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アガサ・クリスティー, 中村妙子 / クリスティー文庫 (404件のレビュー)
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総合評価:
tete
4
地方の老婦人の物語
錆付くよりは擦り切れる方が良い。イギリスのことわざです。 まさにそんな風に、万事取り仕切って生きてきた老婦人が、異国の一人旅の中で自分を省みてしまうお話。 あの時、夫は本当は何を想っていたのか、子供は…何を考えていたのか・・・など。 婦人の焦りも含めて、読みやすいし、ああなるほどと思えるところが多く、実りある本でした。 読み終わった感想は、本当に子供の思考ルーチンが親にそっくりです。 子供についての記述を見ていると、何が老夫婦の愛を強くしたのかなんて、ため息なしには考えることもできません。 次女の、家に連れてこないと男の良し悪しもわからないという下りは、 現代の地方って呼ばれるものずばりこれだな、とか思いました。続きを読む
投稿日:2014.04.15
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みん
知人に勧めづらい名作
「私はなかなか良くやっていて、自分で幸せを掴み取った」と思っている中年女性が旅の途中で自分の人生を振り返るというストーリー。 多くの女性はこの作品を読むと自分自身の行いを振り返ると思います。人に勧める…と、自分を見つめ直しなさいと言ってるように思われるかも・・・なんて思いました(笑) 誰しもが主人公のような面を持っており共感してしまう作品でないかと思いますが、さらに衝撃的な結末が待っており驚きました。 推理小説ではないですが、ある種のどんでん返しだと思いました。 一見すると地味な話の様ですが、とても感情を揺さぶられる作品だと思います。 もう少し歳をとったらまた読みたいです。続きを読む
投稿日:2017.02.15
カフェオレ
1
推理作家というプロフィールだけではもったいない!
推理小説ではありません。そして作家としての力量を改めて、実感させられます。"そして誰もいなくなった”など、学生時代に楽しんだ彼女の本はすべて推理小説で、それから、ン十年の時を経て、初めてそれ以外の本…を読み、彼女の力量に、今更ながら、目から鱗が落ちたように感じました。もっと、彼女は、評価されるべき、それが読後の感想です。 読んでいる間中、ずっと、身近な女性が思い浮かんでいました。きっと、そんな風にして読む人が多いのではないかと思います。主人公は、本人は気が付いていませんが、好感を持てる女性ではない。 男性には、面白くないストーリーかなと思います。若い女性もピンと来ないかも。爽やかさなど全くない・・・自分の反面教師として、苦手なタイプとして、何らかの救いがあるのではないか、そして、自分にも似たような面があるのではないか・・そんな事を感じながら、一気に読めます。 続きを読む
投稿日:2015.10.22
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おけいはん
このレビューはネタバレを含みます
三人の子どもたちも成人し、夫との仲も良好。何不自由ない人生を送るジョーンは、学生時代、学園の中心的存在だったブランチと再会する。かつての美しさを失い落ちぶれたブランチの奔放な男性遍歴を聞かされるうちに、ジョーンは自分の人生に疑問を抱くようになる。 客観的に見ると、現段階においてはジョーンの方が満ち足りた人生を送っているけれど、ブランチの放つ「あなたは堅い」という言葉が真面目一辺倒だったジョーンに絶妙な劣等感を与える。お互いが自分よりも相手の方が不幸だと思いながら、それは結局自分自身を突き刺す刃でもある。 思いがけず足止めを食らい時間を持て余したレストハウスで、ジョーンは自分のこと、夫のこと、子どもたちのことに思いを巡らせる。全体としてはうまくいっている家族なのに、思い出すのは小さな諍いや子どもたちの心ない言葉ばかり。しかしジョーン自身も、子どもたちを自分の理想の枠に嵌めようとしてきた。自分はこんなにも子どものことを考えているのに、なぜ彼らは言う通りにしてくれないのかという葛藤に悩まされることの方が多かった。 娘にこうあって欲しいと願う母親、母親の理想の型に嵌められたくない年頃の娘たち、寛容さを示して娘たちから信頼される父親。家族の絶妙な不和や歪さ、疎外感・孤独感がこれでもかというくらいリアルに描かれている。 家族の回想や、ブランチとの再会、滞在先でのインド人やアラブ人との交流を通して「人生はこうあるべき」という固定観念にとらわれ続けていたジョーンが自問自答していく。