【感想】怪のはなし

加門七海 / 集英社文庫
(14件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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6
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ブクログレビュー

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  • さとり

    さとり

    作家の色々強めな性格が感じ取れるけど、そこまで鼻につかず、不思議とサクサク読めちゃう。オカルト体験エッセイストとしての才能がすごい。小説より実体験のほうが面白くて書き方も上手。昔ホラー漫画雑誌でこの方の体験談をよく読んだので、作家がキャラとして脳裏に浮かぶ。続きを読む

    投稿日:2022.10.14

  • もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    幼い頃からこの世にいる、人ならざるものを見続けていた著者。彼女が体験した不思議な出来事は数知れず。その出来事達は時に恐ろしく、悲しく、優しい。様々な側面を持つ。彼らは、何を思ってそこにいるのだろうか?

    ***

    前回読んだホラー小説が面白かったのて、引き続き加門七海さんを。ホラー小説が胃に来るぐらい怖かったので実話怪談集に戻ってみたり。こちらの怪談集もちょっとエッセイよりな雰囲気。全部で20話入っており、不思議だったり、怖かったり、悲しかったりと様々な様相だった。
    話によっては前回読んだ「船玉さま」の様に読みづらいと感じるものもあったが全体的にこちらの方が面白かったかも。今回のは日本文化に関連する蘊蓄が少なかったのに何で読みにくく感じるのかなと思い返してみたが、その話のほとんどが作者が怪異に立ち向かっている話だった。実話怪談集で恐れ戦かず、向かっていくというのは、今までなかったので違和感を覚えて入り込めなかったのかもしれない。
    ともあれ、前回の船玉さまより個人的には段違いで怖かったので、こちらの一冊は大変楽しめた一冊だった。
    では、お気に入りの話をいくつか。

    「霧の話」

    友人と高原を訪れた著者。その高原にある宿泊施設を起点に日帰りで行ける山に繰り返し上っていた。そんな中、とある湿原にたどり着く。湿地の植物や水面が夏の日差しを受けすがすがしい雰囲気である。湿地のほとりに名も知らぬ小さな社を見つける。挨拶をし、食事をしていると不意にどこからともなく霧が低く立ち込めてくる。そして、獣の鳴き声のような雷がとどろいた。その光景に神秘性を感じた著者であったが、山に詳しい友人は急に変わった天気に危機感を覚え引き返すことに。後ろ髪引かれる思いであったが、悪天候になって遭難するわけにもいかず、下山することに。しかし、振り返ると立ち込めていた霧は消え失せ、燦々と降り注ぐ日差しがあるだけであった。
    宿に戻った後も、あの光景が頭から離れない著者は、その夜その湿原に関する不思議な夢を見たのだった。

    神秘性を見出せるが、その神秘の裏側に人が踏み込んではならない領域があると感じるお話。荘厳で畏怖の念を抱かせる、恐怖とは別の方向で鳥肌が立つ話だった。迎える結末は恐ろしいとわかっているのに、果たしてその結末を迎えたとして後悔するのか……。後悔できる思考が残るのかが気になる。
    人間をはるかに超越したものに誘われるとこんな感じになるのかも。著者は誘われたといっていたが、著者側も魅入られていた様子で、もし友人と一緒におらず、一人であの場にいたら結末は変わっていたかもしれない。そして、その結末を迎えた時、この話を読むことはかなわなかったことだろう。

    「嵐の夜の話」

    自宅で大型台風に見舞われた著者は、更に運悪く停電も起こってしまう。周りの家を見てみると、電気はついており、自分の家だけ停電してしまっているようだ。自分の不運を呪いながら、念のためブレーカーを見に行くと、電源はすべてオンになっている。電源を上げ下げしてオンオフを切り替えてみたが、進展はなく部屋の中は暗いままであった。すると、設置しているインターフォンから警報が鳴り響いた。突然の警報音を止めようと受話器を外したりして慌てる著者。音を止めるボタンを見つけ、音をやっと止めた際、手に持ったままの受話器を無意識のうちに耳に当ててしまう。インターフォン越しに外の風や雨の様子が聞こえてくる。来訪者もいないのに、受話器を耳に当てたことを不思議に思いながら、じわじわと外の様子が気になり始める。なぜ自分の家だけ停電しているのか、なぜインターフォンは警報音を発したのか。明らかに不審な状況であるのに、何も警戒せずドアを開けた。ドアの向こう側にあったのは、片足だけの乾いた足跡であった。

