【感想】おろしや国酔夢譚

井上靖 / 文春文庫
(27件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
10
8
4
0
0
  • 読ませます‼

    読ませます‼ さまざまな資料を駆使してここまで読ませるストーリーに仕上げているとは、さすが井上靖氏。

    以前にジョン万次郎さんを読んで感動したので、ロシアに漂流していった大黒屋光太夫さんのも読みたいと思って購入しました。

    ジョン万次郎さんも大黒屋光太夫さんも、彼と一緒に帰国できた磯吉さんも、実に壮健、実に聡明、実に誠実なニッポン人でした。

    幕府は彼らを遇するに当たって、彼らを十分に生かすことができなかった。当時の日本の体制、日本の能力の限界であったと思いました。

    どちらの本もスタイルは違いますがひょんなことから読むことができてよかったと思います。
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    投稿日:2015.04.01

  • 故郷はどこにあるか?

    思いもつかぬ偶然によって、ロシアという国を横断することになった人たち。災難なのか、それとも人生の試練なのか。
     何故、人は故郷に帰りたがるのか。日本に帰った光大夫がポツリと漏らす。「俺はきっと自分の国の人間が見ないものをたんと見たんで、それを持って国へ帰りたかたんだ。・・・見れば見るほど国へ帰りたくなったんだな。」
     きっとそうゆうことなのだ。故郷に帰りたくなるということは。
     
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    投稿日:2017.05.19

ブクログレビュー

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  • 海と青硝子

    海と青硝子

    三重県鈴鹿市は光太夫の故郷です。大黒屋光太夫記念館があり、近鉄の伊勢若松駅、鈴鹿市立若松小学校には銅像が建てられています。昭和61年には、光太夫が一時帰郷と伊勢神宮参拝を許されたことを裏付ける古文書が発見されました。
    8か月もの漂流の果てに、厳寒のロシアで生き抜き、ついに帰国を果たした光太夫たち。諦めないこと、コミュニケーション能力をつけること、仲間たちの気持ちをまとめ率いること、などなど、多くのことを学ばされます。
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    投稿日:2023.02.02

  • moboyokohama

    moboyokohama

    大黒屋光太夫を船頭とした17人を乗せた「神昌丸」は駿河沖で時化に会いロシアのアレウト列島(アリューシャン列島)のアムチトカ島に乗り付ける。母国日本へ帰りたい一心でロシアの厳しい生活に耐え、ロシア国内を大移動しながら本国送還を願い続け、10年後許しが出て既に死去した12人とロシア正教に帰依した2人を除いた3人が帰国する。
    アリューシャン列島のアムチトカ島からカムチャツカ半島を経てオホーツクへ渡り、陸路ヤクーツク、イルクーツク、モスクワ、ペテルブルクとなんと10,000キロに及ぶ未知の国、風雪の中の流浪の旅は彼らにとってどんなに厳しかったことか。
    地図と見比べながら彼らの姿を追えばその辛い旅がより思いやられる。

    しかしあれほど帰ることを望んだ日本は、ロシアで艱難辛苦を乗り越えて、あるいはロシア政府やロシア人の助けを享受して生きながらえるうちに、今までの人生では見ることのなかった世界と人々を知った彼らにとって、旧弊な決まりにとらわれて身動きのままならない居心地の悪い他国のようになっていた。
    さらに母国に帰ったにもかかわらず彼らは自国内を自由に移動することさえも許される事はなく定められた土地に一生住むことにされた。見聞きしたことは他言無用ということなのか。

    人間にとって自分という者の居場所が確定して、自分の存在が周囲にとって有益な存在であるという事は生きていく上で欠くことのできないものであると思う。
    彼ら漂流民はそれを求めて10年の長きを耐えたにもかかわらず、彼らが帰ってきた母国はそれらを取り上げてしまった。
    帰国する前に「もしかしたらこのままロシアの地に留まった方が良いのかもしれない」と思った彼らにとってその仕打ちはあまりにも残酷だ。
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    投稿日:2022.06.10

  • yoshinar

    yoshinar

    いや何とも面白くそして悲しい史実に基づいた物語だった。江戸時代に、商船が難破してロシアに流れ着いた船員たちが一人欠け、二人欠けしながら10年近くかけてようやく光太夫と磯吉の二人だけが日本に帰り着いたという話。
    ところが話はそこでは終わらない。ようやく帰り着いた日本で、二人は故郷の伊勢に戻ることが許されず江戸で不自由な後半生を送ったという。日本に帰り着いた際の日本側の対処やその後の二人の半生を知るだに、この国って昔から狭量だったんだなあと思うばかり。ロシア正教に帰依してロシアに残ることになった庄蔵と新蔵のほうがある意味、思い切れて幸せに生きたかもしれない。
    もともとは十数人だった船員たち。十人十色でこういう苦境に陥ったとき、どのようにとらえるかでその後が変わっていくものだと思う。うじうじ変えられずにいる人もいれば、あっけらかんと現状を受け入れられる人もいる。
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    投稿日:2022.03.12

  • gocci

    gocci

    実際にあった出来事の、ロシア革命より更に前の18世紀。
    江戸時代の伊勢から漂流した船に乗った人々が
    ロシアという異国で10年どう生きたかどう感じたかをまとめた歴史小説。
    極寒の異国地に漂流し、そこから更に色んな箇所へ移動され
    亡くなる人やロシアに帰依する人や、それでも日本に戻る為に最善を尽くす人がいて
    当時のロシア女帝エカチェリーナ2世との対面まで行ったのに
    やっとの思いで、いざ日本に着けばなんかものすごく虚しい。
    虚しさというより空虚、何だったのだろうか今までの体験はって思い知らされた。
    全く通じない言葉とか身振り手振りだったり、それでも色んな仕事を手伝いたいとか
    自分らは漂流したとはいえ、もう立派にロシアに馴染んでいたからこそ
    当時の鎖国していた日本が非常に狭く見えたんだと思う
    しかし終身里にも帰れず、ずっと幽閉の身とは
    なんとも嘆かわしや。
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    投稿日:2022.01.20

  • Στέφανος

    Στέφανος

    第1回日本文学大賞
    著者:井上靖(1907-1991、旭川市、小説家)
    解説:江藤淳(1932-1999、新宿区、文学評論家)

    投稿日:2018.10.13

  • todo23

    todo23

    最初は16人いた一行のうち、最後まで生き残ったのが4人。うち2人はキリスト教に帰依し、10年の後日本に帰国したのは2人。18世紀のシベリアの過酷な自然環境や華麗なロシア文明を描いた作品です。
    小説と史書の中間、どちらかと言えば丹念に調べた史実を忠実に再現しようとしています。主人公の感情とかの描写は少なく、事実が淡々と述べられていく。作家は皆さん古くなるとこうゆう傾向になるのでしょうか?司馬遼太郎も吉村昭も方向の違いはあれ、そんな感じがします。この作品についていえば吉村昭の最近の作品に近いように思います。もちろん井上靖の方が大先輩ですので、本当は井上さんに吉村さんが近いと言うべきでしょうが。
    続きを読む

    投稿日:2017.11.10

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