その中にあって、かつてジョーンの前でロドリーが娘であるエイヴラルにぶつけた言葉はかなり残酷。 人が死ぬわけでもなければ、探偵が登場するわけでもなく、ただひたすら一つの家族を描いている。それなのに引き込まれる。自分探しの旅とはよく言ったもので、この旅を通して、ジョーンはジョーン・スカダモアを見きわめる。旅から帰ったジョーンが選ぶ模様と、ロドニー視点のエピローグが秀逸。ここにクリスティの冷徹さを感じた。 人間の内面を巧みに描くクリスティ作品の中でも最高レベルの作品だと思う。 農業をやりたいと言った時のロドニーとジョーンのやり取りに、ネットでよく見る夫の私物を処分した妻の話を思い出した。
投稿日:2024.03.14
orangeboc
とても読みやすい文章だったのに、一文一文を読むのがつらかった。 物語が進むにつれて、ジョーンの価値観に対して違和感が大きくなっていき、完全に信頼できないものとなっていく描き方…読んだものを否定しながら読み進めなければいけない苦しさは、初めての体験だったように思う。 しかし、否定しながら、というのがとても難しい。ジョーンの自分の見たいように世界を見て、自分の価値観を人におしつける、自己愛で作った世界の中で生きていたいという欲望やそういった一面は、わたしにもあるので… 人が自分の思うように動いてくれたら、と考えてしまうことがある。自分が思うように人を動かそうとする傲慢さを恥じることがある。こんな経験をしていると、ジョーンのことを哀れに思うだけでは済まない苦々しさがあとに残る… あとがきでロドニーの怯懦(きょうだ)や怠慢について触れていたけど、やはり人間は、変化を嫌うものだし、責めることはできない… 周りの家族もジョーンをこういう人間だ、と自分の見たいように決めつけている。家族みんながジョーンの性質を憎んでいたにもかかわらず、連帯することもなく現状維持を選んだり逃亡したりしたわけだから… だから納得のラストだった。 人ってそう簡単に変われない…
投稿日:2024.03.10
today-piglet
恐ろしい話だったし、哀しい話だった。 重くて、ゾワゾワして、ズーンとしてしまう、読了感。 自己愛が強すぎるあまり、周りからどう見られてるかを理解してないジョーン。 哀れでもあるが、自分にも「心当たり」…を感じてしまう恐ろしさがあった。 一瞬、お!これは明るい兆しが見える!!と思いきやラストの衝撃…衝撃というほどでもないか…ある種「やっぱり…」とも思わせる現実感。 ロドニーにいたっては、最初は同情しかなかったけど、読了後、お風呂入りながら悶々と考えた結果、ジョーンを哀れに思っていること自体が、すでに見下している感じすらある。 結局ロドニーも「可哀想な自分」「秘密を密かに抱える自分」に酔ってる気すらある。 でも人間なんて、夫婦なんて、そんなものなのかもね。 人って結局早々変わらない。 哀しいけど、変わらない。 自分が、周りが、諦めと受け入れていくしかない。 ★わたしがこれまで誰についても真相を知らずにすごしてきたのは、こうあってほしいと思うようなことを信じて、真実に直面する苦しみを避ける方が、ずっと楽だったからだ。 ★人生はね、ジョーン、不断の進歩の過程です。 死んだ自己を踏み石にして、より高いものへと進んで行くのです。 あらすじ 優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…。 続きを読む
投稿日:2024.03.08
NaNa
現代物も色んなドラマがあるけれど、やっぱり引き込まれる。無いようというよりスッキリとした文章の構成に魅力があるように感じる。期待は裏切らなかった。
投稿日:2024.03.04
ささかまん
誰も死なないけど、何だか辛い気持ちになるクリスティ作品の中でも恐らく異質な作品。順風満帆だと思っていた人生、家族もみんな幸せのはず。。旅先での足止めから何もする事なく自分の人生を見返してたら、全く違う…視点を手に入れて、その結果信じていたものが崩れていく。。 他人から自分がどの様に見られているか、その正体に気づいた時、自分は平気でいられるのだろうか。色々考えさせられるストーリーながらも、ラストのどんでん返しも恐ろしい。クリスティ作品の中でもかなり好きな作品でした。続きを読む
投稿日:2024.02.29
肋骨臀部
読み終わってから、そういえば殺人事件が起こらなかったなと気づいた。砂漠で主婦が回想しているだけなのにこんな読めるのはすごい。エピローグまで読むに、結局ロドニーとジョーンは破れ鍋に綴じ蓋のいい夫婦なのでは?と思う。
投稿日:2024.02.04
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