【感想】世界で勝負する仕事術 最先端ITに挑むエンジニアの激走記

竹内健 / 幻冬舎新書
(108件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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  • 頑張れ日本人

    元東芝のフラッシュエンジニアが書いた本。仕事術というよりは筆者の経歴をなぞったような感じで、何とも微妙な内容ですが、こういった人が沢山日本から出てこないと駄目だよなぁ、と共感することもあり。
    「挑戦しないことが最大のリスク」とはよく言われるが、なかなか実践できないのも世の常か。続きを読む

    投稿日:2013.10.04

  • 半導体ビジネスの最前線で活躍する実体験に基づいた仕事術

    本書は、変化の激しい半導体ビジネス環境で、常に第一線で仕事をし続けている竹内健氏の実体験記である。

    私もそうだが、もしあなたが、守りを意識したミドルクラス以上のエンジニア、ビジネスマンならば、

    よし、私もできることから、前向きに仕事に取り組もう」

    という気持ちにさせてくれる本であるし、若きエンジニアならば、ロールモデルとして本書は参考になるだろう。

    というのも、本書は一般論を述べたビジネス書でなく、竹内健氏の実体験に基づいた言葉で書かれているので、説得力があるからだ。

    竹内氏は、東京大学大学院を卒業後、東芝でフラッシュメモリの開発、スタンフォード大学ビジネススクールでMBA取得、フラッシュメモリ事業のビジネス責任者、東大への移籍、次世代メモリの研究、MOT(技術経営)の取り組み、というように変化の激しい半導体ビジネスの第一線で活躍されている。

    そんな竹内氏が語る「走りながら考える」という仕事の姿勢は、私のような凡庸なサラリーマンにもとても参考になる考えだ。

    『フラッシュメモリ開発で、私には「走りながら考える」という生き方が身につきました。』

    『どんな仕事でも、クヨクヨ悩むより、まず走ってみることが大切だと思います。失敗したら、もう一度戻ってやり直せばいいのです。』

    『しかし、跳ばないで待っているより、跳んで失敗した方が断然学ぶものが多いのです。最後に勝ち残るのは、リスクを怖がらずに跳んで、たくさん失敗した人です。』

    『守りに入って生きていて、のけぞって後ろに倒れそうになると、人は案外冷たいものです。その一方、果敢に挑戦し、前のめりになって、つんのめりそうになると、人は手を差し伸べてくれる。』

    また、その華やかな経歴からも、竹内氏は優秀で、才能があったから成功した、という見方もできるだろう。

    しかし、そう考えるのは早計だ。

    竹内氏は、苦労や下積み、そして人一倍の努力もされているのだ。

    具体例としては、東芝に入社して待っていたのは、不良解析のため写真撮影という単純作業。しかし、それを地道にこなし、やがて、有効な回路アイディアを提案し続けることで、新たな業務ステップにはい上がっていく。

    その頃のことを竹内氏は以下のように振り返る。

    『いまになってみれば、それはとてもいい修業でした。貴重な下積み時代だったと思います。どんなことでも、地道に努力する以外に成長する術はありません。』

    『いざというとき誰かに助けてもらうためには、自分はいつも最大限の努力をしていなければなりません。熱意をもってコツコツと頑張っていれば、それを見ていてくれる人は必ずいます。』

    下積み、地道な努力、熱意を持った頑張り、など、ややもすると、普通のビジネス書では見過ごされがちな価値観の大切さを再確認できるだけでも、私は本書を読んでよかったと思った。

    最後に。

    例えば、Appleのスティーブ・ジョブズ氏のように、我々エンドユーザーにも分かる有名企業のカリスマ経営者の語る経営論や成功譚ではなく、重要な産業ではあるが、日の当たりにくい半導体ビジネスのエンジニアからこのような本が出たことは、これからの若きエンジニアにとっても喜ばしいことだと思った。
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    投稿日:2013.12.02

  • 時には考えずに跳べ!

