【感想】制服捜査

佐々木譲 / 新潮社
(99件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
22
44
21
2
1
  • 道警シリーズと同じ世界観で展開する連作短編。

    以前読んだ直木賞受賞作「廃墟に乞う」にテイストは近い。

    道警本部の不祥事で人事異動を余儀無くされた主人公が制服警官として赴任したのは道東の片田舎。事件らしい事件も起こらない人口6000人の平和な町でやることと言えば交通事故の取り締まりや喧嘩の仲裁だったのだが・・。

    町・村という閉鎖社会に赴任期間だけいる駐在警官という「よそ者」。昔からの「村社会」になかなか入っていけない主人公のジレンマと警官としての矜持が垣間見える各エピソードは派手さは無いが毎回渋くて味わい深い。話が積み重さなるに従って見えてくる町の本当の姿は、何が「正義」で何が「悪」なのかの境界線を曖昧にする地域社会が抱える問題とリンクしており、なるほどこの舞台設定でないと書けないよなあと感心した。

    意外とハードボイルドしているのでそちらの話が好きな人は気にいるのでは。
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    投稿日:2015.09.01

  • 地元北海道が舞台の駐在所ストーリーに目新しさが!

    警察小説と云えば新宿歌舞伎町が舞台で、刑事(元・地方刑事含む)とヤクザ・三国人・売人・ヤサグレ等が絡み合うストーリー展開が肝ですよね。
    この本に描かれるのは、駐在所勤務それも北海道の片田舎の制服警官が遭遇する、閉鎖的な人間関係=警察と住民・所管と駐在所・制服警官と刑事等々の絡み合いが目新しい展開を見せて暮れています。
    派手な事件がある訳で無く、新宿歌舞伎町の1時間が駐在所の1年のようなストーリーですが、主人公川久保の警察組織内での苦悩と大岡裁き的な反骨精神も良い味を醸し出しています。
    歌舞伎町の喧騒を離れて北海道の田舎町駐在所の事件簿を紐解くのも宜しいかと(笑)。
    私的には遠くないある町(架空名称ですが)が舞台なのも親しみを感じました。帯広のポスフール(地場のGMSでした)かぁ~、今はイオンに吸収されたんだよなぁ~(涙)
    歌舞伎町の刑事も良いが、田舎町の駐在所警官も良いかぁ~と思わせるのも本書の魅力かと思います。
    面白く読み進められる短編集です。
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    投稿日:2015.10.27

  • 直木賞受賞佐々木譲の大人の警察小説

    連作短編集、これも面白い。舞台は北海道のある地方です。組織の事情にまきこまれて、この地の駐在所勤務となった警官が主人公。一見なにごとも起こりそうにない普通の田舎町だが、さまざまなことが見えてきて、ついに衝撃の結末が。実力作家の筆力はすばらしい。並みの推理小説では満足しない人、かといって粗雑なアクション小説は嫌いな人、大人の男が読んで満足できる良質な小説を探している人にお勧め。続きを読む

    投稿日:2013.10.10

  • これはすごいぞ!

    最近は警察小説の代表的な作家という印象の強い著者の作品。この作品も警察小説です。北海道警察シリーズと同様にいわゆる「稲葉事件」後の北海道警察の混乱をバックボーンにした作品なのですが、道警シリーズとは少々趣が異なります。個人的にはこちらの方が好みですね~。道警シリーズが、権力に歯向かうアウトロー軍団を描いているとしたら、こちらは一匹狼です。
    なによりも北海道のほどんど事件の起きない田舎町という設定がすごい!駐在員なのだが、長年刑事課盗犯係を務めてきた経験を生かし、長年うやむやにされてきた犯罪が明るみに出てくるというストーリーと、主人公の葛藤が、読んでいてぐいぐいと引き込まれ、衝撃的な結末を迎えて行く、連作短編の話の持っていきかたが素晴らしい!
    道警シリーズも大好きですが、駐在警官・川久保篤シリーズはさらに上を行く素晴らしさがあります。
    続きを読む

