【感想】私とは何か 「個人」から「分人」へ

平野啓一郎 / 講談社現代新書
(502件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
190
165
77
8
3
  • 「本当の自分」なんて存在しない

    会社員の私、大卒の私、妻の私、ゲーマーな私、今ここでレビューを書く私。
    私たちは様々な人間関係の中で、いくつもの顔を持っている。
    どれが「本当の自分」なのか。
    人間を分割不可能な「個人(individual)」として考えると、多くの矛盾が生じ、行き詰まってしまう。そこで、人間を分割可能な「分人(dividual)」に分け、「分人」の集合体が私なのだ、という考える。

    「地元の友人と大学の友人が同席する席で飲んだら居心地が悪かった」
    「高校に進学した途端、地味だった彼が急に開放的になった」
    「いつも大人しい知人が、ネットでは攻撃的な性格で驚いた」
    「私には忙しいと言ってたくせに、他の人と遊びに行っていた」
    著者は身近な具体例をあげながら「分人」という考えをひも解く。

    現代の人間関係に生き辛さを感じている人におススメの一冊。
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    投稿日:2013.09.24

  • 人への戸惑いが減るかも

    自分自身も含めて、人間を理解するのに上手く整理された考え方だと思います。自分の振る舞いや、他人の振る舞いをどうとらえるのか、これを基準に考えると、戸惑うことが減るき気がします。

    投稿日:2013.11.16

  • 人間関係におけるひとつの考え方

    人が持つ多面性について,よく使われる「本当の自分」という考え方に対し,本書では「分人」という言葉を使って
    異なる視点からアプローチしています。
    自分自身が持つ多面性も,他人がもつ多面性も存在してしかるべきとしたうえで,この多面性をどのように
    扱ったらよいのかということを考えさせる内容でした。

    自分の気持ちの整理がうまくいかなかったり,他者との付き合い方に少しでも不安や悩みがあるのであれば,
    本書はひとつの解決策を提供してくれると思います。

    あくまでひとつの考え方ですが,私にはとても納得のいく内容で,とても参考になりました。
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    投稿日:2014.04.16

  • 人間関係は複雑なようで、実は足し算である。

    なるほど、自分は1人ではない。1人の中には、違う人と接するたびに、違う自分がいるという分人という考えを提議することは、うならざるを得なかった。

    自分自身のことを考えると、周りにいる人全てに同じ対応をしているのか?と聞かれると、決してそうでは無い。相手との関係性、私が考えている相手の性格、これまでの流れなどをカんがあわせた上で、話をしたり、態度を取ったりしている。

    そのようなことは、普通のことで何一つ否定されることはない。だとすると、タイトルの通り「私とは何か」と言うことになるが、それが私で有り、あなたなのだ。

    少し前の、異業種交流会で話題になった本であったが、非常にスッキリ読み終えることができた。あのとき会えた皆様に、感謝。
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    投稿日:2017.01.01

ブクログレビュー

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  • はむ狂

    はむ狂

    たしかに、誰かの知らない一面は裏の顔っていうよりもう一つの顔。たしかに、好きでいられる自分の割合を増やしていけば良いのだ。他人は自分を映す鏡ってそついうことか。。。納得の考え方
    結局、人間は社会の中、他人との関わりの中で形成されていくんだなあ。アドラー的。
    そのへん、動物ってどうなんだろう。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.09

  • ダイ

    ダイ

    10年以上も前の本だが、普遍的な概念の提示をしてくれる本書。
    結構、人間観が変わると思う。

    人を「個人」(individual:分けられないもの)として考えるから色々複雑になってしまうのではないか、という問題意識から、人の中には複数の分人(dividual:分けられるもの)があるのではないか、という提案。

    さらに、この分人は他人との相互関係によって形成されるという。例えば、高校時代の友達と数年ぶりに会ったとき、どこか違和感を持つとすれば、それは高校時代、その相手に対して作っていた分人がすでに小さくなっているからだという。

    本書は一貫して「分人」の提案というワンメッセージだが、それだけで普段の生活に示唆があり、かなり人間観の変わる記述であると思う。

    個人的には、コロナ禍で家族としか過ごす時間がなく辛かったのも、リモートワークで精神的に疲れるのも、その1日に家族用の「分人」、仕事用の「分人」しか現れていないからなのかなとぼんやり。
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    投稿日:2024.04.06

