【感想】邪悪の家

アガサ・クリスティー, 真崎義博 / クリスティー文庫
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
6
18
5
1
0

ブクログレビュー

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  • オズ

    オズ

     邪悪の家は僕が初めて読んだクリスティ作品で思い出のある小説だ(読んだのはエンドハウスの怪事件、他社の翻訳だが)。物語の構成が単純でわかりやすく、フーダニットの面白さ、どんでん返しの魅力が詰まった作品であり、僕は最初にこの作品を読んだからこそクリスティの虜になり心酔していった経緯になる。また、エルキュール・ポアロを知るには最適な作品だと思うし、この作品はそれ程に彼の人間性が詰まった物語だと思う。

     ポアロは探偵業を引退し、保養地のホテルにヘイスティングスと滞在している。彼の元には引退後も各国の主要な人物から探偵の依頼が届くがどこ吹く風、全く取り合わない。そんな中、ニックという若い女性と知り合い、彼女が三度も命の危険があった事をポアロに話す。そしてその話の最中にも、彼女は命を狙われる。ニックは気づかないが、ポアロは彼女の危険に気づき、彼女の住むエンドハウスを訪れる。

     上記したようにポアロらしさがあふれた作品で、各国主要人物の依頼は受けないが一人の女性の危機には労を惜しまない(今回はそれが裏目に出る訳だが)。ヘイスティングスは相変わらずでストーリーを通じて読者の目線を誘導する役割を与えられている。
     ポアロが推理の際にAからJまでで可能性を整理し、我々も犯人が誰であるかの推理をこの中から考えられる様に進むが、中々道筋が掴めない。一つの殺人をきっかけにどうしても噛み合わない問題点や、物語が進むと有名な冒険家の死や毒入りチョコレート、消えた遺言書、凶器のピストル、謎の人物、隠し部屋等様々な疑問が噴出していく。(クリスティの上手なところでこれだけの要素がありながら物語はシンプルに整理されている)
     最後は堂々の大団円になり全ての要素が集約される。僕は初見の際は犯人の意外性に驚き、ミステリーとはこうだと基準になった作品であり、今回再読に至っては犯人を知っているからこそ、この物語の根幹の面白さを味わえたし、ポアロの道化役も楽しめる事ができた。
     ポアロは終盤に「なんて事だ!!」と騒ぎたてて事件を解決する訳だが、ある意味でポアロの気づきが大きい作品程、後半から終盤にかけてのどんでん返しが起きやすくなったいる。従って彼が騒ぎ出す作品は何かしらの裏切りがあると期待してしまう。今作も例に漏れず驚きがあるが、正しくクリスティがポアロさえ騙そうとしているかの様な作品だった。読みやすくわかりやすい作品だが余りにも悪い奴が多いので(笑)もう少し要素が少ない方がミステリとしてはスッキリする様に思うが、違和感がある訳ではない。

     非常に懐かしく楽しい時間だった。そろそろポアロシリーズを読み終えてしまいそうなので味わいながら楽しんでいこう。
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    投稿日:2024.02.14

  • a-symmetry

    a-symmetry

    結局今回も最後やられた…!
    証拠となる部分はこじつけを感じるかもしれない。その国の常識や知識があればすんなり納得する部分もあるかもしれない。

    でもなあ…気づけるようなヒントは散りばめられていたから文句言えないんだよなあー


    あと、表紙はこんなイラストver.でない(旧版?写真チックな方が好きなので不服)。
    あと、解説つまらなかったけど元ネタあったら楽しめる系?