    投稿日:2014.03.02

  • いわゆる制服組の活躍

    人口6千人の田舎町で起こる事件。駐在署勤務は町の慣習や所轄刑事との間に挟まれながら、事件を追っていく。通常の刑事が活躍する小説と違い目線の違ったタッチが非常におもしろい。短編集の最後の「仮装祭」では、メンツを考える町の防犯協会に対して少し気のすく思いがした。今後の続編を次々と書いてほしいのだが、人口6千人の町でこんなに事件ばかり起こる逆におかしくなってしまうので、2作ぐらいで限界だろうなと思うと寂しい。続きを読む

    投稿日:2016.03.26

ブクログレビュー

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  • ふち

    ふち

    佐々木譲氏の警察小説。連作短編。北海道警察シリーズではないが、北海道十勝の駐在所勤務の巡査部長が活躍。推理が当たりすぎることに若干の違和感がありますが、警察小説らしいです。

    投稿日:2022.11.07

  • hibu

    hibu

    面白かった。

    北海道の寂れた街に赴任した駐在所の警察官が独自に捜査を進めるストーリー。普通駐在所の警察官は地域のお困りごとの対応が主体で捜査に参加するのは稀なんですが。この辺りがタイトルの由来かな?

    5つの短編からなり、スラスラと読めます。

    オススメ!
    続きを読む

    投稿日:2022.10.16

  • 1527439番目の読書家

    1527439番目の読書家

    北海道のある町の元刑事の駐在の話
    5個の短編が時系列で進んでいく。
    田舎独特のルール、偏見、差別も絡み話を面白くしている。
    3.7

    投稿日:2022.10.13

  • ramunesaitodot

    ramunesaitodot

    タイトルの制服捜査は、
    通常は制服を着ている駐在警官が捜査を行うから。
    どうやら一般的に捜査は私服組みの刑事が行い、
    駐在はその指示に従って動くようだ。
    この物語の主人公の駐在警官は、
    現場で起きる事件に独自の推理を働かせ捜査する。

    というのも、つい直前まで刑事だったからだ。
    北海道警で起きた不祥事の影響で、
    癒着防止を優先し、一定期間以上、
    同じ地方・部署にいる者は異動となったのだ。
    経験やキャリア問答無用の配置転換。
    初めての駐在勤務で、
    十勝平野の小さな農村に単身で赴く。

    犯罪は管内一の低さ。
    性的軽犯罪の報告は15年間で一度もなく、
    大きな犯罪は起きない。
    地域の有力者たちと良好な関係性を築き、
    つつがなく日々を送ることが使命。
    前任者たちもそうして過ごしてきた。
    時には現場の裁量で、
    良きに計らったりもしながら。
    長いものに巻かれ、大樹の陰に身を寄せ。

    ところがそうした大人の事情に、
    飲み込まれない者がやって来た。
    表面的な平和、お茶を濁した安全の下に潜む、
    危険性や犯罪の匂いを敏感に見抜く。
    隠された真相がひとつずつ暴かれる。
    続きを読む

    投稿日:2021.09.16

  • キムチ27

    キムチ27

    骨ばった作品もいいが、こういった方から力を抜いたシリーズは好き。川久保氏のシリーズになっているみたいだから、チョイスしなきゃ。
    「逸脱」「遺恨」「割れたガラス」「感知器」「仮装祭り」何れも北海道の寂れている(であろう)エリアが舞台
    共通して感じるのは典型的な閉鎖空間、入って行きにくい「俺ら」が町
    口を挟めないだけに、白でも黒と言わざるを得ない、時には傷が出来るような事件と化すが、警察沙汰になることを避けるのでお偉方が直々もみ消してきた過去。
    たださえでも「黙ってろ」扱いの駐在・・なまじっか実力があるだけに川久保の動きが爽快。
    続きを読む

    投稿日:2021.08.20

  • し。

    し。

    2021/5/28 読了

    駐在さんは犯人逮捕ができない?
    小さな村の中で起きた事件を解決していくが、閉鎖的な空間で起きた事件は自分達でなんとかするのが昔から当たり前になっていて、最終的には村全体を相手にしているような感じだった。続きを読む

    投稿日:2021.05.29

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