【感想】記憶喪失になったぼくが見た世界

坪倉優介 / 朝日文庫
(67件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
17
26
14
2
0
  • 想像を絶する不思議な体験のノンフィクション

     記憶喪失という言葉は知ってますし、数々のドラマ等でも見てきましたが、これは本人が体験したことを綴った物ですから、まさに真実の物語であります。
     記憶喪失の症状は様々な形態がありますが、彼の場合、字も書けなかったとありますので、前半部分は回想して書いたのでしょうか?とすれば、実際には当時の心情とは若干異なるのかもしれません。
     それに、ご本人も大変だったでしょうが、心配しながらも自立させる道を模索したご家族の苦労も大変だったでしょう。
     様々なエピソードが書かれてあるのですが、あ~なるほどそうだよね、というのも結構あって、カタカナと同じ形の漢字を何故キチンと読めるのか、などというギモンは面白かったですね。「カーショップ」は確かに、「ちから-ショップ」ですもんね。
     後半部分は、芸術家としての記述が多くなってくるので、少々元のタイトルからは外れる気がしますけど、美しき着物の写真も掲載されていました。しかし、「まつたけ染め」はいかにも、もったいないですよねぇ。
     さてさて、まっさらの状態で生まれてくる赤ちゃんは、少しずつ知識や経験を積んで大人になっていくわけですが、18歳でまっさらの状態になってしまった人間が、苦悩しながらも大急ぎで成長していく姿は、とても興味深いものでした。性格も多少変わったと同時に芸術的センスも開花したのかな?ビートたけしも、あのバイク事故から、世界の北野武になったわけですし、いかなる状況に陥っても、めげずに前を向いて歩くことが必要なのでしょう。
     ただ、坪倉さんは元々美大生で芸術的センスを持ち合わせていたのでよいですけど、そうでない平凡な人間はどうしたらいいでしょうかねぇ。
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    投稿日:2021.02.01

  • 新しい過去を築いていく

    坪倉優介さんは18歳の時に交通事故にあい、それまでの記憶を失います。
    彼は家族や友人との思い出だけではなく、自分が持っていた感覚さえうまく理解できなくなってしまうのです。

    冷たいお風呂にも何も気にせず入ってしまい、満腹が分からず出された料理は無理にでもすべて食べてしまう。
    みんなが当然のように行っている”当たり前”を、坪倉さんはゼロからひとつひとつ学び直していきます。

    読んでいて苦しくなるような場面もあるものの、「ぴかぴか光る物」をごはんと認識したり、自動販売機から人間の偉大さを感じたりと、彼の目線は日常に慣れた僕らには新鮮。

    記憶は戻らないけれど、見知らぬものになってしまった世界を必死に歩き、ひとつひとつ掴み直して新しく手にする記憶を大切にしていく。目の前の景色が持つ意味を、ゼロからつくり上げる物語。
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    投稿日:2014.11.27

ブクログレビュー

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  • けんちきん

    けんちきん

    事故で記憶をなくした著者の話。生まれて初めて見るものを不思議に思う気持ちや、知らないことに戸惑いながらもチャレンジしていく様子は読んでいて新鮮な気持ちになった。

    投稿日:2022.10.23

  • アコギ

    アコギ

    よく映画やドラマで題材となる記憶喪失。これが現実にあったと語る本人が出てるテレビを見て興味を持ったので購入。

    投稿日:2022.05.07

  • うどんが好き

    うどんが好き

    このレビューはネタバレを含みます

    交通事故で記憶を無くした美大生が新しい自分を作り上げるまでの過程を一人語りで記した手記。
    「記憶を無くす」ということがどんな体験なのか、理解のしようもないが、周囲の理解も大きかったのだろう。中に筆者の染色作品が掲載されているが、とても優しい色合いながら凛とした輪郭を持っており、これが現在の彼なのだということが垣間見える。「事故の前の記憶が戻ること」が最も怖く、事故の後に手に入れた「新しい過去」に励まされているという結語がなんとも心強い。

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    投稿日:2022.02.10

  • finger0217

    finger0217

    よくドラマなどで目にする「事故による記憶喪失」という症状。大切な人との記憶を失い、すれ違いなどを経てまた新たな関係性を築き上げたところで過去の記憶が戻り…というのはよくある話ですが、現実はそれほど甘くありません。

    自分が何者かはもとより、周囲の人間が離している言葉の意味や、自分の身の回りにあるもろもろの物体の名前や役割、はては社会生活で必要な知識をも失った筆者は、「できない自分」「かわいそうにみられる自分」に苛立ちながら、そして困難を抱えながら新たな生活を進めてゆきます。

    「事故による記憶障害」という症状との闘病記録としても読みごたえがありますし、現在は染織の専門家として活躍する著者の自伝(読み物)として楽しむこともできます。
    解説で俵万智さんが書いている通り、芸術を選考する著者が記憶を失ったことは、もちろん不幸な出来事ではありましたが、「世の中を新鮮な感覚で再発見した」という経験はアーティストとしては財産になった部分もあったのかもしれません。
    そして著者を支え続けた、それぞれに母性・父性を全開にしたようなご両親の力にも感動しました。息子を常に受け入れる母親と、時に厳しく突き放すように見えても根底では息子をきちんと愛している(そしてそのことを度々行動で示す)父親という、やや古風な家族像が著者の回復によい影響を与えていることが(そして著者が両親に感謝していることが)ひしひしと伝わってきて、子育てをしている身としても学ぶところが大きかったように感じます。
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    投稿日:2022.01.08

  • もん

    もん

    自身の言葉で始まる文章はまるで1,2歳児の言葉がでない子どもの心の声の様だ。そこから大学へ戻り、更には染めの仕事をする…壮絶な人生、だがとても明るく真っ直ぐに生きていらっしゃる。

    いつか染められた着物を目にしてみたい。

    途中に母親の手記もあり、見守る優しさと強さを感じる。

    解説で俵万智氏が書いたとおり、『もともとの絵画的な才能に濁りのない感性が宿り、芸術家としてプラスだったのでは』と。+にできたのはご自身の努力、家族や友人の愛情、何よりとても素直な心の持ち主なんだろうな、と思った。

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    投稿日:2021.04.27

  • mimizuku0125

    mimizuku0125

    記憶を失った著者の驚きと感動の物語。激レアさんを見るまで知りませんでした。「記憶」の上に人間が暮らしているという当たり前すぎる事実。その重要さを改めて感じさせられた。

    投稿日:2019.10.14

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