【感想】二つの祖国(三)

山崎豊子 / 新潮文庫
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
9
7
5
0
0
  • 第三巻~東京裁判 前

    2011/10/25読了。
    今年度に入ってすぐに手に取った記憶があり、
    ずいぶんと時間がかかってしまったように思う。
    新装文庫版により全4巻。
    トヨコさんの作品は、いつものごとく第一巻を読み終わるのに
    時間がかかってしまう。
    本作品においては、ざっくりと下記のように分かれるかと。

      第一巻~日系アメリカ人強制収容所
      第二巻~戦場における日系二世
      第三巻~東京裁判 前
      第四巻~東京裁判 後

    第一巻では、戦争時下の日系人家族がどのような
    処遇を受けたかを通して、小説構成上の舞台設定、
    登場人物の心理スケッチを読みながら
    彼らの人となりを理解する工程を踏むのだが
    その作業に時間を費やされてしまう。
    第二巻以降は、戦場ないし裁判という局面において、
    本作品のテーマでもある二つのアイデンティティの端境の中で
    自分の果たすべき役割を見出しながらもそれに伴う苦悩に
    悶える主人公にぐっと感情移入することができ、
    夢中になって読み進めることができた。

    また、第三巻以降では、東京裁判というあまり馴染みのない
    話題に触れ、戦争指導者たちの証言から
    全く知らなかった事実や、意外な思想・信条に
    触れることができる。
    個人的な一番の関心事は、天皇についての扱いについて。
    法的理屈とは無関係に、日米ともに現実に即した
    暗黙知の中でことが進んでいったのだと実感。
    この点は日本人にとって絶対に譲れない聖域であり、
    そこを侵さなかったGHQは懸命だと再確認。

    この作品を読了できたので、最新の「運命の人」及び、
    「ぼんち」「華麗なる一族」以外の
    代表的な作品はほぼ網羅できたかな?
    戦争三部作を完読して思うのは氏の描く女性像って
    なしてここまで男目線の理想像が描けるのかしらと
    毎度のごとく感心してしまう。ナギコーーー。
    Wikiで本作のモデルは誰だろうと調べると
    思わぬネタバレに合ってしまったのが悔やまれるところ。

    余談だが、「不毛地帯」の壹岐正のモデルである瀬島龍三が
    後の作品の「沈まぬ太陽」だけでなく、本作にもちらっと登場。
    まあ、東京裁判を扱えば必然ではあるけれど。

    広田弘毅については、悲しいかな予備知識が足りず。
    東条英機は割合良く描かれているが、さもありなんかなと。
    続きを読む

    投稿日:2013.12.26

ブクログレビュー

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  • にしど

    にしど

    日系二世の主人公が日本とアメリカ、2つの祖国の間で悩みながら生きていく太平洋戦争末期〜戦後の物語。
    3巻目の本作は引き続き日本での軍事裁判が続く。
    愛する女性椰子と米国から日本にやってきたつまりエミーとの間で悩む日々も始まりいよいよ面白みが増してきた。結末が楽しみ。続きを読む

    投稿日:2024.03.22

  • tailslope

    tailslope

    このレビューはネタバレを含みます

    読了に大分時間がかかってしまった。
    本編の主人公の天羽賢治は極東国際軍事裁判のモニターとして、法廷に臨むが、戦勝国と敗戦国の不当な裁判に忸怩たる思いで臨む。
    物語は裁判の描写と賢治の私生活面での描写を交互に綴っていく。
    裁判描写では、読書中に眠くなった。
    賢治の新聞社勤務時代のかつての同僚の椰子は両親と共に日本に戻り、原爆の被爆者となり、奇跡的に助かったが、両親を失った。
    椰子の妹の広子はアメリカに残り、原爆の被害からは逃れた。
    妹と両親の墓参りに行った椰子は広子から、アメリカが原爆調査機関を作り、被爆者を治療するのではなく、モルモット替りに調査しているという話を聞いて、人種的偏見も甚だしいと、怒りで体が震えた。
    賢治は日本にいる間、椰子と深い仲に成っていく反面、妻のエミーとは心が離れて行く自分に煩悶する。
    戦争が終わってからも、祖国日本とアメリカの間で苦しむ日系二世の賢治の心の葛藤は続く。
    次巻の四巻目は後半の東京裁判へと続く。また、妻エミーとはどうなるのか?
    そして椰子とはどうなるのか?
    闇市で稼ぎ、成金となった賢治の弟の忠は?
    最終巻も気になる。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.12.23

