【感想】兎とよばれた女

矢川澄子 / ちくま文庫
(17件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • tikuo

    tikuo

    日本書紀の因幡の白兎あたりをベースに、ローマ神話や聖書などを絡めつつ、古今東西の昔話などの解釈を交えて進むファンタジー。

    良く言えば神秘的、悪く言えば荒唐無稽で、神話だの竹取物語を解釈したものを加えていくというスタイル。挙げ句に最終的に作者や読者まで登場させるのだが、結局最初から最後まで、パロディーとして楽しんでいいものか、真面目に書いているのか、それとも何も考えずにいきあたりばったりなのか、理解に苦しむ。

    語彙力はそこそこあるようなのだが、同じような表現が繰り返し使われ、必要以上にひらがなばかりなど、平易に書いているのか、計算なのかどうなのか。

    世界観がひっくり返ったり、神という名で作者の手の内を明かしたりという小説には比較的慣れていると思うのだが、なんとも退屈に感じたのは、「何がどうした」という動きがなく、ひたすら状況を述べているからだけなのだと思う。

    詩人ということで、詩的という解釈もあろうが、個人的には好きになれないたぐいの文章である。
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    投稿日:2019.10.24

  • ぎにょる

    ぎにょる

    再読。
    そういえばこれにもプラトンの『饗宴』的な話が出てきたなぁ、と。
    謎が謎を呼ぶメタ構造。改めて読んでみるとまた新たな発見があって面白かった。

    恥を承知で書くなら、これはわたしの物語。
    もっとも、わたしは矢川澄子ではないし、ましてや兎でも翼を持った女でもないが、それでもこれは確かにわたしの物語なのだ。


    度々使われる「赤裸」という言葉に、皮を剥がれた因幡の白兎の姿を象徴的に感じ取った。
    女性としての哀しみ。
    届かない想い。
    あまりにも著者が登場人物に自己を投影しすぎていて、いたたまれない。

    「神さまはまさしく兎のすべてでした。」
    すでに失った世界を手にするように、あるいは欠けている何かを求めるように、愛す。
    ほんの少しの既視感。
    最後の最後に兎は救われたような心地になる。
    これはあくまで物語だから。
    矢川女史、貴女は一体どんな思いで自死を選んだのですか。

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    投稿日:2019.06.17

  • 深川夏眠

    深川夏眠

    著者の結婚生活については
    読書好きの間に広く知られているので、
    本文中、暗に仄めかされることが何を指しているのか
    見当がついてしまうため、読んでいて気分が重くなった。

    神様と兎の住む小さな島国、仮称「スミの国」にて、
    神様は男性として魅力的だが我儘で尊大で、
    兎を振り回し、苦しめる。
    兎は神様との性愛に溺れるせいもあって
    マゾヒスティックな快楽を味わいつつ、しかし、
    自分の人生はこのままでいいのだろうかと疑問を抱き始めた……

    というお話なのだが、
    実体験を象徴化して小説として結実させようというには
    練りが足りないというか、
    実際「結の巻」と題されたパートでは
    メタフィクショナルな強引な説明を試みているし、
    これは実話ベースなんだよ、理解して!
    と訴えたいのだとしたら、
    オブラートにくるみ過ぎていて生ぬるいし……。

    もっとも、恋愛至上主義者で、かつ、
    自己陶酔型の女性読者の心には
    強く響く作品なのかもしれない(我ハ然二非ズ)。
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    投稿日:2018.12.12

  • 葎花

    葎花

    このレビューはネタバレを含みます

    再読了。こころが、とてもひりひりした。
    一読目には足りなかった理解や思索が、少しだけ育っているように感じた。
    一章ごとに、共感(だろうか?)と痛みが、線を引いたり砂を重ねたりするように積まれてゆく、と思った。よろこびがともにあると信じたい、けれどそのよろこびは、それこそ「かぐやのかつてあった国」のように、此の世とは絶対的な段を隔てた場所にしか、ほんとうはない。
    求めて寄添い、よろこびのうつそみを得こそすれ、とどくことはない。言うなれば(やや秩序的な風になってしまうが)よろこび/しあわせのイデアが、永遠に届かず魂を渴かせるようなもの、だろうか。また、世において女、替えようのないじぶんであることが、囚人の桎の錘にも似て飛翔を妨げている、と感ずる。
    求めずにいられないが、求めたものは、与えられ手にし得たものとはいつもどこかずれている、とも。とてもせつない。
    解説に挙げられた一句が、つきん、と胸を痛めてきた。

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    投稿日:2017.10.02

  • 浮舟

    浮舟

    実験的な構成で、お伽話のように書かれているが結婚、妊娠、堕胎などについて作者が頭のなかでぐるぐる自問自答している過程がそのまま描かれているような箇所もあり妙に生々しい。こういう片足だけハイヒールの踵が取れてるような情念は痛々しくて目を背けたくなる。
    でも、そこが魅力でもあるのかもしれないけれど。
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    投稿日:2015.04.15

  • mayu

    mayu

    往来堂書店でふと雰囲気に惹かれたものの、恐らく半年以上積んでいたもの(もしかすると一年くらいかもしれない)
    一つの小説なのに、色んなスタイルがあるところが楽しい。
    現代小説のような、神話のような、古典のような、戯曲のような、童話のような小説。
    うさぎのひたむきさ、神様への信仰は、恋愛小説としての極地のような気がした。
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    投稿日:2013.07.31

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