【感想】姑獲鳥の夏(2)【電子百鬼夜行】

京極夏彦 / 講談社文庫
(78件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
30
29
9
2
0
  • 全ては収束する。

    再読。20年近くぶり、電子書籍にて。事象については殆どを正確に覚えていたけれど、それぞれ場面の情景、久遠寺医院の肌寒さや薄暗さ、台詞など、それらが鮮やかに、初読みと同じ時の高揚感で読み終えた。見えているもの、見えども見えず。後半は憑物落としから幕引きまで、怒涛の展開。今までの蘊蓄が全てラストに繋がる流れは圧巻。そして初読みの時にはそう思わなかったけれど、えらい面倒くさい男だなあ…関口よ。なんだかんだ面倒見のいい京極堂。榎木津に木場も。そして、いい嫁だなぁ…雪絵さん。続きを読む

    投稿日:2017.02.18

  • デビュー作とは思えない完成度!

    京極夏彦のデビュー作下巻。
    赤子失踪事件、20ヶ月にも及ぶ妊娠疑惑、そして関口の過去、なにより藤牧の行方、すべてに決着がつく。本書の半分近くが解決編に当てられ、一つ一つの事例が京極堂によって明らかにされていく。それは、いわゆるミステリにおいて行儀の良い作法ではなく、解決編にてあかされる事例も少なくないが、そのすべてがきちんと納得のいくように説明がつけられ、まさにパズルのピースがはめられるように納まるべき所に納まっていく。当然、加筆・修正はなされていると思うが、デビュー作とは思えない完成度に舌を巻く。
    上巻冒頭からしばらく続く蘊蓄も「見えないものをみる」事があるだけでなく、「そこにあるものが見えない」ことの説明にもなっており、それが論理的矛盾に陥ることなくストーリーに落とし込まれているあたりはさすがだと思った。
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    投稿日:2013.10.20

  • 初めて手に取った京極夏彦作品

    別な作者のデビュー作と同じで、この作品もどちらかと言うと解説を中心に話が展開していく。何時間も側で話してるのをずっと聞かされてるようで、正直私が苦手とするタイプの小説だ。下巻の中盤に入るまで結局指が進まず1ヶ月もかかった。
    世界観は独特で過去、現在と物語が複雑に絡み合って行くのはお見事だと思う。
    続きを読む

    投稿日:2014.11.23

  • “憑き物落とし”の話なのです

    昔から散々言われているけれども、単純にミステリ作品と思って読むと肩透かしを食らう方もいるかもしれない本作。
    それもそのはず。この物語は「謎を解く」物語というよりは、「呪いを解く」……「憑き物落とし」の物語なのです。
    後半の場面は凄まじいです。呪いというモノの力、それを解くべく奔走する登場人物たち、緊張感漂う情景。それらが、作者の知識に裏打ちされた筆力で、映像のように眼前に迫ってきます。まさに読者も嵐を走り抜けるような読書体験ができるのではないでしょうか。
    そして、すべて走り抜けた先に待っているのが、いわゆる「憑き物落とし」です。
    憑き物は、ある意味作中だけの言葉ではないと思います。作者は作中の至るところで、読者の肩にも憑き物を載せているのです。そうしてそれを、京極堂の言葉により、最後にはしっかりと落としていきます。
    以前読んだ時に、この凄まじいカタルシスは何だろうか……と思ったものですが、読み返してようやく気づきました。作者は、関口という人物を語り部に据えることで読者も巧みに物語に取り込み(だからこそ入り込めない方がいるのも重々承知の上です)、壮大な「憑き物落とし」をしていたのだと。
    ミステリという枠でくくってしまうと、何かが違う。ホラーとも違う。これは「憑き物落とし」のお話です。
    「憑き物が落ちる」体験を、ぜひ多くの方にしていただきたいものです。
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    投稿日:2021.10.03

ブクログレビュー

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  • may

    may

    因習好きだし最後めちゃくちゃ胸糞も後味も悪くて良かった。主人公も実は最低だった(誘いに乗ってあんなことして都合よく記憶喪失になるなという意味で)。

    投稿日:2024.01.01

  • 読書と黒ウィズ好き

    読書と黒ウィズ好き

    常識で考えたらありえないことを、さも現実のように語る、ファンタジーとミステリの狭間のような一冊でした。
    上巻を読んだだけでは関係なさそうな冒頭部分も伏線として回収されたのは気持ちよかった。
    ただやはり作者の趣味で書いてるだろという印象は残った、面白かったから別にいいけど笑続きを読む

