【感想】哀歌

遠藤周作 / 講談社文芸文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
2
2
0
0
0
  • 遠藤が見た戦中…

    太平洋戦争、通称、大東亜戦争の戦中に起こったこととは本当のところ取り返しがつかないものですよ。そして、作中に出てくるように、そんなことはお構いなしに青春も、子供時代も、家庭も在るように在るものです。遠藤の作品は優しいものです。まるで、戦前の日本基督教団代表の富田氏が靖国天皇とキリスト教徒の矛盾を覆い隠すように示した優しさと軌を一にしています。実際のところ拷問というのは極めて恐ろしいことです。長崎の熱湯拷問、火刑などは、常人では決して耐えられません。特になまじっか知識人であり、武士の家系を誇る、当時の遠藤には不可能なことに思えたのでしょう。特に戦前の弾圧を目にし、実際に太平洋戦争下でクリスチャンとして過ごした遠藤にとっては…。我々現代人は、恐らくですが、かつてのような拷問には最早耐えられないのではないかと感じます。私自身も読んでいて、指の火傷にさえも耐えられない自分が火山地帯の熱湯をかける拷問などには耐えられる心持さえありません。現在の憲法改正、靖国参拝の流れと、北朝鮮が辿ってきた道のりから、日本にも厳しい時代が来ないとは限りません。私自身、キリスト教徒の端くれではあるのですが、そのような時代が来たときは教えには反しますが自決の用意をしておいた方がよいのでは、と感じます。我々は人間です。この世の進化した拷問には耐えきれるものではないのです。遠藤の作品を読んでいるとつくづくそのことについて考えさせられます。
    …では、殉教した人たちは?
    そうなりたければ、こう思うしかありません。
    ”無知は力なり”
    …この進歩した世界に先祖返りするしかないような時代は来てほしくはないものです。
    星5つ。
    続きを読む

    投稿日:2018.08.28

ブクログレビュー

"powered by"

  • aqua

    aqua

    このレビューはネタバレを含みます

    病気、死、基督教、切支丹。
    名作長篇に繋がる短篇がまとめられていて、短くとも真髄に触れられる濃い内容。
    神の存在の描かれ方が印象に強い。生きている動物や人間に神の存在を見ているのが、自分の中にない感覚だった。
    人間の罪深さや弱さと対峙するのは心を抉るように辛いが、目を背けずに知りたいという欲求が勝る。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.04.19

  • Στέφανος

    Στέφανος

    再発◆男と九官鳥◆その前日◆四十歳の男◆大部屋◆童話◆雑木林の病棟◆帰郷◆札の辻◆雲仙◆私のもの◆例之酒癖一盃綺言

    著者、遠藤周作、1923豊島区-1996、作家、慶應義塾大学文学部仏文科卒
    説、上総英郎、1931広島県-2001、文芸評論家、早稲田大学文学部フランス文学科→同大学院、元二松学舎大学教授
    作家案内:高山鉄男、1935-、フランス文学者、慶應義塾大学フランス文学科→同大学院→パリ第4大学、慶応義塾大学名誉教授
    続きを読む

    投稿日:2019.05.24

  • ぁゃ

    ぁゃ

    『沈黙』のデッサン的作品も入ってる
    短編集。

    後味が良くないけど、読まずには居られない感じの本。

    投稿日:2007.07.10

  • ななしの

    ななしの

    名作『沈黙』を生み出すきっかけになった短篇集。苦いコーヒーに入ったほんの少しの甘味のような作品群。隠れた名作「札の辻」は後に『死海のほとり』として蘇ります。

    投稿日:2004.10.15

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。