さっさと不況を終わらせろ

ポール・クルーグマン, 山形浩生 / 早川書房
(49件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
18
15
9
2
0
  • アベノミクス理解への一助に

    平易な文章というか極めて口語的な文により、素人でもデフレ下における量的金融緩和がなぜ経済対策に有効なのかが理解できます。また、無節操な規制緩和も規律の乱れを引き起こしてしまうことが理解できました(リーマンショックの要因のひとつ)。安倍内閣の経済政策を判断するために参考にしてはどうでしょうか。続きを読む

    投稿日:2013.10.01

  • 経済停滞と「子守り協同組合」

    クルーグマンは、2008年金融危機を端緒としたアメリカの長期経済停滞をいかに脱してあるべき経済成長へと回復させるべきかを説いています。

    経済停滞は様々な苦痛をもたらしますが、もっとも深刻なものが失業問題です。職が無い人は、所得が無いだけでなく、職業に就けないことで自分の価値の低下を感じることから、非常な苦しみを強いられるのです。人は職業を通じて、自らの社会における存在価値を確認して生きています。だからこそ、大量の失業は、大きな悲劇なのです。

    本人の問題でなく経済停滞が原因であったとしても、長期の失業は、職業的なスキルを低下させ、また長期に職に就いていないという理由から雇うに不適当な者と見做されてしまうこともあります。特に若者の失業は深刻です。長期経済停滞で、一度も職に就けないまま、スキルを身につけることもできず、雇うに不適当な存在と見做され、これが一生続くのです。好況と不況の時期に社会に出た若者の人生を調査すると、好況の時期に社会に出たものの方が出世し経済的にも裕福な生活を送っているのです。

    では、長期経済停滞の理由は何かというと、それは消費者、事業者、政府が十分なお金を使っていないことからきているのだそうです。対策はというと、需要を十分に大きい規模に増やせば、社会全体は技術も生産能力も有しているので自然に回り始めるという主張です。需要を増やすのは政府の役目なのです。これは、ケインズが20世紀初頭に説いた話と同じだそうです。

    この意見に対する態度は様々で、当たり前すぎて不況への解答になっていないとか、不十分な需要で世界全体が苦しむのはありえないと否定するのが多いそうです。そもそも人々は自らの所得を何かに使わざるを得ないのであるから、需要不足が起きる筈が無いというのです。

    この意見に対して、クルーグマンの出した「子守り協同組合」のアナロジーは、社会経済構造の要点を的確に説明しており面白いです。社会全体の心理が悪化すると需要が不足する仕組みを説明しています。:

    若い議会職員(約150組)が、ベビーシッター代を節約するために、交代でお互いの子供の面倒を見る仕組みを作りました。互いが公平に子守を受け持つように、クーポン制にしてありました。子守をしてもらうときにクーポンを相手に渡し、自分が子守をするとクーポンを受け取る、そして、初めに受け取るクーポン数を脱退するときに返すのです。ところが、クーポン制にしたせいで、手持ちのクーポン数を気にするようになりました。いざという用事にクーポンを取っておきたいために、それまでであれば頼んでいた子守の依頼を控えるようになったのです。皆が子守の依頼を控えることで、クーポンが回転しなくなり、手持ちのクーポン数が少ない者は一層子守の依頼を控えるようになります。こうして、子守協同組合が機能しなくなったのです。この子守協同組合は、クーポンを増刷して増やすことで、参加者の心理を変化させ需要が出るようにしたところ見事に改善したそうです。

    この実例は、以下のわかりやすい主張を説明しています。

    「あなたの支出はぼくの収入であり、ぼくの支出はあなたの収入になる」

    単純明快なことですが、現実の社会経済で世界規模にやるとなると難しいと思います。現実には、事業者も消費者も不景気な状況でお金を使いたがらないので、需要を回復するには政府が大きな支出をするしかなくなります。政府は普通政策金利(公定歩合)を下げることでお金の流通量を増やしますが、政策金利が0%に近いと、0%を切って金利を下げることができなくなります。ですから、もっと広範囲に金融緩和を行い、政府支出を増やすべきだというのです。非常にわかりやすい説明で、かえって本当にこれだけでいいのだろうかと迷ってしまうところに問題の本質があるのかもしれません。