  • さくら

    さくら

    3巻は、終戦からGHQの進駐、そして東京裁判を中心に物語が進行する。

    主人公のかつての同僚で、密かに想いを寄せていた女性は原爆投下時、広島にいたが奇跡的に助かり、主人公と再開する。

    そして、主人公は、東京裁判にモニター(通訳が合っているかどうかダブルチェックをする人)として立ち会う。
    東京裁判では、勝者が敗者を一方的に裁くという一貫した進行に主人公は違和感を覚える。
    日本は侵略戦争をしかけたと一方的に非難され、他方でアメリカの原爆投下については裁判上の記録から削除される。

    そして、戦前戦時中は、あれだけ日本政府、軍部を称賛していた日本のマスコミは、掌を返したように日本批判、反日の報道を始める。

    アメリカGHQの一員として、東京裁判に関わっている主人公は、アメリカと日本、二つの祖国の板挟みにあって、悩み苦しむ。
    アメリカ人からは、ジャップと呼ばれ、日本人からは薄汚い裏切り者と言われる。

    そんな主人公の苦悩を理解せず、日系二世にも関わらず反日思想の妻に、主人公は愛想が尽きて、かつての同僚の女性に心が惹かれ、2人は結ばれる。が、主人公は結局プライベートでも、どっちつかずの態度をとってしまう。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.24

  • MASIA

    MASIA

    東京裁判のモニターとして、法廷に臨む賢治。

    裁判長、連合国側の検察官、日本人の被告、日本人の被告を弁護する弁護士。
    太平洋戦争への様々な思惑がみえてくる。

    アメリカ国籍を持ちながら、日系二世でもある自らの存在をもとに、限りなく公平にモニターとしての職務に徹しようとする賢治。

    それが賢治を悩やませ、苦しませる…

    日本兵が連合軍の捕虜や女性に行った残虐行為。アメリカが日本の敗戦がほぼ決まった中での広島、長崎での原爆投下。
    どちらも許されない。

    日本にだけ非があるとするのではなく、日本をそこまで追いやった側の非も追求する日本側弁護団の正義。

    戦争、そこに至るまでの経緯…
    一方だけに非があるわけではないのか…
    ロシアとウクライナ、どうなんだろう。

    そんな中で想い悩む賢治…

    エミーとのすれ違いの中、椰子に安らぎを求めていく…
    エミーに椰子との関係を知られることとなり、エミーの身に起こった悲劇を知った賢治。
    3人の関係はどうなるのか…

    ヤミ屋として、才覚を現す忠。
    賢治と忠、分かり合える日は来るのか…

    続きを読む

    投稿日:2023.05.13

  • yukia

    yukia

    東京裁判は戦争犯罪を裁く場ではなく、敗戦国の指導者に責任を取らせる裁判だった。
    戦争は置かれた環境や所属によって意思とは関係なく相応の仕事を求められ巻き込まれるのだとつくづく思った。
    親ガチャが取り沙汰されているが、私は国籍ガチャもあると思う。

    ▼ヒトは区別分類することができるが、すなわち差別も生まれる。
    人種差別が無くならないように戦争も無くならないなら、
    ルールを決めた戦争を行なってもらいたいものだ。
    例えば、戦闘予定地域への民間人完全退避の徹底、
    民間人を巻き込まないプロの戦闘員による陣取り戦争。
    ルールの上で戦争して人道違反を戦勝国、敗戦国を平等に評価する体系を作っていって欲しいと願う。
    続きを読む

    投稿日:2022.09.22

  • ぶっ君

    ぶっ君

    戦勝国側だけでなく、敗戦国の弁論も確りと描かれている。

    もどかしさとやるせなさが残る三巻目でした。

    投稿日:2022.05.12

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