【感想】疲れすぎて眠れぬ夜のために

内田樹 / 角川文庫
(185件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
44
65
45
7
3
  • 面白いのだが、寝る前に読む系ではないと思う(笑)

    ヒルティの『眠られぬ夜のために』をもじったタイトルから、かの書のような厳粛で敬虔な人生論をイメージするかもしれない。が、違う。

    例えば、「交換は愉しい」という章。
    ドストエフスキーの『死の家の記録』に出てくる究極の拷問について紹介されている。
    それは、半日かけて穴を掘って、半日かけてまた埋めていくという「無意味な労働」である。
    しかし、同じような労働であっても、そこに他者との「やりとり」があれば人間は生きていける、と著者は言う。
    その通りだろう。人間が仕事に求めているのは、突き詰めて言えば「コミュニケーション」です。ただ、それだけです。

    なるほど、そうだろう。でも、これだけじゃ、ちょっと普通の社会学の話かな?
    と思っていたら、「イライザ」の話が出てきた。
    アメリカの人工知能プログラムで、「私、今日疲れているんです」と打つと「あなたは今日お疲れなんですね」と答えてくれる。
    これを神経症の治療に使ったら効果があったとか。
    で、さらに著者は「恋人同士の会話というのは「イライザ」と神経症患者の対話とあまり変わりません」と言う。
    笑った、が、確かにそうかもしれない(笑)

    とまあ、社会学やら言語学やら心理学やら、いろんな引き出しからものがぽんぽん出てくる感じが楽しい。
    一つ一つがそれほど深いわけではないのだけれど、だからこそ気軽に読めるし、気になったことを調べてみたくなる。

    私の場合、「イライザ」がiPhoneに搭載されているSiriのお仲間であることを思い出し、
    Siriを起動し、「イライザって誰?」と聞いてみた。
    Siriさんは「Elizaは私の親しい友人です。優秀な精神科医でしたが、今はもう引退しています」と答えてくれた。
    確かに、癒やされるかもしれない(笑)

    ということは、逆方向の『死の家の記録』、読み直してみようかな・・・?

    てな感じで、眠れなくなる本である(笑)
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    投稿日:2014.10.05

  • 俺って、自分のやり方を通す人じゃないですかぁ~ <-×(知るか!)

     クラス,部活,会社,部課等々組織をまとめようとする人は、《成果を継続的安定的に出そうとする為には「型」とか「”らしさ”の尊重」などは必須》と感じているのではないでしょうか?。自由とか個性って何だろう?・・・。 私などが今いる組織(会社ですけどね・・・)でこのような事を説こうとすると、なにかと攻撃的になってしまいます(反省)。内田様の書き様は、とても優しく問題点を示してくれるので、(狭い範囲の社会として?)自分の所属する組織の在り様と自分自身の立ち位置を考えるよいきっかけになるのでは。

     *↑では自分の組織といった書き方をしましたが、当書は「ビジネス組織論書」ではないのでご注意を。考え方の問題なので、他の意見も方の話も聴いてみることもおススメします。色々読んで、聴いて、考えてみたいものです。
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    投稿日:2015.08.17

  • 寝る前に読むには面白すぎます

    内田樹の本はこれで3冊目です。いつもの通り面白く、一気に読めました。サザンのことを書いているレビュアーもいらっしゃいますが、私としては3箇所ほどある村上春樹論もなるほど、と思いました。
    それにしても、いつも思うことですが、覚えておきたい言葉がたくさんありました。中でも、
    「愛想がいいというのは、すごく良質な文化です」
    「「レイバー」はそれ(ビジネス)とは違います」
    「「個性的である」というのは、ある意味で、とてもきついことです」
    「武士が歩いているとき、その意識は「背中」にあった」
    「マジョリティとともにあることは決して安全を意味しない」
    などなど(まだまだありますが、きりがないのてやめておきます)、気になる言葉があちこちにありました。
    あとがきにあるように、この本は話した事をもとにテープ起こしして、それを加筆修正することで出版されるという経緯を辿っていて、そういうこともあってのこのタイトルなのでしょうが、寝る前に読むには十分に深くて濃すぎる内容です。私は通勤電車の中で読みました。
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    投稿日:2014.10.22

  • 大変読みやすい

    楽しい本でした。中でもサザンオールスターズを取り上げて、同じもので、チョッっとだけ違うものを作り続けることがユーザへの(或いは作品への)愛だ!という視点には深く頷いてしまいました。なんというか、私も好きな漫画家さんやアーティストさんに求めるものはその方特有の○○節!でもまあ、その「ちょっとだけ」違うさじ加減がプロフェッシヨナルなんでしょうね。内田さんおもしろいです。
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    投稿日:2014.08.27

  • あと25年早く

    前後の脈絡なく、著者の思うところが思うままに書かれている感はありました。それゆえの書名なのかもしれませんね。
    自分の中の凝り固まっていた考えに風穴を開けられた点が多くありました。
    一方で、今までこう思っていたけど、それでいいんだよねと感じたこともありました。
    著者にとっての本書における大元の論点は、いかに幸福になるか。

