に男女の
    らしさを言葉づかいに
    求めますよね。

    特に女性の一歩引いた
    感じのそれを我が文化
    の美点であると考えて
    きました。

    が、いまや女性らしく
    淑やかに!と目くじら
    を立てる時代ではない
    んですよね。

    会社では女性の上司が
    男性の部下を統率して
    いく時代。

    女なんだからこうある
    べきというジェンダー
    バイアスは既に過去の
    ものです。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.03

  • hono-Reyife

    hono-Reyife

    6年ほど前に読んだかな?確か。
    20代に読んだ当時、結構、新鮮な気づきと価値観を貰えた気がした。

    人とのコミュニケーションって分かりあうためにするもの、もしくは分かり合っている前提で、信頼の下で、通わすものだと読む前は思っていた。

    けれど、他人は自分と同じ経験はどんな人にも成し得ない。
    想像を働かせて共感は出来るけれど、そもそも、分かり合えないことが当たり前だから(自分とは違うから)、やりとりのなかで、共通項に花を咲かせたり、新しい思考を貰って価値観の幅が広がるんだな、と。

    みんな違って、みんないい

    どこかで聞いたフレーズのように、個性をそれぞれで光らせるのは素敵だけど、
    やっぱりともに過ごす大切なひととは、分かり合える(好きなものが同じな数が多いといいな)部分を増やしていく。そんな営みが毎日の幸せの積み重ねに思う。

    感性が合うひとになかなか出逢えなくて毎日泣いてしまうけれど、世界のどこかで巡り合いたい。

    分かり合える、ということは信じ合えると同義でしょうか。
    信じ合う、そんな気持ちからまず、初めてみようっと。
    また再読しよう。

    あ、最後にひとつ。

    誰かと会話をするとき、完全には分かり合えない。(だって、わたしはあなたと同じ経験は出来ないから)
    その前提を押さえた上で、じゃあ、ちょっと君の物語聴かせて貰えない?
    そんなふうな心持ちからの挨拶の始め方だったら、のしかかってた肩の荷も幾らか軽くなる気がした。
    分かりあおう!相手を理解して、役に立てれたらいいな!そんな気張りがあるコミュニケーションは長い信頼関係には結びつかないのかも?
    平田オリザさんは、そんなメッセージ、伝えたかったのかなと思いました。
    前者の方が、互いに気楽で、楽しい感じする。

    すぐには打ち解けないけれど、時間を重ねて、お互いの荷物を分け合って、夢を与え合えたら。
    なんか、arrows聴きたくなってきた。
    ついでに
    真っ赤な空を見ただろうか
    も。
    ため息の訳を聞いてみても自分のじゃないから、分からない。
    でも、知りたがる。
    そこから弓の橋がかかるのかもしれない

    いま、わからなくても
    知りたがる気持ちを忘れずに抱きしめていけますように。

    (この言葉、わかるひとには分かるでしょう)
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    投稿日:2024.01.29

  • 夏海

    夏海

    一度チャレンジして、途中で返却してしまったけどついに最後まで読めた。所々にほぉ〜ってなる(見聞が広がるような)ことが書いてあり面白かった。対話の基礎体力、それと学びと知性がもたらす美しい時間!

    投稿日:2024.01.24

  • いわ

    いわ

    このレビューはネタバレを含みます

    ・ダブルバインド(二重拘束)
    二つの矛盾したコマンドが強制されている状態
    ・教育の役割
    社会の要請に応じて、最低限度の生きるためのスキルを子どもたちに身につけさせて世間に送り出すこと
    ・喋らない、いないも表現の一つ
    ・日本語の特性
    強調したいものは語頭にもってくる
    強弱アクセントによって感情を表現する×
    ・対話の基礎体力をつける
    2人でとことん話し合い結論を出すことが重要なプロセス、意見が変わることは恥ずかしいことではない
    ・子供と接する時の優れたコミュニケーション
    子供のコンテクストを受け止めて、さらに受け止めているよということをシグナルとしてら返してあげることが重要
    ・エンパシーとは
    わかりあえないことを前提にわかりあえる部分を探っていく営み

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    投稿日:2024.01.21

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