【感想】夜市

恒川光太郎 / 角川ホラー文庫
(661件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
200
252
139
22
7
  • 横道にそれたら、そこにあるかも・・・

     「夜市」と「風の古道」の2編。両作とも強い繋がりはないものの、千と千尋や遠野物語のマヨヒカ、桃源郷などと同じ、近くて遠い異界のお話。 
     本文中にもあるのですが、これは登場人物が異界で経験することによる「成長の物語」ではありません。読者の心をほんの少し揺さぶって、ほんの少しだけ不安にさせる・・・リアルな恐怖より不思議な不安を感じる上質なホラーだと思います。 なにかわからない胸のざわつきを体験したい方は是非!おススメです。続きを読む

    投稿日:2015.08.19

  • 本当は怖い日本昔話的ファンタジー

    色鮮やかな店が立ち並ぶ縁日を抜けた先にある神社の深淵。仲の良い親友と見つけた秘密の抜け道。子供ってそういう「ちょっと怖くてドキドキする」場所が好きですよね。本作は、そんな日常の風景から妖怪の住む異世界に忍び込み、壮大な冒険譚へと誘ってくれる物語。

    ホラーが苦手でも、童話やファンタジーが好きなら気に入るかもしれません。むしろ、賞の名前とレーベルが、逆に読者を遠ざけているかもしれない一冊。
    子供の頃の冒険心を思い出して、ちょっと手を伸ばしてみませんか。
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    投稿日:2014.10.10

  • こことここでない世界が交わる場所

    「夜市」と「風の古道」の二編が収録されています。どちらもふっと不可思議な世界に紛れ込んでしまうお話です。

    「最初に姿を現したのは永久放浪者だった。」夜市に入った時の一行目の文章です。あまりに唐突で「?」となり、ページを飛ばしてしまったのかと前のページを確認してしまいました。その先をしばらく読んでも永久放浪者についての説明もなく、知っていて当然のように話は続きます。ああ、何か不可思議な世界に紛れ込んだのだと感じさせ、一気にワクワクしてきました。この辺の演出がニクイです。

    「風の古道」の元となった武蔵野の多摩湖自転車道ですが、途中自動車が通る為の道路で何度も分断され、その都度嫌がらせのようにしつこく車止めが設置されていて興はそがれますが、多摩湖の周辺以外は本当に一直線です。そして自転車道というより隠れた裏道という印象を受ける部分もあり、本文にある「玄関を道側に向けていない」という部分もそこからインスピレーションを受けたのかなあと思いました。その他にも私が通った時に感じた印象を感じさせる部分もあり、そのせいか明らかに非現実的な空間でありながら、既視感を覚えました。

    二編とももの凄いく怖いという類のお話ではありませんが、例えば道を歩いていて妙に静かに感じ、ふと見ると人の流れが途切れていて、何かから取り残されたような不安感、それでいてどこかワクワクするような、そんな得も知れぬ感情を感じさせるのが上手い作家さんだと思います。
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    投稿日:2014.10.05

  • ソフトに、サワヤカに、少しだけ、恐く。

     第12回ホラー小説大賞受賞作品。 歴代のホラー小説大賞受賞作品中でも、高い評価を得ている作品です。

     恒川さんは沖縄在住。すてきな人生してますなあ。

     完成度の高い文体、人の心の深いところを見つめさせてくれる切り口、不可思議かつ魅力的で、ほんの少し怖い作品世界。 静かな語り口ではありますが、展開はスピーディーで飽きさせません。同書に書き下ろし収録されている「風の古道(こどう)」と共に、一読の価値あり。続きを読む

    投稿日:2013.09.28

  • 静謐で昭和世代にとって懐かしい雰囲気の異世界の物語

    「夜市」も「風の古道」も静かな印象を受ける美しい異世界物の物語。(賑やかな夜市を指して「静かな」、というのも変な話ですが。)夕方の神社の裏や、普段入らない街角の裏道を見て、異世界への入り口かもと想像をたくましくした昭和世代の子供の頃の妄想をそのまま小説として提示したような雰囲気があります。
    ホラー小説大賞を受賞した表題作も良いのですが、この本のために書き下ろした「風の古道」もまた雰囲気ばっちりでおもしろく読めました。
    ホラー小説大賞受賞と言うことで、よほど恐いのかと思う人のために一言。全然恐くありません。和風ファンタジーととらえた方が良いかと思います。
    続きを読む

    投稿日:2014.04.13

  • 心地よい喪失感

    エンターテインメントでありながら、深い喪失感が描かれている。もちろん悲劇なのだが、不思議と心地よい。泣いて泣いて泣きつくした後に、じんわりと心を満たす寂しい幸福感のようだ。この感情を、ホラーで味わわせてくれた前例があっただろうか? 着想はRPGかもしれない。「昼間は廃墟で夜になると出現する町→そこでしか買えない貴重なアイテム」とか「死んだ仲間を復活させてくれる教会」とか、ドラクエその他のRPGで味わった「感じ」が、そこはかとなくあるように思う。続きを読む

    投稿日:2013.09.28

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ブクログレビュー

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  • チュン

    チュン

    小説を読んだ、っていう感覚じゃなくて不思議な体験をしたっていう感じ。暗い、不気味で、だけど後に引く仄暗さだとかトイレに行けなくなるような怖さでもなくって。暗いトンネルの中で体験をして、読み終わったらトンネルを抜けたような感じ。
    すごく面白かったです。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.08

  • りんご

    りんご

    読みやすい文章ですが、どこか暗い雰囲気と凛とした緊張感が漂います。怖いけど綺麗。ファンタジーとホラーの間の絶妙なところ。もう何度も読み返してる、本の中で1番好きかもしれない1冊です。

    投稿日:2024.04.07

  • ちゃちゃしも

    ちゃちゃしも

    読み終わった後に、「今夜もどこかで夜市が開かれているのだろうか」といった薄寒さと高揚感を感じる作品だった。
    子供の頃、夜道を一人で歩いていた時の非日常感、冒険感を思い出した。

    投稿日:2024.03.24

  • ほげ

    ほげ

    ホラー小説特有の雰囲気がよかったです。怪しげで好奇心がそそられる感じです。また、登場人物にも惹かれるものがあります。

    投稿日:2024.03.22

  • 喜一

    喜一

    ジャンルとしてはホラーらしいがご安心を。フィクションが苦手な私でも楽しく読めるような不思議な二作が収録されていた。
    不思議で少し切ない世界へあなたも。

    投稿日:2024.03.11

  • かしゅかしゅ

    かしゅかしゅ

    オチが想像ついてしまって飽き飽きしている人に読んで欲しい。幻想的、非日常的な物語を探している人にはピッタリな一冊。恒川さんの他の本が気になる。

    投稿日:2024.03.04

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