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    投稿日:2014.08.23

  • すべての経済学の本が、これくらい平易であればいいのに

    この本をかんたんにまとめると、

    不況の時には
    ・政府支出を増やして、お金を循環させましょう
    ・民間の負担になること(増税、利上げetc)はやめましょう

    ということになる。
    もちろん言いっぱなしではなくて、様々な理論的な根拠があることも示している。

    この本のいいところは、平易な文章で書かれているおかげで、普段経済政策のことにまったく興味がない層にも経済学の論理を伝えることができるという点である。

    例をあげてみる。
    日本の新聞や情報番組を見ると、『赤字国債の大量発行で日本経済は崩壊する』『だからこそ事業仕分けが必要だ』といった報道がされることが多い。大半の人がこの話を知っていて、日本の将来に悲観している。

    しかし、クルーグマンの意見はまったく反対だ。

    彼によると、不況の時にはどんどん国債を発行して経済を循環させることが必要であるという。
    また。赤字国債の返済は支出カットによる国家予算の黒字化ではなく、インフレによって国債の額が目減りしたときに返せばよいと述べている。

    既存の報道ではなかなか教えてくれないこのような考え方、理論を知ることで、必要以上に将来に不安を感じることがなくなるだろう。

    正しい知識を身につけて、自分で判断することがこれからの時代は求められる。
    それを可能にするのは平易な文章でわかりやすく書かれている本であり、本書はその条件を満たしている。

    リーマンショック後の経済のことについて書かれた本ではあるが、アベノミクスの意味を知る上で理解を深めてくれる本だと思う。
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    投稿日:2014.10.06

ブクログレビュー

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  • sugar41

    sugar41

    タイトルの割には面白くなかったです。
    冗長すぎます。

    ただし、訳者解説は秀逸。
    ここだけ読めば十分です。
    さすが山形浩生。

    投稿日:2017.05.17

  • ヒラハラ

    ヒラハラ

    今さらだけど読んでみた。

    不況の時に財政再建のためといって財政出動しないのは雇用をさらに減らす。
    金融緩和も思い切った程度でやらないと効果ない。
    そもそも不況のときに財政赤字気にしてバラマキやらなくたって不況が続いて失業が増えるなら損失は減らない。

    といったことの理解になった。

    (Kindle版)
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    投稿日:2016.01.02

  • $$$

    $$$

    もしこういう本が分かり易いって言うのなら、そういう人もあってもちろん構わないけれど、それって単純に言って数字が出てこない事、或いは長い説明をダラダラと読んで全ページ読めたことと同じなら、逆に分かりにくいって思う人もいるのではないかと思う。そういうところがまさに欧米人専門家の書いた一般書という印象。続きを読む

    投稿日:2015.02.17

  • ちゃいなおやじ

    ちゃいなおやじ

    ★2014年2月19日読了『さっさと不況を終わらせろ』ポール・クルーグマン著 評価B

    2012年上期の著作なので、まだアベノミクスは世に登場していない。しかし、ノーベル経済学賞受賞のクルーグマン教授は、財政出動、金融政策など現在の政府が取りうる景気刺激策を取るべしと主張。まさにアベノミクスそのものの主張。
    財政赤字削減を優先すべしという世の主流経済学者の主張は、世界を不況の海に沈め続けるだけだと過去の事例をもって検証していく。
    現在のクルーグマン教授のアベノミクスに対する評価を読んでみたい気がする。
    続きを読む

    投稿日:2014.02.19

  • 123456qaz

    123456qaz

    2012年7月20日初版
    ケインズ「緊縮をすべきなのは好況時であって不況時ではない」

    働きたいのに職がない→自分の価値が低下したような気分→尊厳や自尊心に対する打撃
    →この苦しみを終わらせるための知識も手段も持っている。

    マグネトーの不具合→つまらない故障のせい

    子守り共同組合→あなたの支出=ぼくの収入
    FRB 2008年以降マネタリーベースを3倍→流動性の罠(ゼロ金利でも高い)
    金融政策では人々を訓練できない→×失業者=建設業のイメージ

