【感想】運命の人(一)

山崎豊子 / 文春文庫
(95件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
16
49
17
2
1
  • 政治の規制、報道の自由と国民の知る権利をめぐって

    毎朝新聞の記者・弓成亮太は、親しい外務省の事務官・三木昭子から沖縄返還の機密文書コピーを入手する。野党の横溝宏へ機密文書のコピーを託すも、ソースがばれ、弓成は逮捕されてしまう。知る権利、守秘義務、不倫関係。真実はどこにあるのか。

    1924年生まれ、2009年85歳で本書を完結させた山崎豊子。新聞記者上がりの丹念な取材や時間をかけた膨大な資料調査、そしてフィクションと現実を行き来する丁寧な描写で、時に現実以上に真実にせまる小説世界を描いている。読売新聞の渡辺恒雄会長が自身をモデルとした登場人物にキレたのだって無理もないほど、山崎は穴があくまで現実を見つめている。

    報道の自由と国民の知る権利、情報提供者の保護と弾圧問題、いつスクープされるかもしれないスキャンダルと大どんでん返し。読者にとっても切実な問題がどんどん展開していく。元ネタとなった西山事件は、毎日新聞を倒産にまで至らしめた報道・出版史上に残る事件。実在の人物を思わせる人に思わず怒りも、呆れも、ニヤニヤもしてしまいます。
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    投稿日:2014.10.27

  • 衝撃的な展開の連続

    普通に予測できないような事件展開や裁判結果などが次々に訪れ、全4巻を通じて緊張感を持って読めます。
    4巻が一番印象的でしたが、どの巻でも主人公の苦悩が読み取れると同時に戦後日本の基地問題、沖縄返還交渉などの問題について考えさせられました。
    またここまで調べあげることができた山崎さんの力に敬服します。
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    投稿日:2014.08.23

  • 「ヌチドゥ宝」を噛みしめよ

    沖縄辺野古基地化を強行しようとする政府関係者、国家議員達にまずこの第四巻から読んで貰いたい。鉄弾の暴風雨が襲う沖縄の島々、本土の捨て駒にされ辛うじて命が長らえても米占領下に虐げられた。沖縄の島民は自分の土地を略奪され返還後もそれは大して変わらず、そして今再び三度、新たな基地が押し付けられようとしている。沖縄の艱難辛苦を顧みればこうした仕打ちが出来ようにもない筈だ。この本は元毎日新聞記者西山氏をモデルにした物語だ。その人間の生きるを問う深い内容とは別に、縷々語られる沖縄を、沖縄の哀しみをぜひ読み取って欲しい。「命こそ宝」の深い意味合いと意義、今日に生きる全てに届けたい。続きを読む

    投稿日:2015.09.01

ブクログレビュー

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  • 海外おやじ

    海外おやじ

    このレビューはネタバレを含みます

    膨大な資料や取材から濃密な作品を作り上げる山崎さんの作品、本作は、いわゆる『外務省漏洩事件』『西山事件』が題材です。

    文庫本は四巻分あり、全般は記者弓成の三十余年に渡る紆余曲折を描きます。

    ・・・
    第一巻では特ダネ記者としてぶいぶい言わせる弓成が、外交官や政治家に食い込み、情報を取ってくる様子をビビッドに描写しています。

    空気はひとことで言えば『昭和』。仕事は朝から晩まで。取材先には夜討ち朝駆け、酒とたばこは必需品。そして奥様の定位置は家庭。
    そうした雰囲気のなかグレーな取材攻勢で外務省の女性事務員三木から情報を取った弓成ですが、政府の動きに対し義憤を感じたことから別ルートで当該情報をリークしたところ、取材元がばれる事態となり、刑事事件へと発展していく。

    沖縄返還問題についての米国と日本の政府の在り方。こうした政治・国益等の問題を浮かび上がらせる一方、弓成と三木との関係、弓成の妻の葛藤、弓成と仕事上の関係者の変化など、ドラマに富み、面白く読める。

    令和の現代からすると前時代的な雰囲気ながら、政治・歴史・ジャーナリズム等に関心のかる方にはお勧めできる作品であると思います。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.08.06

  • にしど

    にしど

    新聞記者弓長は政治家、官僚と巧みな人脈を持つ敏腕記者。沖縄返還交渉の取材中密約に関わる文書漏洩疑惑により告発されてしまう。
    山崎豊子さんの作品としては1冊づつのボリュームが少なめで読みやすい。

    投稿日:2023.07.10

  • naotakak

    naotakak

    このレビューはネタバレを含みます

    新聞記者が外務省とアメリカの密約を知り、野党議員に情報を明かして、追及してもらうが、それが原因で逮捕起訴されてしまう。その背後には…という話。最近モデルとなった人が亡くなったことで本作を知った。ドラマチックな話ではあるが、主人公がどうしても好きになれず。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.06.26

  • たろー

    たろー

    真実をいつまでも国民から隠そうとする外務省の役人達へは嫌悪感しかない。もちろん、外交交渉を成功させるためには時には秘密裏に物事をすすめる必要もあろう。沖縄密約についても、秘密裏にすすめたからこそ交渉が成立し、返還が実現した、オープンにやっていたらいつまでも実現しなかった、というのが外務省の言い分であろう。であったとしとも、やはり、アメリカのように、一定期間後はちゃんと外交資料を国民に開示し、その時の外務省の判断が妥当であったかを検証できるようにすべきである。続きを読む

    投稿日:2023.06.16

  • 43street

    43street

    第一巻では新聞記者が沖縄返還に関する外交上の機密情報を漏洩した罪で逮捕され、この第二巻では、この裁判が行われる。
    どうやって機密情報を入手したかがミソ。
    やっぱり、この主人公は好きになれない。
    感情移入できないです。

    けど、実際にあった事件を、ここまでドラマチックに書く山崎豊子は流石。
    三巻、四巻、まだ入手してないんだよなぁ。
    ってか、もう発売されたんだろうか?
    買って来なきゃ。
    続きを読む

    投稿日:2023.05.01

  • MASIA

    MASIA

    昭和46年、大詰めを迎えた沖縄返還交渉。
    毎朝新聞政治部・弓成亮太はある密約があることに気づく…

    熾烈なスクープ合戦が繰り広げられるなか、外務省の機密文書を手に入れた弓成はある一手を打つ…

    弓成はどうなるのか…続きを読む

    投稿日:2023.01.21

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