【感想】ヘラクレスの冒険

アガサ・クリスティー, 田中一江 / クリスティー文庫
(37件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
6
15
9
1
2

ブクログレビュー

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  • aco

    aco

    ヘラクレスの12の難業を基に依頼を受けるポアロの短編集。色んな種類の事件があって楽しめました。ギリシャ神話のヘラクレスの話も知っていたら、より楽しめたんだろうなぁ。

    投稿日:2024.03.24

  • タカツテム

    タカツテム

    短編集だけど、そこに「ヘラクレスの難業」というテーマが加わる事でそれぞれ別の事件がひと繋がりであるように感じられるね
    また、あくまでも難業であり難事件に限っていない点が面白さを生み出している。だから本来ならポアロが依頼を受けるような案件でなくても難業との関連を見出だせれば受け付けてしまう。それが本作に収録された短編をバラエティ豊かにさせているね


    収録されている短編は先述したようにバラエティ豊かなものばかり。だからむしろ真っ当な殺人事件の方が少ないくらい
    その意味では事件への対処法すら曖昧な形で始まる『レルネーのヒドラ』は導入も終着も面白いものだったかな
    いつまでも止まない噂。その根本に居た怪物を探し出したポアロの手腕は見事の一言

    『アウゲイアス王の大牛舎』では珍しい行動を採っているね
    大物政治家に降り掛かった一大スキャンダル。普段ならスキャンダルの原因となった事件等の調査に乗り出しても可怪しくない
    でもポアロはその政治家の人柄を信頼できるとむしろ協力しているね。まあ、一応は世間にスキャンダルの内容そのものは報道されているから完全に隠蔽しているわけじゃないんだけどさ

    意外性が有ったのは『ヒッポリュテの帯』かな
    よくよく考えたらミステリでは珍しくもないトリックなのだけど、2つの事件が重なり描かれた事で騙されてしまったな
    ミステリは「騙された!」と感じた瞬間がとても気持ち良いだけにこの短編は読後感がとても良かったよ

    でも一方で『ヘスペリスたちのリンゴ』のオチも中々に好みだったりする
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    投稿日:2023.10.20

