【感想】アルゴ

アントニオ・メンデス, マット・バグリオ, 真崎義博 / ハヤカワ文庫NF
(16件のレビュー)

総合評価:

平均 3.3
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4
3
4
0
  • こんなことってあるのかとシンプルに驚いた

    アメリカは、映画を作りたいがために、国の一大事をつかったんじゃないかとさえ思える信じられない現実。

    翌年にイラン・イラク戦争を控え、イラン・イスラーム革命の嵐が吹き荒れる1979年のイランで、過激派がアメリカ大使館を襲撃、大使館員を人質にとった。彼らの要求は、アメリカに入国した前・国王パーレビの引き渡し。

    襲撃の混乱のなか裏口から6人の大使館員が脱出、カナダ大使の家に身を隠しますが、危険な状況は残った人質と変わらない。その救出作戦の陣頭指揮を任されたのが、CIAの人質奪還のプロ、アントニオ・メンデス。彼は、ニセの映画製作をでっち上げ、スタッフとして出国させるという前代未聞、危険極まりない作戦を提案する。

    しかし、さすがハリウッドの国。プロデューサー、脚本、特殊メイクとあっという間に一流が揃い、作戦は実行されます。こんなに映画のような出来事が、実際に国のこととして行われていることの驚き。もはや現実とは思えない出来事に、呆気にとられつつ興奮するという不思議な感覚のある一冊。

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    投稿日:2014.09.25

ブクログレビュー

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  • nekotaro

    nekotaro

    こんな事件が起きてた事を恥ずかしながら知りませんでした。。。

     アメリカのイランへの対応に反感を持ったイラン人学生数百人が1979年11月4日に駐在米国大使館を占拠し大使館員や現地スタッフ70名余りを監禁。人質と共に立て篭もり前国王パーレビの引渡しを求めた事件で、最終的に52名の人質が開放されたのは事件後444日経過した1981年1月20日だった。その間イラン政府は全く介在せずその為に長期に亘る監禁事件に繋がった。

     本作は占拠された日に混乱に紛れてカナダ大使館員の自宅に匿われて居たアメリカ人6名の救出を実際に実行したCIA偽装工作員が執筆したノンフィクションです。

     登場人物が多い上に偽装工作員として携わった事件の経験を挟みながらのストーリー展開で正直興味が薄れて読み続けるのが辛くなりますが、彼らCIA工作員の働きは映画MI・6を凌駕する程の技術と繊細さがふんだんに綴られており、現実世界でもやはりこんな仕事があるんだと本当に関心してしまいます。
     
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    投稿日:2021.04.18

  • sasha89

    sasha89

    カーター大統領が、病気療養との名目でパーレビ元国王をアメリカに
    受け入れたから、さぁ大変。イラン革命後のテヘランではホメイニ師を
    指導者と仰ぐ過激派学生が、元国王の引き渡しを要求してアメリカ
    大使館を占拠した。

    カーター大統領の支持率ガタ落ちの原因にもなった、イラン・アメリカ
    大使館占拠事件だが、同じ敷地内のアメリカ領事館からは既に6人
    のアメリカ人が脱出していた。

    反米感情を高めるイラン人に見つかったら、殺されるかもしれない。
    身を隠さなければいけない6人に手を貸したのは、アメリカの隣国・
    カナダ大使館だった。

    そして、CIAに命令が下る。アメリカ人6人を救出する作戦を立て、
    実行せよ。

    映画「アルゴ」の原作である。なんといっても私の大好きなスパイの
    世界である。映画の方は観ようを思っているうちに、劇場公開が終わっ
    ていた。

    さぁ、どうやって6人を脱出されるか。イランに職を求めに来た英語
    教師?それとも穀物調査に訪れた栄養士?いやいや、ここは最も
    大胆な作戦にしよう。そうだ。映画のロケハンに来たハリウッド関係
    者に仕立ててしまおうじゃないかっ!

