【感想】博士の愛した数式

小川洋子 / 新潮文庫
(2058件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
736
723
440
44
4
  • 哀しくて、切なくて、それでも心温まる一冊

     小川洋子さんの代表作品の一つ。映画化もされた有名な物語ですので、読んだ方も多いのではないでしょうか。

    【内容情報】(「BOOK」データベースより)
    「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていたー記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

     小川洋子さんの小説には、なんらかの障がいを持った人物が主人公として登場することがありますが、この物語も交通事故によって高次脳機能障害になったと思われる数学者が主人公として登場します。

     年老いた義姉が有する屋敷の離れに一人で住む彼は、記憶が80分しかもたないため身の回りの世話をするための家政婦が通っています。しかし、どの家政婦も長続きせず、義姉に次々と交代させられてしまいます。

     新しい家政婦として通うようになった「私」は、博士の数学に関する素晴らしい知識と愛すべき人柄に接していくうちに、息子とともに博士の”友だち”として心を通わせるようになります。

     静かで、穏やかで、少し哀しくて、でも心が温まるという結末が待っていますが、そこに至るまでの過程が丁寧に描写されていて、本を閉じたときに思わずため息が出てしまいました。

     名作はやはり読んだほうが良い。単純なことながら、あらためてそう思いました。皆さんもぜひ。
    続きを読む

    投稿日:2013.12.06

  • 優しさにすっぽりと包まれる

    優しく穏やかに進む物語
    何度読んでも同じように感動してしまう
    読後幸せな気持ちになりたいなら 是非!

    投稿日:2013.11.07

  • 純文学と数学と野球の三角関数

    沢山の伏線で、美しさと発見の喜びと喪失の哀しみの関係を結晶化させた作品。読んだときの自分の立ち位置(立場・経験・関心事等)によって見え方が異なり、何度も繰り返し読んでも、まるで新しい作品に出会ったかのような気持ちになれると思います。

    評者の場合、新しいことを記憶できないことの辛さに寄り添そうと、痴呆に苦しんだ祖母のことを想いながら読みました。

    小川さん、美しい作品をありがとうございます。
    続きを読む

    投稿日:2015.10.04

  • 読み返したくなる

    数式と言う小難しい題材を用いながら、自然に読ませてくれる。素数が好きになる。3人のことが好きになる。特に野球の試合を見に行ったときの博士がいい。読んで損はない作品。

    投稿日:2013.10.09

  • 映画もいいけど、小説もおすすめ!

    静かな感動が、小さな波紋のように押し寄せてくる小品。

    数学に秘められた「詩」や「物語」を、愛しさを込めて語る博士。

    自分の病気を当たり前に受け入れた彼は、限られた記憶の中で、自分の愛する数学とその周辺の人々を、やわらかな包容力で見つめ続けた「静」の人だと思います。
    続きを読む

    投稿日:2013.10.15

  • 小川さん独特の慈悲深い文章がたまらない

     ストーリーそのものに何か大きなトリックやどんでん返しがあるわけでもないのに、その文章の暖かみにグイグイ引き寄せられます。数式ネタは数学者の藤原正彦さん(「若き数学者のアメリカ」は、僕の青春の一冊!)によるものだそうですが、一つ一つのエピソードが光っている。
     色々な描写から、舞台は岡山なのだろうと思わせるところは、地元民にとってはツボです。
     全てが変わった日、1992年9月11日。忘れもしない阪神×ヤクルト戦(甲子園)の、八木の幻のホームラン・・・。 阪神ファンには忘れられない9.11を小説のターニング・ポイントに設定しているところもツボでした。
     読むだけで清涼な気持ちになれた一冊です。
    続きを読む

    投稿日:2013.10.04

Loading...

ブクログレビュー

"powered by"

  • ミルクコーヒー

    ミルクコーヒー

    このレビューはネタバレを含みます

    物語が進んでも博士の病気が治ることはないし、なにか奇跡が起こるわけでもない。反対に博士の記憶はどんどん短くなるし、タイガースは負けが続くようになる。でも、博士が生きた意味、出逢った意味は確かにあったのだと最後まで読んで1番強く感じる

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.14

  • ハルカ

    ハルカ

    出てくる方々が皆、慈愛に溢れている。

    「妊娠カレンダー」や「薬指の標本」では
    登場人物の、背景の仄暗さや得ないの知れなさが
    小川さんの淡々とした筆致が相まって
    ひんやり冷たい印象でしたが、
    本作はとーっても温かい。

    本作に出てくる方たちのように
    見てくれで判断するのではなく、
    相手の心の奥底や、その心を取り囲むものを
    優しく労わる接し方を大切にすれば
    世界はもっと温かくなるね。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.14

  • mos4649cato

    mos4649cato

    事故により記憶が80分しか保てない数学博士の世話をすることになった家政婦が主人公。いくらお世話をしても決して記憶に残らない状況下、どのように接すればいいのか。
    この難しいテーマに対し、何かを求めることもなく、自然体で過ごしていく中で、主人公と息子(ルート)は様々な気づきを得ていく。阪神タイガース、素数をはじめとする数学のエピソードを絡めつつ、人と接することはどういうことかを考えるきっかけを与えてくれた作品。続きを読む

    投稿日:2024.04.12

  • mimikoko2014

    mimikoko2014

    このレビューはネタバレを含みます

    穏やかな時間を感じられる一冊

    あまり、小説は得意ではないけれどタイトルが有名だったので読んでみた
    80分の記憶の仕組みがいまいちピンとこないのは、文章の理解力がないからかな
    80分過ぎると事故のときに戻るイメージなんだろうか

    とはいえ、そんな博士との間にできる友情に、こちらまで穏やかな気持ちになれた
    数学ネタは軽く読み飛ばし

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.04.12

  • Masato

    Masato

    80分で記憶が無くなってしまう博士。
    どんなに楽しいことも、辛いことも忘れてしまう。
    そんな暗闇の中でも、数式を頼りに、ルートと博士の関係を築く。

    投稿日:2024.04.07

  • kayohiro

    kayohiro

    起承転結が鮮やかに、それぞれの人や世の中の真理に対する愛に満ち溢れ、愛の美しさを感じられる小説でした。特に博士の子どもに対する愛の形は個人的に印象深い。

    質問されることを喜び、ただ単に答えを示すだけでなく、質問した相手に誇りを与えることができ、子供は大人よりもずっと難しい問題で悩んでいると信じていた続きを読む

    投稿日:2024.04.06

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。