    東大から東芝に進み、MBA留学そして東大の研究室へ。走りながら考え、時には考えずに跳んだ竹内氏の話は技術の話じゃなくてマネジメントの話だなと思ってたら一番最後の締めでMOT(技術経営)に力を入れていると出て来て納得でした。

    竹内氏が東芝に入社を決めるのに大きな影響があったのは会社見学で会った当時研究所長でフラッシュメモリを開発した舛岡氏、「次はいよいよフラッシュメモリ」「オレがそれをやる」。この勢いに惹かれて入社を決めた所当時フラッシュメモリの開発は社内のお荷物で事業撤退一歩手前。最初の半年は不良品や競合品の写真を撮り続けるのみでようやく半導体の設計の仕事についても先輩二人と3人だけのセクションだった。結局ほぼ独学で半導体を勉強し、ようやく設計の仕事をし始めたのもつかのま入社3年目にバブル崩壊の影響で研究所の閉鎖が決定そしてついていこうと決めた舛岡氏も東北大の教授に転身し、先輩二人もバラバラの部署に移動になってしまう。

    ここで終わらなかったから今が有るのだろうが会社に隠れて3人で開発を続け特許を取り、毎年国際会議で発表を続け、この頃の技術は今でも東芝を含めほとんどのフラッシュメモリに使われている。結局お荷物だったフラッシュメモリ事業はiPodの爆発的な流行とともに東芝の主力事業となるのだが当時開発をやめると決めた上司が手のひらを返したように自分の手柄にする辺りは東芝も普通の会社なんだなあという感じですがこれは後の話。

    2000年にフラッシュメモリの技術はある程度自信を持っていた竹内氏はMBA留学を決断する。当時技術者に対するMBAの社内制度はまだ無く、文系向けの試験を受け直した。竹内氏の指向は技術を突き詰めるのではなく、幅を広げる方向で頭の良さだけでは勝てないヤツがいっぱいいるから自分は人のやらない方向で勝負しようというところ。この辺りから既にマネジメント的な発想が見えて来ている。しかし、TOIECではほぼ満点レベルでもスタンフォードでは言葉の壁で全く議論が出来ない。他の日本人留学生共々必死で勉強するのだが面白いのはラテン系の学生で、まず先生と仲良くなろうと一緒にゴルフをはじめるとか。その後も留学期限の1年半で帰れと言う東芝を説得しMBAを無事取得した。ここでは制度を新しく作って技術者の留学を認めた東芝もなかなかです。

    帰国後次世代フラッシュメモリのプロジェクトリーダーになりなんとかやっていった竹内氏が東大への転職を決めた理由はフラッシュメモリ事業が撤退を決めたDRAM事業を吸収した際、事業に失敗した人たちが横滑りで上司になった事がきっかけ。技術やトレンドを理解しない新しい上司たちは他社と横並びの安全策をとろうとし、最短距離を走りながら考えていた仲間たちが去っていく。MOTの話にもつながるのだろうが変化のスピードが速いIT業界で年功序列の人事制度が上手くいかないのは明らかだと切り捨てている。

    東大の研究室に入ったはいいが、実際には予算も無くベンチャー企業と同じ状態。そこでとったのが人のふんどし共同研究作戦。こういうアイデアがあるから一緒にやろうと他の研究者や企業と組んで1年後の半導体の国際会議に論文を通した。そこでも自分の強みとしたのが実務を元にした産学間のマッチング。そして企業から研究費が入りだすと学生を育てる事に腐心するあたりはやはりベンター企業の様だ。

    竹内氏が学生に最初に指導するのは「挨拶」や「メール」の書き方とごく普通のことから。そして若い技術者にはプレゼン技術よりも基礎的な技術を磨けと言う。そして自分も含めて失敗を怖れず見る前に跳べと。当然ながらたくさん墜落するがそれでも跳べと。MOTというと賢く、上手くやると言うイメージだがどうもそうではないらしい。跳べ!
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    投稿日:2014.01.01

ブクログレビュー

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  • かーくん

    かーくん

    僕は理系と文系の中間の勉強をしているが、この本はエンジニアで、MBAもとっている人が書いていてとても興味深かった。エンジニアが企業の研究者として地道に研究することや、学会で発表するなど、仕事の一端を知れてよかった。大学と企業でも研究内容や仕事の仕方に違いが意外とあるんだなと思った。
    これからの世界では、一つの専門分野で生きてくことは難しくて、常に勉強して高めていく必要があることや、柔軟にしなやかに対応する力が必要だと改めてわかった。厳しい環境で若いうちは働くことも大切と言っていたので、そういう視点でも就活したいなと思った。コンサルティングをする人はアメリカでは理系の学部卒も多くて、それも戦略的にそうしているというのは驚いた。まずは自分の基盤となる実務を経験してからMBAに進んでコンサルティングなどになるというのは確かにいいかもと思った。
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    投稿日:2021.06.16

