わたしを離さないで Never Let Me Go

カズオ・イシグロ, 土屋政雄 / ハヤカワepi文庫
(1074件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
321
369
227
29
10
  • 誰のために人生を生きている?

    宗教的な意味でもなく、何の比喩でもない、文字通り”自分の人生が自分のものではなく、他人のためのもの”だったら自分はどうするだろうか。

    子どもは親を選べないというが、この物語においては親どころかその後の人生すら自ら選ぶことができない。イギリスの海沿いの街、ヘールシャムという施設で生まれ育ったキャシーと親友だったルースとトミー。”提供者”と呼ばれる彼女たちは、いまいる”自分”を感じ合いながら、沸き上がる”自分”の感情で予め決められた運命に抗い始めます。

    普通に日常を過ごす私たちにとって、異常で壮絶で恐怖ですらあるその事実が、カズオ・イシグロの静かで穏やかな言葉の運びによってゆっくりと語られる。どうでもいいような些細な事が彼女たちの心を揺さぶり、生きるとは何を意味するのかを底の底からすくい取って読者の前に差し出すのです。

    長い、オチが読めると言った批判もあるようですが、丁寧にディテールを積み重ねることが、”ひとりの人間”を描くためには必要なのではないでしょうか。
    続きを読む

    投稿日:2013.09.20

  • 予備知識なしで読むことをおススメします

    この物語は「提供者」の介護をしているキャシーの回想からスタートします。
    「提供者」とは何の「提供者」なのか?
    主人公が出身のへールシャムとはどんな場所なのか?
    出だしからわからない言葉に翻弄されますが、少しずつ謎が解き明かされて、終盤には驚愕の事実が判明します。

    もしかしたら、なんとなく予想できてしまう内容かもしれません。
    それでも、癌患者の「疑い」と、医師から宣告される「事実」との間に大きな隔たりがあるように、キャシーもまた大きなショックを受けます。

    決して暗く陰鬱な話が続くわけではなく、物語の大半は眩いばかりの青春の輝きを放っています。
    だからこそ、後から覆しようのない運命が重くのしかかってくるわけですが・・・

    電子書籍にはめずらしい解説付きです。読み終わってもなお残る謎に思いを巡らせてみてください。
    続きを読む

    投稿日:2014.08.04

  • ゆっくりと判明する世界

    自分の人生について思い悩むことは誰しもあるはずです。そして今後の自分の人生なんてはっきり言って、分かりません。しかしこの作品で登場する「提供者」と呼ばれる人物たちの運命は、決定されています。しかも残酷で抗いようがないものです。

    読み進めるうちに読者は、提供者の運命や小説内の世界観が少しずつ分かっていく構成です。
    じわりじわりと進んでいき、最後に深く心を揺さぶられる結末を迎えていきます。
    己の生きる意味、他者への影響などこの作品から得られるものは人それぞれだと思います。深い小説です。
    続きを読む

    投稿日:2013.10.16

  • 全ては神が創造した。そして…。

    キャシーとトミーとルーシーの淡い青春とこの物語が作る奇妙な世界の内部と外部をきれいに描き切った素晴らしい作品です。
    作者は日系人と聞きます。おそらく私たち日本人と同じように神が世界を創ったという一神教を、キリスト教を外部から覚めた目で眺めたことがあるのでしょう。
    そして、その虚しさを知っていることでしょう。
    芸術がこの作品の山場までの重要点としてあります。
    アートとは神が人に与えた天分でしょうか? それとも自然に畏怖する人の心が紡ぐ虚妄でしょうか?
    マダムやヘームシャルの関係者は展示会の作品を集めこの世界の内部と外部をつなぎながら、大きな流れに逆らおうとします。
    ヘームシャルの生徒たちにとって特別な外部だったマダムたち。
    あるいは彼らはヘームシャルの生徒たちにとっての神としてあらわされているのかもしれません。
    山場はそこにあります。
    マダムたちも人間に過ぎないのです。
    神が創りたもうた一個の人間に過ぎないのです。
    ヘームシャルの最大の主眼だった芸術も結局、作者が描き出した結論に過ぎないのかもしれませんね。
    iPS細胞がある今ではこの作品は色あせて見えてしまうかもしれませんが、この作品は紛れもなく人間を描いています。
    あまりに美しい物語です。
    星5つ。
    続きを読む

    投稿日:2016.03.12

  • こんなことがもしもあったら

    実は映画、観ちゃいました。映画もすごく良かったので、小説も是非読みたくなって。

    さすがカズオ・イシグロです。「日の名残り」然り、なんともいえない情緒があります。イギリスならではのどんよりとした空、荒涼とした田園風景、石造りの建物、寂しげな海岸、などなど。読み進んでいくうちにどんどん頭の中でフィルムが回っていくよう。