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    投稿日:2023.06.14

  • アイム

    アイム

    真相、犯人の動悸、そしてタイトルの意味まで含めて全て最悪で、だから面白かった! 『邪悪』の意味を痛感し、それが逆に清々しいほどだった。ポアロは騙されなかったけれど私は綺麗に騙されたので、敬意も込めて気に入りの一冊に入れようと思う。続きを読む

    投稿日:2022.10.30

  • chiakihirano

    chiakihirano

    秋はミステリー!な気がするのでポアロシリーズ6番目。
    『邪悪の家』は前に旧訳版を読んでいますが、犯人覚えてないので問題なし。
    アガサ・クリスティーの小説にありがちですが、ラストになって犯人はAさん!と思ったら黒幕はBさん!じゃなくて実はCさんでした!みたいな怒涛の展開をするので、もう犯人誰でもいいやみたいな感じなんですよね。

    今回も犯人より、表面的には仲のいい女友達が内心、相手をよく思っていなかったり、恋人ができたことを妬んでいたりする感じがリアルに怖かったです。

    セント・ルーのマジェスティック・ホテルが実在するのかどうか知りませんが、海辺のリゾート地で休日を過ごしたり、ホテルにランチやお茶をしにくるという生活がよいです。

    https://chiakih.blogspot.com/2022/10/blog-post.html

    以下、引用。

    11
    私たちはマジェスティック・ホテルのテラスにいた。そこはセント・ルーでいちばん大きなホテルで、海が一望できる岬に建っている。眼下に広がるホテルの庭にはヤシの木が点々と植えられ、海はうっとりするような深いブルー、空は晴れ渡り、太陽はいかにも八月らしい一途ともいえる輝きを見せている(イギリスではめったにないことだが)。

    26
    「それが、私には判断がつかないんだ。最近、若いというだけで美人に見えてしまうんだよ。」

    36
    「ホテルに泊まる客というのはヒツジの群れみたいなものだからね。みんな海の見えるテラスに座りたがるものなんだ」

    41
    「イギリスでいちばん高い料金でいちばんまずい料理を出すマジェスティック・ホテルにお泊りなんですから」

    60
    「彼はあなたと結婚したがっている──ちがいますか?」
    「ときどきそういうことを口にします。夜中や、ポートワインを二杯飲んだりすると」

    100
    ポアロはロールパンとコーヒーだけという大陸風の朝食にこだわっていた。
    そんなわけで、ポアロはベッドでコーヒーとロールパン、私はベーコンとタマゴとマーマレードという伝統的なイギリス人の朝食で一日がはじまるのだ。

    154
    犯罪の動機としてはもうひとつ──嫉妬がある。私が情熱と嫉妬を区別するのにはわけがあるんだよ。嫉妬は、必ずしも性的な情動を伴うものではないからなんだ。妬み──所有への妬み──優越への妬み、だな。

    173
    ポアロは優しく彼に微笑みかけた。いつも目にしていることだが、ポアロは恋する者にはじつに優しい。

    192
    「世の中の美人が殺人犯になるということ自体、信じられないというのかい? これに関してはね、陪審員ともめることがよくあるんだ。」

    218
    「私はこうして生きているんだし。遺言書って、死んでからが大事なんじゃないんですか?」

    238
    「一八九三年に、ベルギーでとんでもない失敗をやらかしたんだ。
    例のチョコレートの箱の事件だよ」

    255
    「大金持ちというのはですね、ムッシュ・ポアロ、風変わりであっても許されるのです。むしろ、それを期待されていると言ってもいい」

    259
    「何年ぶりかな、ムッシュ・ポアロ! 田舎でカボチャでも作っていると思ったが」
    「ああ、私も作ろうとしたさ、ジャップ。だが、カボチャを作っていたって、殺人事件が追いかけてくるんだよ」

    277
    「まるで、エドガー・ウォレスの推理小説みたいじゃありませんか?」

    359
    「それに脳細胞の色が灰色だとわかった」
    「細胞に色は無いのでは?」
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    投稿日:2022.10.06

  • りょう

    りょう

    あっと驚くようなトリックはないが、それだけに読者も自分で犯人を推理しながら読む楽しさのある、推理小説の教科書のような作品。

    投稿日:2022.09.12

  • あくら

    あくら

    なるほどこうきましたか、面白い。
    狡猾な犯人によって探偵共々振り回されるけれど、これもミステリーの醍醐味だと思えば楽しい。
    複雑に見えた事件もポアロの手に掛かることで単純化され、最後には綺麗に落着してしまう。
    事件の真相を覆う複数の要素を一つ一つ剥がしていくような推理は、読んでいて本当に気持ちが良い。
    続きを読む

    投稿日:2022.08.27

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