【感想】堕落論

坂口安吾 / 角川文庫
(35件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • teftef66

    teftef66

    このレビューはネタバレを含みます

    日本文化私観、堕落論、続堕落論のみを再読

    日本人としての強みは旧来の道徳観や美徳、情緒。その回帰こそが、堕ちてく社会、民主主義、資本主義の中で重要なことになりそうな予感はしていた。

    一方で、旧来の道徳観などが崩れ去り、新たな価値観が日本に導入されようとしていた全く逆のタイミングでかかれた堕落論。ではその内容も全く正反対のものなのか。決してそうでなかった。

    日本文化私観では、古くからある伝統的なものに対して、厳しい態度を取りながらも、真に必要なものであれば生き残るべしという姿勢を見ることができる。

    また堕落論、続堕落論では、旧来の道徳、思想、価値などすべてを剥ぎ取り、徹底的に落ちることで、再び自分自身をとなり、自分自身を救うことができると述べている。

    人は無限に堕ち切れるほど堅牢な精神に恵まれていない。何者かカラクリによってたよって落下を食い止めずにはいられなくなるであろう。それのカラクリをつくり、そのカラクリをくずし、そして人間は進む。堕落は制度の母胎であり、その切ない人間の実相を我々はまず最も厳しく見つめることが必要なだけだ

    という言葉で終わる。

    旧来の価値観をくずし、新しい価値観を実装し、またその価値観を崩し、ただしいものを求め続ける。これが人間であり、歴史の中で繰り返されてきたことなのかもしれない。だから私たちも堕ち続け、つくり続け、崩し続ける。

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    投稿日:2019.10.14

  • シャッター

    シャッター

    坂口安吾の社会評論と作家評論を集めたもの。
    日本文化私観や続堕落論における日本人論・人間論はややシニカルだが、キレがある。20世紀後半に人間科学が人間の思考の癖や非合理を解明する以前は、「人間がどういったものか」という問いに最も精緻な回答を持っていたのは、安吾のような一部の文学者だったのだろうと思わせる。続きを読む

    投稿日:2018.11.29

  • 杏の庭

    杏の庭

    このレビューはネタバレを含みます

    はるか昔に友人に勧められた本。ようやく読めた……!
    「田舎暮らしって憧れのように語られるけど、ふたをあけたら全然そんなことないからね!」みたいな文章に凄く共感……。

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    投稿日:2015.09.05

  • goodbye0nin

    goodbye0nin

    坂口安吾『堕落論』角川文庫

    表題作品の「堕落論」の他、日本文化、青春、文学、夫婦、恋愛、小林秀雄、太宰治等に関するエッセイが収められている。

    ー生きよ堕ちよ、その正当な手順のほかに、真に人間を救い得る便利な近道がありうるだろうかー「堕落論」より

    戦後70年ということで、当時の若者たちの絶大な支持を得たらしい本著を読みました。

    おもしろい。
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    投稿日:2015.08.01

  • こぐのすけ

    こぐのすけ

    このレビューはネタバレを含みます

     『めんどくせー』って思えよ!

     堕落論ってつまり、めんどくさがることから進歩が生まれるんだよってことだよね。日本人よ堕落せよ。
     エッセイ集ってことを知らずに、とりあえず坂口っつったら不連続と堕落論だろうと思って読んでみたんだけど、このひとの考え方、とても好み。いろんなもんをえらい勢いでばっさり切ってて面白かった。だからってこの人の小説が面白いのかって言われたら面白くなさそうなんだけど、また機会を見つけて読みたいところ。
     とりあえず坂口がばっさり切り捨てていた夏目漱石と志賀直哉あたりを読んでみたい。
     抜粋。ラストに入ってた、唯一エッセイじゃないらしい「不良少年とキリスト」より。


     太宰は悲し。ローレライに、してやられました。


     それなりに太宰と親しかったっぽい坂口によれば、太宰作では「斜陽」「魚腹記」「男女同権」「親友交歓」あたりが立派なものらしい。「人間失格」「グッドバイ」「十三」あたりは『いやらしい、ゲッ』だってさ。

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    投稿日:2014.06.15

  • 風水 空

    風水 空

     第二次大戦直後に若者達の強い支持を得た「堕落論」ほか数編を収めたエッセイ集。「堕落論」で展開される考え方もよかったが、むしろ他のエッセイで書かれた文章の中に興味深いものが多い。文化、文学、恋愛、内省、実存、政治、宗教など、ほとんどの分野における著者の考え方を網羅しているといえるのではないか。それぞれの場面で本業ともいえる文学論を絡めているため、一本筋の通った思想を読み取ることができる。なかには、現代においては一般的な考え方が、当時では異説として扱われていた様子をみてとることができ、そこに時の流れが感じられるような点もまたおもしろい。いずれにしても、作家など自分の思想を表現することを生業とする人達は、いつの時代も孤独を抱えて生きていくものなのだな、ということを強く感じられた。続きを読む

    投稿日:2014.01.25

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