    あと25年早く、20代でこの本を読んでいたら私の人生はもっと豊かになっていたかも。
    あるいは、自分がおっさんになったから、本書の言わんとすることを理解できたのか?
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    投稿日:2015.10.31

  • なんとなく感じていることを、言語化してくれて、納得出来るところが多い本でした。

    はじめて内田さんの本を読みましたが、楽しく一気に読めました。

    自分の可能性を最大化するためには、自分の可能性には限界があることを知っておく
    「言論の自由」は受け手の存在も含めて考えるべきもの、
    利己的とは。

    など、引きこまれて読んでしまいました。
    自分の子育てを反省するような言葉もあり、今までなんとなく感じていたことや、自分では言語化できていなかったことが、言語化されていて、思考が深まる本だと思います。

    ただ、文化やらしさに言及している箇所に関しては、「そうなのかな~」と思うところもあり、
    突っ込みたくなるところはあるので、定量的な裏付けがないと気持ちわるい、といった方には合わないと思います。

    個人的には、結構楽しく読める本でした。
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    投稿日:2015.07.09

ブクログレビュー

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  • Kei

    Kei

    タイトルだけで購入してしまい、想像していた内容とは異なった。

    少し強引な部分もあり、正直好みではない。
    ただ、礼節は、今の時代消えつつあり、家庭不和の原因にもなっているように思う。

    そもそも、バックグラウンドが異なるのだから、何でも「欧米化」するのが正解ではない。

    外から見た日本、外から見た自分も時々は意識しよう。
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    投稿日:2024.01.21

  • 枝乃

    枝乃

    このレビューはネタバレを含みます

    2003年に刊行された単行本の文庫版。途中、論拠に引っかかりを覚えて要点をうまく拾えなかったが、メッセージは“自分で立てた原理原則に縛られず、その場の気分に乗って気楽に生きよう”ということらしい。あとがきを読み、信用が損なわれないよう注意しつつ、自分が立てた原理原則(自分が口にした言葉)は、自分で訂正可能なことを意識しておきたいと感じた。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.04.27

  • sagami246

    sagami246

    本書の文庫版の初版発行は2007年であるが、単行本としての発行は2003年なので、おおよそ20年前のことだ。内田樹のデビュー作「ためらいの倫理学」は2001年の発行なので、本書は、内田樹の初期の作品である。
    あとがきに内田樹は、「自分が立てた原理原則から抜け出すのは、他人がおしつける原理原則から抜け出すよりもずっと難しい。人間というのは自分がいったん口にした言葉を死守しようとする本能的な傾向があるからである。だから、前言撤回を恐れてはならない」と書いている。
    要するに、「私の言うことは経時的に変化しますよ」ということを言っているのである。私はデビュー以来の内田樹のファンであるが、そんなに言うことがくるくると変わっているとは思えない。注意深く読めば、おそらく主張が変わっていたりもすることがあるのであろうが、それは読んでいてほとんど気にならない。ただ、内田樹のように「私の言うことは変わるかもしれませんよ」というのはフェアで好ましい言説だとも思う。
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    投稿日:2022.09.28

  • kiki

    kiki

    内田先生の言葉はじわじわとと心に染み渡って何度も読みたくなります。
    孤独に耐えられる人間しか温かい家庭をこうちくできない、か。考えさせられます…。

    投稿日:2022.02.05

  • 勇気の花

    勇気の花

    Kindle Unlimitedで見つけて、そういえばしばらく、といっても半年も経ってないと思うけど、この人の本を読んでいないなと思ってダウンロードした本。
    読み終えて、やっぱりこの人の本は期待を裏切らない。というか、最初は別に期待はしていないのだけれど、なんというかな、自分が普段そうは思わないなとかそんなこと考えたことないなというような話がたくさん出てくるので、次のページが楽しみで。

    読み終わりたくないとまでは思わなかったけど、早く次のページが読みたいと思った本は結構久しぶりだったな。
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    投稿日:2021.05.21

  • エス川

    エス川

    修善寺の本屋で購入。「まぁまぁ、一度落ち着いて考えてみよう」全体的にそういったトーンの内容。概ね内容には同意である、人間は一人である事を知ってる人が他人を大切にできる、自分が生きている文脈(≒時代、家族、出身、学歴、職業…etc)を客観的に正しく捉えて相応しい場所に自分を位置づける事がディセントに生きる、という事なのだ。多分それは他人が迎合する事ではなくて、リスペクトする、自分を防御する為だ。他人との関係を理解する事なく「自分らしさ」を主張するのは利己的でさえない只の幼さでしかない、結局のところそれも自分は孤独であり誰も理解してくれない、という事実に気づかない未発達な状態だ。変化し続ける自らは何者なのか前未来的な思考で問い続ける、そして自分が生きる文脈に相応しい振る舞いをする、それが大人ってやつだ。続きを読む

    投稿日:2021.02.13

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