    恐怖の度合いが高いこちらの話。台風の夜、真っ暗な家で巻き起こされる怪奇現象の数々。事の始まりに違いない、玄関の向こう側にあった片足の、乾いた足跡。その時点でもう怖すぎる。いつからそこにいたんだ?という感じ。明確に著者を狙ってきている感じだが、何が目的なのだろう。
    著者をどうにかして騙して貶めてやろうという悪意が漂っている。著者との因果関係が明確でなく、更に目的もわからず、通り魔的な幽霊なのか気味が悪いの一言。助けを求めて電話した友人から折り返し電話がかかってきたことによって、救われた著者だが、あのまま何もせず家にこもっていたら、嵐の夜を超えられたかは怪しい。

    「友人の話」

    家族を亡くした友人のM子は、そのショックから塞ぎごみガチになっていた。もともと明るく活発で前向きな性格だったが、今は見る影もなく、何をするにも面倒くさいが口癖になるほどであった。
    心配になった著者は、毎日電話をかけて他愛のない話をして、彼女を気遣うことにした。同時期に、著者よりも長い付き合いの男友達もM子の体調を心配して同じように電話をかけていた。しかし、周囲の気持ちとは裏腹に、彼女の体調が回復することはなく、むしろ悪化の一途をたどっていく。
    これはいよいよ鬱ではないかと疑い始めた著者だったが、普通の鬱にしては様子が違うと感じていた。素人なので、何が違うのかは明確に説明できないが、彼女の気持ちが上向きになって何かをしようと思った途端邪魔が入るのだ。これは何かあると睨んだ著者はいろいろな不気味な体験を乗り越え、原因を考えた末、一つの結論にたどり着いた。

    こちらも恐怖度の高い話だった。
    怖い話を読んでいると、たびたび怖いのは生きている人間である、というのはよく聞く話しだ。こちらの話も、人間がらみの怖い話。直接人間が害を及ぼすわけでは無いが、人間の念が複雑に絡み合ってM子という人物をからめとっている状態だ。
    悪意でない分質が悪い。少なくとも、M子をこの状態に落とし込んだ人物は多分。その裏にいる人間たちに悪意があるかないかは分からないが……。
    なんにせよ、心のよりどころがあるのはいいことだが、それに囚われるのは恐ろしい。それが本人の世界だけで完結しているなら、まだ大丈夫だがそれが外部に向かった時、害になるというのはあまりに救いがないではないか。

    今回紹介しなかったが、他にも「神像の話」、「ひとり旅の話」、「雑踏の話」なども面白かった。
    勝気に怪異に立ち向かっていく著者も、目を見張るものがあるが、恐怖を共感したい人間なので、立ち向かっていく話よりも、怖い話がさらに読みたい。
    同著者の本で、「怪談徒然草」というのが怖くて面白いらしい。この本は未所持なのでさっそくネットでポチってみた。今から届くのが楽しみである!
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    投稿日:2022.04.24

  • 真夏日和

    真夏日和

    そろそろ怖いはなし欠乏症。
    手に取ったのは美しい表紙のこの本でした。
    当たりでした!
    めちゃくちゃ面白い!!
    作りものの怪談とは全然違う。
    実話怪談、しかも自分経験!!
    面白くて怖かったのは『暦の話』『嵐の夜の話』『道の話』『神楽の話』『友人の話』。
    『道の話』は小野不由美『残穢』との共通点があるなーと思った。どうしてもヤバい場所ってあるから。そういうのをたぶん関西人はなんとなく分かってるから余計面白かったんだと思う。
    『暦の話』節分は真剣にやります。

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    投稿日:2020.02.25

  • 綱吉

    綱吉

    私は怪談が好きなわけではないのだなあ、と、京極夏彦周りを読み始めた時に感じたのだった。
    それでも気に入った、好きになった著者は何人かいて、加門七海もその一人。
    実話怪談しか読んだことはないけれど、怖さの加減が独特でいいんだよなあ。
    怖い、よりは少し不思議?
    猫の霊とか「百匹の羊」とか、「何が見えたんだぁぁぁ!」とか、描き方にユーモアを感じる。
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    投稿日:2019.08.06

  • ちょ

    ちょ

     怖いと言うよりは、ちょっと変わったことと出会ったときのはなしに思えた。
     侍の話と、友人の話と、猫の話が好き。
     あと、お祭り怖い。

    投稿日:2016.09.01

  • meowmeow

    meowmeow

    この方の話は小説より体験談の方が面白い。節分の豆まきの話を読んで、うちも忘れずに行いました。弘法大師縁の地の泉の話もよかったなあ。

    投稿日:2016.02.24

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