【感想】桜の森の満開の下・白痴 他12篇

坂口安吾 / 岩波文庫
(72件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
27
25
7
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ブクログレビュー

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  • tk

    tk

    情痴作家って言葉、すごいなって思ったけどたしかに恋愛、女、情欲にかかわる話が多かった。そういうのを選んで編纂したんだろうか。エロいし浮気なのに爽やか、誠実、孤独、悪魔的という感じの女性像。
    谷崎潤一郎や泉鏡花を読んでみようと思った。不連続殺人事件と私は海を抱きしめていたいも読みたい。続きを読む

    投稿日:2024.04.07

  • 4614

    4614

     坂口安吾の世界観にとても惹き込まれた。限りある人生のなかで心をかきむしり続ける恋の不思議に触れたように感じました。
     プラトニックか肉欲かという葛藤、人の浮気性、利己的か利他的か、人間のもつ苦しい業をここまで描くのかと驚きでした。しかもそれらを批判的ではなくて人間の美しさとして肯定的なところがどこかしら感じられました。読み終わって安吾の堕落論にみられる人間が持つ欲するものを欲する精神の悲しさと美しさがわかった気がしました。
     個人的には『恋をしに行く』と『夜長姫と耳男』が好きでした。恋をしに行くは最後まで精神か肉体かの対立が明確で、それを踏まえて迎えるラストは清々しくもどこか虚しい。夜長姫と耳男は終始グロい黒さが漂うのにとても静謐な感じが好きでした。
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    投稿日:2023.08.26

  • 5757274

    5757274

    一篇目の『風博士』で狐に摘まれたような気分になり、はやくも頭の中では仕事帰りにBOOKOFFで売り払うこと考えつつ、しかし頑張ってのりこえ、そこから先は天国。痴情作家といわれるらしいが、個人的にはそうは思わなかった。男女の関係はいわば生物学の基本で、人間感情の基本でもあるわけで、言ってしまえば政治小説とかの方が異常。それはさておき、痴情というからテッキリ小澤さん甘いよ、甘すぎるよーな筋かと思いきや、自分が完全にこの作家に対して無知から入った所為もあるが、戦争と切っても切れないような作品ばかりで、面食らった。解説曰く、作者は谷崎潤一郎に若い頃憧れていたらしく、言われてみれば系統的に似ていると思うが、同じく解説曰く、系統は似ていても中身はやはり違う、具体的には、谷崎文学は被虐愛で、作者のは奇怪な性格の女性を前にして聖のような主人公の性格が浮き彫にされる感じらしい。確かに、別に被虐愛に溺れている感じではない。『卍』のようなヒョエーな感じはない。思うに、太宰治とは別系統ながら女性に対する観察が鋭いのかなとも思った。思っただけ。期待せずに、それどころかむしろ恐る恐る読んだのでほとんどメモも何ものこさなかった。また近いうちに再読したい。

    総じて言えるのは、男女関係の深層に孤独が巣食っている感じ。
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    投稿日:2023.07.10

  • りん

    りん

    このレビューはネタバレを含みます

    女は空で男は鳥だったその表現が綺麗でした
    男は女にとって綺麗で記憶からも話せないそんな存在
    それを桜で例えててると解釈しました。桜と散る男を見ると彼はもう恐るものはないと思いました

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    投稿日:2023.03.22

  • えびふらい

    えびふらい

    坂口安吾を初めて読んだ。なんと粒揃いの短編集! デビュー作から、耳男まで、どれもひとつひとつ深い。坂口安吾の書いたものすべて読んでみたい。

    投稿日:2022.11.12

  • 傍らに珈琲を。

    傍らに珈琲を。

    文庫は、ナンセンス文学である「風博士」から始まる。
    どこかドグラ・マグラ的な匂いを感じなくもない。
    幾度も同じ単語を並べ立て、強調に強調を重ねた「僕」の語り口に、だから何なの?と言いたくなる。
    演説のような「僕」の熱弁ぶりと反比例して、読者は段々とバカバカしい思いに捕らわれていく。
    それでも何か意味があるに違いないと私達はページを繰る。
    しかし坂口安吾は、深読みしたがる読者を煙に巻くのだ。

    さて、読みたかった「桜の森の満開の下」。
    昔話のような語り方で、美しい桜の木のもと、人の業が描かれていた。

    青空のもと見上げる満開の桜は春の喜びを感じるのに、
    ハラハラと散る桜は儚げで美しいのに、
    月明かりに照されて闇夜に滲む桜は、何故妖しさを纏うのだろう。
    美しく小さきものは可愛らしいのに、何故満開の大木は恐ろしいのだろう。

    あの花の下でゴウゴウという風の音を聞いた時、花びらが散るように魂が衰えてゆくと感じた時から、山賊は自分の中の「恐怖」を実感する。
    美しくも残忍な、あの女は何者だったのか。

    山賊は女との出会いを切っ掛けに、女が着飾る「美」を知ってゆく。
    人其々の「価値観」も知っていったのかもしれない。
    そうして山賊は、「知」が増すことで逆に「知らない」ことへの羞恥と不安も湧いてくる。

    物語は、美しすぎるものには恐怖すら感じてしまうという人間の不思議な感覚を、
    桜の妖艶な美しさを効果的に使いながら展開していた。
    「知」を得たからこその「未知への恐怖」
    物では満たされぬ「欲求」
    それ故に「狂気」にも陥りかねない「際限のない欲求」と「退屈」
    それらに飲み込まれ自分を見失ってしまった者に訪れる「孤独」と「空虚」
    失って気付く「悲しみ」

    山賊は、もはや自分自身が「孤独そのもの」であることを知り、自分の胸に生まれた「悲しみにさえ温かさを感じる」のだ。
    そして消えてゆく。
    全ては桜の花が魅せた幻影だったのか。
    それは桜の花だけが預かり知るところ。
    残るはハラハラと散る桜と、冷たい空虚のみだ。
    しかし読者は、その恐ろしいラストシーンにさえ美しさを感じてしまう。
    何度も読み返したい、坂口安吾の傑作だ。

    他に収められている物語も「女性」を絡めつつ「欲求」や「エゴ」を描いている。
    表現方法は実に巧みで、読み返すほどに味わいの増す1冊。
    続きを読む

    投稿日:2022.11.09

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