  • ひかり

    ひかり

    平野啓一郎さんの実際の体験などをもとに書かれた本。実際に自分の周りにもありそうな実例で正直親近感が湧き、想像しながら読むことができた。ネットの中の姿とリアルの姿。正直私も平野さん同様、どちらが『本当』の姿でもいいと思う。肝心なのは本文にもあるように、一部を見て恣意的に他人が「本当の姿」だと本質を規定することは違うと思う。すべての分人は結局は「本当の自分」である。そして、個性とは唯一不変のものでなく、他者の存在なしには決して生じないものだとこの本を読んで知ることができた。とても勉強になる本だった。続きを読む

    投稿日:2024.03.29

  • ふう

    ふう

    すごく分かりやすく、面白かった。
    付箋が沢山。

    多くの人が「分人」という考え方を
    導入するまで行かずとも まず認識したら、
    今より少し自由度の高い社会になりそう。

    投稿日:2024.03.08

  • こばほん

    こばほん

    本当の自分とは?自分らしさとは?
    常についてまわる呪いのような問いを軽くしてもらえた一冊です。

    対人関係ごとに見せる複数の顔を、「個人」をさらに分けた「分人」とし、
    分人は偽りの自分ではなくすべて本当の自分だという考え方を知りました。

    この人たちといる自分はのびのび笑っていられて好き。
    ここにいる時は人の顔色をうかがって縮こまって息苦しい。
    身を置く環境よって分人は複数存在し、逆にいうとたったひとつの本当の自分は存在しない。

    コミュ障気味で初対面の人となかなか打ち解けられないことを気にしていましたが、ちょっと気が楽になりました。
    のびのび出来る分人に重きをおき、大切に育てていくことは、いやな自分とも距離をおくことにもつながる。

    まだ出会っていない自分を知るためにいろいろな環境に身をおきたいと思いました。

    異世界転生ものが流行っているのは、
    いまもっている分人に満足できず新しい自分の姿を見つけたい願望からきているのかな?
    とも感じました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.03

  • 仮面ライター

    仮面ライター

    これ以上分割できないものとして近代西洋哲学の概念の基礎となる個人(indivisual)に対し、平野啓一郎さんが対人関係毎に異なる自分があり、その総和が自分であるという分人(divisual)の考えを提唱した本。

    【場面ごとに異なる自分】
    平野さん自身が経験した違和感として、以下のような場面により異なる自分の現出がある。これらの場面で、どれが本当の個性であり、自分であるか戸惑った。
    ●カトリックの学校で友達とにぎやかに過ごす自分⇔家に帰り小説の世界に一人没頭する自分
    ●パリ留学中フランス語上位クラスで寡黙で陰気な自分⇔パリの日本人コミュニティの中で饒舌で陽気な自分
    ●大学の友人との飲み会に高校の友達が参加したときの居心地の悪さ
    ●対編集者、対母、対子供、対作家での自分

    【ペルソナの問題】
    ペルソナに代表されるように本当の自分があり、場面ごとに仮面を付け替えていると考えたときに、この本当の自分がはらむ問題として、以下がある。
    1.誰とも「本当の自分」でコミュニケーションを図ることができない
    2.一方的にこちらが決めて演じるものではなく、あくまで相手との相互作用
    3.他社と接している「分人」には実態があるが、「本当の自分」には実態が無い(本当の自分が存在しているかどうか、それを感じる時がない)

    【個人と仕事の関係】
    個人が注目されてきた理由の一つとして、個性と仕事の関係性を取り上げる。
    仮説)個性の尊重は、将来的に個性と仕事を結びつけることを意味している。つまり、自分のしたい仕事をすること事こそが、個性的に生きるということ。

    仮に上記を達成しようとした時に、問題となる事実が、「職業が個性に基づいて用意されていない」ことである。例えば、手紙を届けるのが好きで得意な人がいるから、郵便屋さんの仕事ができたのではなく、手紙のやり取りをする必要性から、郵便屋さんの仕事ができている。

    誰しも今の自分がやりたいことは何か、今の仕事が本当にやりたいことか悩む場面があり、ここにアイデンティティの苦しみが生じる。その結果、内側にベクトルが向くと引きこもりに繋がったり、外側に向くと自分探しという行為に繋がる。これは真綿で首を絞められるような苦しみである。