    投稿日:2023.12.10

  • knkt09222

    knkt09222

    このレビューはネタバレを含みます

    京極氏が活動を始めた当時、90年代中盤だったので、ドストライク世代のはず。
    が、中二病だった私は、雑誌「ダ・ヴィンチ」に度々特集される氏の姿に、作家ってゲーノー人じゃねえんだよと嫌悪感を抱き、以来侮っていた。
    実相寺昭雄監督の映画をWOWOWで見たはずだが、なにせ侮っていたので閑却していた。
    後、ニコニコ動画でラジオ音声を漁る際、京極・平山夢明のトーク「東京ガベージコレクション」や、水木しげる界隈で気になり始め、作品を読む前から尊敬するようになった。
    水木しげるを盛り立てる人は尊敬に値するのだと。
    初・夏彦は東雅夫・編「平成怪奇小説傑作集3」の「成人」。4年前だ。
    最新作「鵼の碑」が活況を呈している今更、齢四十にして(当時話題に上がっていた分厚い文庫ではなく、分冊文庫版にて、)四半世紀を経て、入門したわけだが、
    当時申し訳ございませんでしたと土下座したいくらい、o mo shi ree!!!
    「成人」は同時流行りの実話怪談を、「正面から脱構築」したものだが、この「姑獲鳥の夏」もまた、おそらく当時の新本格ミステリ潮流の、渦中に別文脈を流し込んで脱構築するという荒業を行ったものなのではないか。
    ミステリ界隈にも、妖怪界隈にも、先鞭をつけたり継承したりズラしたり肯定したり否定したりという、重層的な意義を持つ作品を投入したのだろう。
    「姑獲鳥の夏」ロシア語版のカバーには、宣伝文として島田荘司の「だまされる脳が作りだす、まったく新しい型のミステリー」という言葉が引用されているというが、個人的には島田荘司の諸作を強烈に連想した。
    ……といろいろ書いたのは周辺情報ばかりで、内容への感想を精緻に書くと数日かかってしまうので諦めるが、とにかく面白かった。
    「妖怪どうたらこうたらぶち上げ」ではなく、「憑き物落とし」なのだよ、探偵というか強制終了させるギミックなのだ、おまえの好きな叙述トリック路線なのだよ、後に興味を持つアレコレの源になるはずだよ、つべこべいわずとにかく読めや馬鹿>中学生当時の私。
    とタイムマシンで遡って押しつけたいくらいだ。
    不明を恥じるばかりである。
    いや、のちに奥泉光がミステリを純文学界隈からズラして、謎周辺での「話し合い」こそが面白いのだと提示してくれた、それを経たからこそ面白みが判ったのであって、当時読んだらやっぱり怒って侮ったままだったかもしれん、自らの度量の狭さと知能の低さにほとほと呆れるよ。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.09.25

  • このみ

    このみ

    このレビューはネタバレを含みます

    17年ぶりに新刊が出るので、10年以上ぶりに読み直し。大筋は覚えていたけど細かい部分をかなり忘れてた。学生の時と大人になってからでなんとなく自分の中での感じ方が変わってる気がする。
    関口くんは本当にいい友人持ったなと思う。大人になってからいつまでもいてくれたって構わないなんて言ってくれるような友人なんてなかなかいない。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.08.11

  • しら

    しら

    ★2.5
    文章の読みにくさと、上巻のくどくど脳と心の繋がりを説明する感じと、ちょっとダメだった。
    結局主人公が精神病んでて、死体が見えなかっただけの話…
    そんなんなんでもありな気がしちゃう。
    たぶん、主人公が欝である中で周りをいかに怪奇的に魅せるか?が上手で評価されているのかな?、続きを読む

    投稿日:2023.03.07

  • cocoa612

    cocoa612

    前から気になっていたが、あまりの分厚さに読んでいなかった作品。
    20ヶ月も身籠ったままの妊婦、密室から消えた旦那、妊婦の生家の産院では生まれたばかりの赤子が3人も消えている…

    ホラーではなく、人間の思いによって生まれる「呪い」(この辺は呪術廻戦に通じるものがありそう)、行き違いから生まれた悲しい事件…進むにつれてどんどん真相がわかってきて、一気に読んでしまった。続きを読む

    投稿日:2022.06.12

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