    重要なストーリーですが、こんなことがあったら今の若者は自殺してしまうんじゃないか?と思えるようなあり得ない話です。少しSFチックで、現実的に言えば、臓器提供の倫理感の話でもあり。。。将来、生きていく目的も見いだせない若者が、それでももがき苦しみながら人間らしく生きようとする姿に心打たれます。普通に成長して、恋して結婚して、子どもを産み育み・・・と少しでも幸せな人生を送ろうとする。とても切ない話です。

    映画がかなり良かったので、両方おススメです。どちらが先か・・・うーん、小説でしょう。
    続きを読む

    投稿日:2013.09.25

  • わたしを焦らさないで・・・衝撃の世界に絶句。でも青春小説のワクワク感も・・・

    代表作の「日の名残り」が執事の独白だったので冒頭からの介護人の感傷的な想い出語りから、これも感動的な福祉っぽい物語かと思ったが、読み進めても状況が掴めず、さらに謎は深まり、その甘い読みは心憎く、ほろ苦く裏切られエンディングまで、お陰で一気に読了となった。「Never Let Me Go」の収録されたカセットテープを巡る青春小説のワクワク感、精緻で巧みな数多くの伏線、思い返すと頭クラクラで目が冴え翌日は寝不足で酷く疲れた。文章&創作力ともにスゴイ!
    続きを読む

    投稿日:2014.01.04

Loading...

ブクログレビュー

"powered by"

  • ゆり

    ゆり

    臓器提供のために生まれた子供たちの話 自分たちに未来がないのにnever let me go と人形を抱いて歌うところで心に5万トンの重りがのしかかるかんじがした 子供たちが少しずつ事実を知っていくのが辛い続きを読む

    投稿日:2021.10.10

  • 99

    99

    読了。読むこと自体を楽しめる、いつまでも読んでいたい本。ストーリーでぐいぐい引っ張っていくようなタイプではなく、旅先か近所の公園でのんびりとくつろぎながら読むのが適している。読書の楽しみを再認識させてくれる小説だった。続きを読む

    投稿日:2021.10.08

  • comma

    comma

    子供が、読み終わってたので、借りて読んだけど、ちょっと私には読み終えませんでした
    なぜか?
    理由は、あります。


    投稿日:2021.10.06

  • むぎちょこ

    むぎちょこ

    このレビューはネタバレを含みます

    約ネバが好きな友人に勧められて読了。
    主人公の一人称で過去を回想する形で物語は進んでいきます。始終敬語なのがくどいと感じてしまう部分もありましたが、特に問題なく読み進めることができました。
    介護人、提供者、2回目の提供……最初に不穏な単語の説明がされることはなく、しだいにその意味が明らかになっていきます。意味を理解した時、思わずゾワッと鳥肌がたちました。
    ヘールシャムは残酷で、優しい箱庭です。希望なんて知らずに育つことが幸せか、教育を受けて一時でも人間らしく希望を抱くことが幸せか……とても難しい疑問です。

    生命倫理や医療の捉え方が変われば、こんなことが当たり前になる未来はそう遠くないのだろうと感じました。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.10.03

  • たんぽぽまる

    たんぽぽまる

    このレビューはネタバレを含みます

    友達の言動やちょっとした噂話に一喜一憂するような子どもたちが、臓器提供については感情が見えて来ず何とも言えない気持ちになった。
    研究倫理が如何に重要か考えさせられた。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.09.27

  • ゆき

    ゆき

    このレビューはネタバレを含みます

    思っていたよりも重たい内容だった。
    冒頭のよくわからない描写が最後の方で意味があることがわかった時は凄いなと感じた。
    真実を知ることがいいことなのか考えさせられる作品だった。
    舞台となったヘールシャムのように人間的な生活を送らせ、手厚い保護をし、教育をすることにより自我を生まれさせ、いずれ自分が将来どうなるのかという知識だけ教える。ルーシー先生のように知識だけでなく、しっかり理解させる。ヘールシャム以外の施設のように人間として扱わず自我を持たせないように育てる。
    臓器提供をする人を育てる場合どの場合が一番幸せなのか考えた。
    私は、1番最後の何も考えることなく、一生を終えるのが1番幸せなのではないかと考えた。
    キャシーのトミーへの愛があまり良く伝わらなかった。
    臓器提供前に逃げ出さなかったのかということに疑問を持った。
    小さい頃から臓器提供されるというのをすりこまれているので逃げ出すという考えも思いつかないのかなと思った。
    最初、トミーはイカれてる人だと思ったが最後まで読むと1番まともなのはトミーでキャシーが1番狂っていたのではないかと思った。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.09.24

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

本棚の開き方(スマートフォン表示の場合)

画面左上にある「三」ボタンをクリック

サイドメニューが開いたら「(本棚アイコンの絵)」ボタンをクリック

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。