  • maple

    maple

    半導体業界で世界と戦っている
    著者の実体験がよくわかる一冊。
    こういう人材がこれからも出続けることが日本として大事だと思う。

    投稿日:2019.06.12

  • katotake

    katotake

    東芝の半導体部署におられた著者の体験を綴った書。
    走りながら考える、見る前に跳ぶ。というスピード感ある状況が目に浮かぶ。

    投稿日:2018.11.23

  • stratton

    stratton

    東芝でフラッシュメモリの開発に携わり、今は東大でフラッシュメモリ、次世代メモリの研究に従事する著者による説得力十分の一冊。
    いちばん印象的なのは、著者のバランス感覚。技術者でMBAを取得し、今はMOT(Management of Technology)に取り組むことからは技術と経営のバランスが、東芝から東大に転進した経歴からは産学のバランスが、それぞれ感じられる。このバランス感覚から出される提言は、経営者や技術者にはもちろん、そのどちらでもないワタシのようなビジネスパーソンにもビンビン響く。
    それから、もうひとつ。著者と同様、かつて電機メーカに身を置いた者としては、日本の電機メーカにはぜひとも頑張ってほしい!この点は、著者と思いは同じだ。
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    投稿日:2018.11.18

  • bqdqp016

    bqdqp016

    東大教授による自らの経歴に基づいた仕事に対する考え方を述べた本。著者は、東大卒業後、バブル絶頂期に東芝に入社し半導体、特にフラッシュメモリーの開発に携わり世界の最前線を走った後、スタンフォードでMBA取得、東芝でプロジェクトリーダーを務めて退社、東大准教授として活躍中という、特異な経歴を持つ。スタンフォードMBAをベースに、大企業と東大研究室の特徴を習熟した知識は卓越しており、日本のビジネス界全体をよく見渡せている人だと思う。著者の述べる問題点と解決策は興味深く、非常に説得力がある。興味深い記述を記す。
    「原則となる理論を理解すればするほど、頭は常識で塗り固められ、飛躍した発想が生まれにくくなります。原則を理解しながらも、常にそれを疑う習慣を持つ。そんな姿勢が、どんな仕事でもとても大切だと思います」p30
    「現実の社内政治では、実際に何をやったか、重要な論文や特許を書いたかよりも、声の大きい人や、立場の強い人の方が勝ってしまう」p34
    「(MBAでの英語がわからない状況について)当時、TOEICはほぼ満点だったので何とかなるだろうと高を括っていたのですが、それはTOEICがその程度の試験に過ぎないということでした」p47
    「重要な議論になるとサンディスクは最前列、つまり社長のハラリさんが一番発言してきます。ところが東芝側は最後列の私たち技術陣しかそれに応じません。結局、技術の細かい話になると、私のような技術者が最前列に出てハラリさんと対決するしかないわけです」p85
    「事業に失敗した人たちが、成功しつつある事業に吸収され、組織の中で、成功の立役者の上に立つ、というのは欧米企業ではあり得ません。ところが、日本の年功序列の人事制度では当たり前のように、このようなことが起こります」p96
    「行動もせず「ああかな、こうかな、うーん」などと言っているうちに気がついたら船が沈んでいた、といったことが日本では多すぎます」p101
    「国内にその受け皿がないため、そこから飛び出した優秀な技術者の多くは、韓国や台湾などに渡ってしまいます。切る側にとっては人員整理なのでしょうが、国全体から見たら貴重な人材の流出です」p143
    「一つの場所にとどまるのは怖い。何も挑戦しないことこそ、最大のリスクだと思います」p195
    「一番大事なのは、環境が変わっても生き残れる適応力や精神力を身につけること」p199
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    投稿日:2018.11.13

  • dekadanna

    dekadanna

    東芝出身の東大竹内准教授のフラッシュメモリ奮闘記。事業に失敗した人が、新規部門の上司になる大企業特有の不合理さに憤り、日本の企業内ミュニティとシリコンバレーの会社を超えた技術コミュニティに感心し、大学の教授は今や、アメリカと同じくベンチャー企業の社長と同じで、資金集めから始めなければならない現実に、意外な感じを持った。
    体験した人にしかわからない語り口で、こうしたことを面白く知ることができた。
    スタンフォードでのMBA体験や、今時の学生の育て方も、興味深かった。
    続きを読む

    投稿日:2018.11.12

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