  • オズ

    オズ

    テーマを付けた短編集として「火曜クラブ」と並び秀逸。
     ポアロのクリスチャンネームがヘラクレス(フランス読みでエルキュール)は有名。今回はポアロとバートン博士が名前について語らっている。(いつの時代もキラキラネーム問題はあるんだなぁ(笑))
    ポアロは博士の指摘を受け、自身がヘラクレスらしからぬ事、いや、現代のヘラクレスとして引退迄に十二の事件を解決する事、それが古代ヘラクレスの十二の難業を現代に再現する事だ。と考え、依頼を進めていく。
    十二編をコンセプトとしてまとめ、更にはポアロの名前を冠した作品集だ。
    第一の事件 ネメアのライオン
    ミスレモンが整理した手紙について、ポアロが面白い依頼はなかったかと尋ねると、ペギニーズ犬の捜査依頼があると言う。前日に現代のヘラクレスに相応しい事件を解決すると決めていたポアロは怒りに狂いそうになるが、基本的にミス・レモンは勘が鋭い為、渋々依頼の手紙を確認する事に。何か感じるものもあり、依頼を受ける事にしたポアロ。こうして現代版のヘラクレス12の難業がスタートする。
     単なる犬探しだけではなく、その裏に潜む根本的な問題の解決、そして依頼人に隠された秘密など。解決方法に賛否はあるだろうが、最初の謎として相応しい事件だった。ポアロが相手にする「ライオン」は可愛らしい気もするが(笑)
    第二の事件 レルネーのヒドラ
     噂話は決して消える事はなく、まるでヒドラの頭の様に切り落としても生えてくる。妻の死後、噂話ぬ悩まされる医師がどうにか助けて欲しいとポアロの元を訪ねてくる。ポアロは噂の真相を探る為、腹心のジョージを従えて噂話がはびこる町に赴く。途方もない噂を聴きながら、噂の出所を見つけ出す。あわせて、医師の妻の死が自然死ではなく他殺である事を証拠づける為、遺体の掘り起こし、死亡解剖が実施される。
     真相に辿り着き、真犯人を見つけ出したポアロ。ヒドラのしぶとさは確かなものだが、見事ポアロが退治した様だ。
    第三の事件 アルカディアの鹿
     冬の夜にポアロの高級車が故障してしまい、仕方なく歩いて距離のあるホテルを訪れ、宿泊する事に。そこに車の修理工の美男子が現れて修理について説明し、合わせて有名な探偵であるポアロに相談したい事があると切り出す。とある屋敷のボイラー修理を依頼され訪れると、とあるダンサーの美しいメイドがおり、彼女と仲良くなり、再会を約束する。しかし約束の場所に彼女は現れず、きっと何かが起きたのではないかと心配になる。ポアロはこの依頼が三番目の難業に相応しいと考え、彼女の捜索を開始する。ミステリーというよりもロマンスに近い素敵な作品。
    第四の事件 エルマントスのイノシシ
    第三の事件でスイスに来ていたポアロ。ついでに見た事の無い土地を見て回ろうと観光していると、ケーブルカーの車掌が切符と一緒に一枚の紙切れを渡す。それによればとある凶悪犯がこの地を訪れる予定で、既にホテルに警察が侵入しているとの事。ポアロは第四の事件として親和性を感じ、「イノシシ」を捉える手助けをする事に。最後殺人事件や未遂事件が起きるが、他の宿泊客とも協力し、被害を最小限に食い止める。三日後、刑事達が到着し、一件落着と思われる所、ポアロが衝撃の事実を告げ、どんでん返しが起きる
    第五の事件 アウゲイアス王の大牛舎
     ポアロを敵に回すとはどういう事か。万が一ポアロが策略を持って何かを企めばきっと上手くいくのだろう。今回は政治家の不正を元にいかがわしい新聞社がゆすりをしようとするが、相対するのは政治家に雇われたポアロ。政治家側から金銭での解決を提案されたがえ新聞記者は拒否、ポアロ達との交渉を決裂させる。新聞社の記者は政治家の妻の不貞記事や浮気記事などを掲載。世間では記事に対する政治家夫妻の悪い噂が広まり、いよいよ名誉毀損で訴える事に。
     新聞記者は名誉毀損について問題視はしていない。一方政治家側は世間の信頼に足る人物の証言、並びに新聞記者が雇って政治家の妻のふりをさせて写真などを準備した女性を召喚、新聞記者が彼女に政治家妻の真似をさせ、様々なスキャンダルを撮影する手伝いをさせられたと証言し、形成逆転、新聞社は巨額の費用を請求され、後々倒産する。政治家ぎほっとする中、実はポアロと政治家妻の仕組んだ罠だったというオチ。ポアロは敵に回すと恐ろしい人物だ!!
    第六の事件 スチュムパロスの鳥
     構成として猛禽類を思わせる様な恐ろしい見た目の双子の老嬢を登場させ、あたかも彼女達が問題の根幹、この話の敵である様に見せかけてストーリーが展開される。ポアロ登場迄に時間ぎある為、どの様に解決されるのか、どういう事件なのかが読者に判明するのが終盤。それまではドキドキしながら読む事ができる。
     世間や上司の評判も良い政治家。独身貴族で自由気ままな人生を送る主人公と、彼と懇意にする母娘。娘は既婚であるが、夫は難しい人であり、娘が男性と話す抱けで嫉妬に狂う様な人物。主人公は娘に想いがあり、彼女の夫を腹立たしく思う。一方、ホテルにポーランドから恐ろしい容姿の双子の老嬢があらわれ、主人公は不吉なものを感じる。そんなおり、娘が悲しみにくれているのを介抱した事が娘の夫につたわり、母娘が宿泊しているホテルに乗り込んでくる。そこから怒涛の展開が起きる。どんでん返しが楽しめる作品。
    第七の事件 クレタ島の雄牛
     女性からの依頼。婚約を破棄されたというが、相手の男性の様子がおかしいという。父親が息子を海軍から呼び戻してしまう。父親は海軍で働く息子を賞賛していたはずなのに。婚約者の家に赴き事情を探るポアロ。動物の遺体が捨てられていたり、洗面所が血溜まりになっていたり。しかし、男性は覚えていない。おそらく一族の精神異常の血が遺伝してしまったと訝しみ、彼女と婚約を破棄。合わせて男の母親は男が幼い頃にボート事故で亡くなっていた事をしる。
     ロマンスからのスタートで、全てが覆される驚きの短編。但し、父親の友人の行動に疑問あり。
    第八の事件 ディオメーデスの馬
    ポアロの友人の医師からの依頼。とあるパーティに呼ばれた医師。コカインを使用した形跡があり、二人の婦人が治療を受ける。合わせて、錯乱した婦人の一人が銃を数発乱射し、偶々付近にいたホームレスにあたり、医師は治療の為呼ばれていた。麻薬の出所を探る為、また、若い婦人を守る為にポアロが捜査をスタートする。途中に出てくるポアロの知人女性が強烈。ポアロもタジタジなのが面白い(笑)。結末はしっかりと意外なものに着地している。
    第九の事件 ヒッポリュての帯
     絵画盗難事件と学生失踪事件。ポアロは特に乗り気では無かった絵画盗難事件を調査する過程でとある女学生の失踪事件が発生、警察から相談を受けて興味を持ち調査する事に。調査の過程で、ポアロが追っていた絵画盗難事件と女学生失踪事件の関わりが明るみになっていく。女学生失踪事件は冒頭から全くの謎なので解決されていく過程が楽しめる作品。最後のオチはとてもチャーミング(笑)。
    第十の事件 ゲリュオンの牛たち
     第一の事件に登場したミス・カーナビィ再訪。犯罪者としてポアロも称賛する人物だが、とある信仰宗教と友人の婦人の件でポアロに相談に訪れる。ミス・カーナビィが信仰宗教の本部に潜入しながらポアロの調査をサポートする。彼女はポアロのスパイとして行動しながら、読者には信仰宗教の怪しさや危険な描写もされており、更には彼女が途中で心変わりがある部分など、とてもスリリングで面白い作品だ。相変わらずペギニーズは利口な様だ(笑)
    第十一の事件 へスペリスたちのりんご
     金持ちが購入した絵画を巡る事件。絵画が金持ちの元に届く前に盗難事件がおき、絵画がなくなってしまう。盗難した犯人も亡くなってしまい、二度と絵画を見つける事は出来ないと思われたが。警察でもどうする事も出来ない盗難事件とポアロの名推理、そしていつの時代も金持ちというのは悲しい人だという教訓に満ちた作品。
    第十二の事件 ケルベロスの捕獲
     ヴェラ・ロサコフ伯爵夫人再登場。ポアロがロサコフ伯爵夫人に振り回される(騙される訳ではないが、やはりポアロも男性だった(笑))大掛かりな麻薬事件がバックボーンになりながら、ポアロとロサコフ伯爵夫人のやり取りが面白い作品。最後、冷徹なミスレモンがポアロの様子を見て口走る描写があまりにも滑稽で、ヘラクレスの冒険は難しい事件と共に堅苦しい十二編にさせず、作品通してのユーモアをつけた様な形だ。動物を使ったトリックはホームズてもよくあるが今作の方が断然分かりやすい。
     以上、過去と現代のヘラクレスの冒険が無事完了する。この後、ポアロはかぼちゃ栽培に勤しむ訳だが、どうなるかは「アクロイド殺し」を是非読んで欲しい。
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    投稿日:2023.10.16