    ハイマン・ミンスキー「金融不安定性仮説」→安定期=レバレッジ→リスクに不注意→経済不安定

    金融イノベーション→金融システムを崩壊寸前まで追い込んだ。
    銀行=金細工工業の副業→金庫の利用のため→引換証=通貨の一種
    1933年グラス・スティーガル法→銀行が手を出せるリスクの量を制限→融資○投機×
    クリントン大統領→廃止

    アメリカ議会が低所得世帯の持ち家を増やしたがったのが融資増大の元凶→×他の市場でも起こった。「サブプライムローンは政府のせい」→保守派(小さな政府主義)の思わく。

    なぜ1%,0.1%の富裕層が,他のみんなより収入が増えたのだろうか?→怒りの制約が緩和された。ゴシップであったものが研究対象。

    マクロ経済学 1940年代 大恐慌への知的な対応の一部,惨劇の再演を防ぐ。
    1936年 ケインズ「雇用,利子,お金の一般理論」
    1948年 ポール・サミュエルソン「経済学」

    オバマ大統領→「大胆ですばやい行動」→不十分

    ミンスキーの瞬間は,実は瞬間ではなかった。→ブッシュ時代 住宅バブル→シャドーバンキングの取り付け騒ぎ→2008年9月15日リーマンブラザーズ破たん

    オバマ アメリカ回復再投資法(ARRP)7870億ドル→建設は小さい部分。大部分は失業手当

    雇用から財政赤字に注目を移す根拠はない。債務危機→根拠なし。

    日本国債の金利上昇に賭けた投資家→大損 日本=自国通貨で借りている。
    他国通貨(外貨建て)→パニック攻撃に弱い。

    支出削減→長期的な財政状況改善×→失業,経済の停滞→コストが高くなる。

    インフレ急上昇は,経済が停滞している限り起こらない。

    ヨーロッパのエリート→単一通貨からの利益を宣伝,欠点に対する警告を黙殺=労働移住性の低さ

    ミルトン・フリードマン「変動為替相場擁護論」 変動為替=サマータイム→たった一つの価格の変動→簡単

    ヨーロッパの大妄想 スペイン→費用の引き下げ→デフレしかない。→高失業率が続く。

    国債の買い替え→自国通貨を持っていれば,中央銀行が政府債を買う→デフォルトは起こらない。

    緊縮論者→インフレの恐怖。→安心感を求めているだけ。→経済が強くなるまで発効するべきではない。
    S&Pの格付け「市場の宣告が下った」→市場の実際の反応はなし。→アメリカの借入費用はかえって下がった。

    2010年選挙 イギリス・キャメロン首相→緊縮,安心感についての懸念が根拠。→不景気

    雇用創出より財政赤字削減=緊縮論者→貸し手に有利→苦しみを永続させることにこだわる。

    2000年バーナンキ教授→日銀批判「自縄自縛の麻痺状態」→自分がFRBでは同じ。

    ポール・クルーグマンと不況の経済学
    1970年代「収穫逓増下の貿易理論」→何かの偶然で秋葉原=電気屋→客を集める→電気屋の集積→電気街へ
    流動性の罠→一時的な金融緩和は効かない→インフレターゲット論
    ×財政出動は将来に禍根を残す→財政出動しなければ,将来へのツケを残す。
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    投稿日:2013.12.03

  • ht

    ht

    久しぶりに読んだ経済書。平易にくだけた形の文章も多く、読みやすい一冊だった。マクロ経済学の面白さを感じることができた。
    アメリカの経済政策が論点の中心であったが、ヨーロッパの不況のメカニズムに関する解説が分かりやすく印象に残った。

    次は、財政規律を厳格とせねばならないという立場の人の本も読んで、比較をしてみたいと思う。
    続きを読む

    投稿日:2013.10.14

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