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高橋克彦 / 文春文庫 (37件のレビュー)
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おびのり
あとがきで川村湊さんが、 岩井出身の“みちのく”作家。 心の中の “みちのく”の情景を描く。 と、上手こと表現している。 直木賞の人生の曖昧となった記憶を物語とした 7編の記憶シリーズ。舞台も東北が多…い。 どの短編も、記憶から欠けた時間を探し始めるところから始まる。そこに記憶を封じなければならなかった事情を思い出していくという構成。 各作品、設定も展開も工夫されて、とても素敵な短編集です。 「緋い記憶」 故郷での緋色の記憶。そこに残る少女との思い出。なぜか、住宅地図には、その家の記録がない。 「ねじれた記憶」 男は母との記憶が残る寂れた温泉宿へ。そこは、母親の自殺した場所。母親とよく似た女性との出会い。自殺前の時間がねじれた記憶。 「言えない記憶」 子供時代の不確かな記憶と鮮明な記憶。 缶蹴りの途中で行方不明のまま亡くなった少女の本当の死因。 「遠い記憶」 忘れていた幼児期の記憶。家だと思っていたのは、父親の愛人の家。忘れてていたのは、鴨居にぶら下がる愛人とそれを見る母親。 「膚の記憶」 食中毒かアレルギーに苦しむ男。 原因を探すうち天然水と思い至る。母親の故郷の水。水源地に沈んでいたものは。 「霧の記憶」 若い日のロンドンでの曖昧となった記憶。小説家となった男の古い作品から、当時行方不明になった女性の痕跡を探す。 「冥い記憶」 一人の少女の死を思い出させるための青森ツアー。 これは、短編だとわかりにくい。結末がよくわからなかった。続きを読む
投稿日:2024.01.31
さと
記憶がテーマとなっている短編集。作者が岩手出身ということで、よく登場する。記憶は時とともに、変化したり、無くなっていったりするものである。出来事は同じでも、その時の感情は人それぞれだ。自分のいいように…記憶していたり、都合よく忘れていたり、、、そういった人間らしい描写が面白かった。 本作は過去の自分に会ったり、あるはずのない家が存在したり、オカルト的な要素もある。しかし、主人公たちは嫌なオジサンが強く、読んだ気分は良くはない続きを読む
投稿日:2022.05.27
しんめん
記憶をテーマにした七篇。 粒揃いな中、表題作とねじれた記憶は舌を巻く巧さ。重厚で好み一直線のホラー作品。
投稿日:2021.12.04
葦湯♨️
特別面白い話があったわけではないけど、作者特有のジメッた空気感がとても好き。 ″ねじれた″と″虜の″が好き。
投稿日:2020.10.10
mach-read
時代的古さを感じるけど、記憶をテーマにした短編で、記憶はセピア色のイメージだから、その古さが味を出していて逆にいい。 伝奇的ミステリーだけど、どれも人の仄暗さを覗き見する気分で、昏い楽しみがある。 共…通して、岩手をテーマにしているので、遠野物語のような趣もまた風情がある。続きを読む
投稿日:2020.09.08
Bookrium
タイトル通り「記憶」がテーマの短編集。 遠い過去の記憶がいつの間にか都合よく書き換えられているのですが、書き換えられるには必ず相応の理由があり、それを思い出す過程で忘れたかった忌々しい真実が明らかにな…るという同じパターンの構成となっている。 今から30年近く前にも書かれた作品であり、その当時に過去を振り返っているので、高度成長期を迎える前の東北地方という日本の原風景的な描写が少しだけ怖い雰囲気ながらどこか懐かしい印象を受けます。 高橋氏といえば東北地方を舞台にした歴史ものか浮世絵シリーズという印象だったので、こんな作品を書いていて、かつそれで直木賞を獲ったなんて意外でした。続きを読む
投稿日:2019.12.01
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