    手に汗握るスパイ小説…という訳ではなく、カナダ大使の私邸に
    匿われた6人をいかにハリウッドの人間に仕立て上げるかの
    下準備が丁寧に記されている。

    派手なアクションもないし、スパイ同士の対決もない。6人それぞれ
    の偽の履歴を作り上げ、必要書類を偽造し、挙句の果てには
    ハリウッドに事務所まで作り、制作予定の映画広告を打つ。

    すごいなぁ。パスポートを始めとした文書偽造は映画や小説でも
    よく出てくるが、その人物の背景まで作り上げるんだもの。

    本書は脱出工作の準備に多くが割かれており、これが堪らなく
    面白い。脱出劇そのものは最後の方におまけ程度だ。

    CIAの実行力も凄いが、この脱出劇で大きな役割を担ったのは
    カナダである。「カナダの策謀」と呼ばれているようだが、カナダ
    政府の全面協力がなければ実行出来なかったろうな。

    だって、CIAが「すいません、出来ればあなたの国のパスポート
    を使わせて頂きたいんですが」とお願いしたら、「ええ、もう準備
    してますけど?」なんだもの。

    アメリカから田舎者扱いされるカナダだが、もっと感謝した方が
    いいよ。そもそもカナダ大使が匿ってくれなかったら、どうなって
    いたか分からないんだから。
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    投稿日:2017.08.19

  • velikiy99

    velikiy99

    イラン革命後秘密裏にカナダ大使館から複数のアメリカ人を脱出させる困難な作戦を立案・遂行したスパイの手記.
    映画化もされたとのことだがそちらはチェックしていない.
    変装の技術を,ということで変装の専門家であるハリウッドに多分な助力を仰いでいるというのは興味深かった.作戦自体は人質全員の救出でもなく,たった6人の人間の脱出ということで,正直それだけではあまり華がある作戦という風には見えないが,実際には6人どころか,1人を脱出させるだけでも,周到・綿密な準備と,現場での不測の事態にも即興で対応する判断力とが要求される,難しい仕事であることが窺える.続きを読む

    投稿日:2017.07.03

  • shimu2

    shimu2

    [史上空前の一本]民衆によるアメリカ大使館の占拠から逃れ、イラン・テヘラン市内を転々としながら潜伏を続けた大使館員らを救い出すため、CIAは前代未聞で奇想天外な作戦を考案する。それは、「アルゴ」という架空の映画の製作をでっち上げ、人質らをそのクルーとしてイランから外国へ連れ出そうとするものだった......。ベン・アフレック主演の映画版の原作にもなった作品です。著者は、実際にこの活動に携わったアントニオ・メンデスとライターのマット・バグリオ。訳者は、特にミステリーをはじめとする小説の翻訳でも名高い真崎義博。原題は、『Argo』。


    映画版では、これでもかとばかりにクライマックスとハラハラドキドキの応酬だったのですが、実際の救出活動自体は、綿密な計画と準備、そして大胆な実行力をもってして成功に導かれたことが本書からよくわかります。「そこまでやるか」という言葉がしっくりくるでっち上げぶりに、アメリカとCIAの底力を見る思いでした。


    今日のアメリカ・イラン関係を考える上で外すことのできない、アメリカ大使館占拠事件に関する生々しい記録として読むことももちろん可能。アレルギーと言っても過言ではないほどの悪感情を何故に両者が持つようになったかの一端が本書から覗かれます。また、救出に際し、カナダの果たした役割の大きさが重要視されていることから、危機的状況における協力ほど国家間の関係が露呈するものはないなと感じました。

    〜この計画にはほかの計画ではあり得ないものがあった。楽しみという側面だ。〜

    ちなみに映画版も☆5つ
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    投稿日:2016.02.12

  • komagoma1

    komagoma1

    このレビューはネタバレを含みます

    映画と違って盛り上がりに乏しいが、これはノンフィクションだからやむを得ない。むしろ、周到な計画と臨機応変お対応によって、何事もなく脱出を達成するところにCIAの仕事の凄みを冠した。さらに18年も公表を控えざるを得ない点も、CIAならでは。
    本書を読むと、このところのアメリカ-イランの接近には感慨深いものがある。

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    投稿日:2015.07.26

  • tockeee

    tockeee

    1979イランでイスラム革命勃発。パーレビ国王がアメリカに亡命し、ホメイニ師が政権をにぎると、ホメイニ派の学生たちがアメリカ大使館に侵入。60名のアメリカ人を444日にわたって人質にとった。そこからカナダ大使館へと逃げ込んだ6人のアメリカ人を、インチキ映画のスタッフに扮することで脱出させたCIAの手記。映画に比べて、地味でたんたんとしているがその分史実としての迫力に満ちている。登場人物が多すぎて、こんがらがるところもあったけれど。続きを読む

    投稿日:2015.03.06

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