  • may

    may

    このレビューはネタバレを含みます

    冒頭のポワロによる自分の名前の由来であるヘラクレスに対する突っ込みが面白かった。印象に残ったのはアルカディアの鹿 (わりと爽やか)、ステュムパロスの鳥(推理できた)、クレタ島の雄牛(いかにもな話の流れからの急展開に意表を突かれた)、ヒッポリュテの帯 (元がわりと艶っぽい話なのでどうポワロと取り合わせるのかと思ったら上手くまとまっていた)。いい話とは思わなかったけど展開に驚いたのはアウゲイアス王の大牛舎 (ポワロ側のやり方が汚くない?)。

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    投稿日:2023.10.05

  • エルマー

    エルマー

    なかなかおもしろかったですよ。
    短編なので、トリックを楽しむというよりは引退前のポアロの生活をちょっとのぞくというスタンスでページをめくってください。

    投稿日:2023.07.30

  • hazel8483

    hazel8483

    ものすごく昔に読んだようだが
    まったく記憶にない…。
    なので、新鮮な気持ちで楽しみました。

    なんか無理くり「ヘラクレスの難業」に
    絡めてるっぽい話もありましたが。
    想定外の車のトラブルで
    ホテルに足止めをくらってる間に
    若者の相談に乗ってあげる
    『アルカディアの鹿』とか
    現代にも通用しそうな情報戦の
    『アウゲイアス王の大牛舎』とかが
    おもしろかったです。
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    投稿日:2023.02.13

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