    【個人の発生】
    個人の発生は、キリスト教と言語学や自然科学のような論理学の2つの側面から生み出されたと考えられる。
    ●キリスト教・・・誰も二人の主人に仕えることはできない。ただ一つの本当の自分で一なる神を信仰しなければならない。
    ●論理学・・・分けていくことで世界を記述しようとする。

    【分人の発生】
    自分の個性を尊重されたいと思うと、他人の個性も尊重しなければならない。その場合、本当の自分をゴリ押しできず、その場でコミュニケーション可能な人格をその都度作る。しかし、誰かと会うたび全く新しい自分であることはできない。反復的なコミュニケーションを通じて形成される一種のパターンが人格であると言える。

    これらのコミュニケーション上の傾向から、分人の発生プロセスを考える。
    1.社会的な分人の形成/エレベーターでの会話をする自分、行きつけのコンビニでの自分
    2.グループ向けの分人の形成/学校やコミュニティなどでの振る舞い、キャラ
    3.特定の相手に向けた分人の形成/自分の個性を認めてもらったうえで付き合ってほしい特定の人(恋人、親友、親、兄弟など)

    【分人で考えなおす】
    ●誰と付き合っているかで分人構成比は変わる。その個性が個性。
    ●個性とは生まれつき不変なものではない。
    ●変化を肯定的にとらえられる。
    ●好きな分人を足掛かりに人生を肯定的に生きられる。

    【自分と他者を見つめなおす】
    分人で考えると、すべての自分を構成する分人は他人との相互作用であるから、どんな悩みも半分は他人のせい、ポジティブな結果も半分は他人のおかげさまと捉えられる。
    先の大学の友人の飲み会に高校の友達が入り気まずさや中学校の運動会で必死に騎馬戦を戦っている姿を親に見せたくないのは、分人を混ぜたくないと考えている。
    私と仕事どっちが大事なのという問いも、仕事の分人と私の分人どちらが大事なのという問いに置き換えられる。

    【分人思考で自分を好きになる】
    ●世界か、自分かどちらかを愛する気持ちがあれば生きていける(小説「決壊」)。●人はなかなか自分を好きだと堂々と言えない。しかし、誰それといる時の自分は好きと言いやすい。
    ●誰かといる時の自分が好きということは、他者を一度経由している。
    ●自分を好きになるためには、他者が不可欠であるとうパラドックスこそが分人主義における自己肯定に繋がる大事なポイント。

    【愛すること、死ぬこと】
    分人主義では、誰かの存在で自分や相手が自身を愛せるようになることが愛と考える。
    愛とは一時的なものではなく持続する関係。相互の献身の応酬ではなく相手のおかげで、それぞれが自分自身に感じる特別な居心地の良さではないかと主張する。

    分人は、コミュニケーションで少しずつリフレッシュされる。ここから死について考えると、死とはその人との分人が更新されないことを意味する。また、殺人はその人だけではなく、周辺の人たちからさらに周辺の人に広がる無限の分人リンクを破壊する行為である。老いるということは、自分自身の分人を整理していくということ捉えられる。

    【個人主義と分人主義まとめ】
    個人主義(indivisual)…他者とは明確に区別される。栄光はあなたの手柄。=>分断的
    分人主義(divisual)…他社との関係においては不可分である。=>非分断的

    個人主義は一個の独立した自分を想起させ、どこかに本当の自分があり、自分の本当にやりたいこと(仕事)を選んで、社会に貢献させる。一方で、他者とのかかわり方が一定でないため、本当の自分を想定したときに偽りの自分を演じている感覚に陥る。また、本当の自分がやりたいことはなんだろうという漠然として真綿で首を絞められるような苦悩を味わう。
    分人主義は、本来人間が人と人との間に存在するもので、他者と不可分であるが故に、すべての場面の自分を肯定的に受け入れられる。大きな悩みがあってもそれは、すべて自分の責任ではないという、駆け込み寺のような救いに繋がり、何か成功しても、半分は他人のおかげという感謝の気持ちに繋がる。これ以上分けられない個人主義が生んだ他人との分断を埋め、肯定的に他者との関係の中で生きていく視点の転換になる考えだと思います。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.02

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