【感想】利休にたずねよ

山本兼一 / PHP文芸文庫
(340件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
106
139
56
12
0
  • 美意識のおかげで生きて出世し、美意識のせいで死ななければならなかった人

    侘茶の創始者としての千利休のイメージしかなければ、本書で描かれる彼は全く別人の顔を見せてくれるでしょう。秀吉が命じた切腹で命を絶つところから始まり、秀吉や妻、古田織部など、身近な人々が見ていた利休を語っていく構成。信長や秀吉の天下取りを後盾し、重宝されながらも、鋭すぎる利休の眼は次第に反発を呼びます。侘び寂びは、金の茶室を作るような派手好みな秀吉とは真逆の思想であり、器の価値をどう決めるかという問いに「それは、わたしが決めることです。わたしの選んだ品に、伝説が生まれます」と答える利休。絶対者としての利休に、秀吉はある種の恐怖を感じたのでしょう。その恐怖は冒頭の切腹へと導かれます。茶の湯が美的な話題だけで済まなかった、もしくは美こそが生き様の中心だった時代の、大胆かつ繊細な人間のこと。(スタッフI)続きを読む

    投稿日:2013.09.20

  • 簡潔な文章

    各章毎が一つの短編のように味わえる。平明で抑揚がきいた文章は、秀逸。文章を勉強している人なんかには、参考になる。とにかく、面白い。利休が何故、死んだかは、歴史の、一つの謎。この作者はこう来たか。他に、何人かの小説家が挑戦している。比べてみるのも楽しみの一つ。さあ、ご賞味あれ。続きを読む

    投稿日:2013.11.17

  • 人としての利休を描いた良作

    利休という権現の塊のようなイメージを崩してくれる本です。一人の人間として、なぜそこまで美を追い求めたのか、次第に明らかになる過去。構成も素晴らしく、読み応えがある一冊です。お吟さま (今 東光著)と合わせて読むと面白いです。続きを読む

    投稿日:2013.10.02

  • 利休が肖像画から飛び出してきた

    タイトルがいい。
    古い肖像画の平坦なイメージしかなかった利休が、人間臭く掘り下げて描かれていてとても読みごたえがありました。時間を遡らせ、登場人物を絞ることで、美を追求する利休と戦国時代を生き抜く利休のポジションに深みが増している様に感じました。
    電子書籍だからこそ出会えた一冊だと思っています。

    続きを読む

    投稿日:2013.11.02

  • 利休という人物

    茶道家のイメージしかない学のない私ですが
    利休ののイメージがすごく変わる作品です。
    短編集の集合体のような文体なので読みやすく
    区切りもつけやすくいいです。
    歴史文学をあまり読まないのでやや難読漢字が多いです。
    一度振り仮名がでて以降に同じ漢字が出ると振り仮名が
    ないことがあるので、読めないことがあり戻ったりするので
    少し読むペースが個人的には落ちますね。
    そういった意味では、漢字の勉強のもなるかも
    続きを読む

    投稿日:2014.01.18

  • 利休に肉薄

    すごくよかったです。お茶の作法等もお勉強され、臨場感ある表現にあたかも利休の茶室の中にいるようでした。あと、少しずつ時代をさかのぼりながら、利休の心の中に入り込む様子が絶妙でした。「そのこころは!」を追求する手法は、私なりに文章を書いたり、人に説明したりする参考にもなりました。茶道具を調べたり、京都の町の名所旧跡を調べるモチベーションにもなりました。文章も大変読みやすかったです。ころあいな竹を見つけて瀟洒な茶杓を作りたくなりました。映画のイメージは私の受けた印象とは違うので、少し時間をおいてから鑑賞したいです。続きを読む

    投稿日:2013.12.31

Loading...

ブクログレビュー

"powered by"

  • ecoute

    ecoute


    くらくらする。宮部みゆきの巻末の解説を読んで、よりわからなくなる。

    妬みや欲は誰しも持っている。それを志にまで昇華させることができると、表面上たおやかで凛とした佇まいになる。
    利休自身がそうであったように、宗恩や高麗の女も、おそらく欲を昇華し無欲にみせることのうまい女だった。だから、互いに惹かれ合い、ただ実の心を見せることはできず離れ離れになってしまう。50いくばくかになって、しっかり恋をする利休や宗恩が美しかった。

    利休が最後に腹を切ったのは、秀吉への抗いではなく、高麗の女を裏切ってしまったあの時に報いるためだったのではないか。利休はなぜ死んだのか。それが、題名の問いなのではないか。血の海にゆったりと白布をかける宗恩の姿が目に浮かんだ。

    私は、死ぬ時に(死ぬ時に限らずとも)他の女のことを少しだって考えていられたら腹が立つ。後悔する気持ちも、過去においてきてほしい。そう思うのは心が女なんだろうか…
    続きを読む

    投稿日:2024.04.12

  • kmsusami

    kmsusami

    「利久にたずねよ」山本兼一著
     秀吉の命で切腹させられた千利休の切腹から19の時の言葉も通じない高麗からさらわれてきた女との恋を時間を遡るような書き綴っている。
     千利休がどれ程の美を追求したか、秀吉が利久の才覚を妬み死に追いやったかを小説にしている。
     千利休は秀吉を品のない人間と認識していたが、「人をとろかす魔力がある」と書いてます。恋も茶道も美学として作者山本兼一は捉えている。
     解説で宮部みゆきは利久に多くの恋をしたが本当に愛したのは宋恩(最後の妻で後妻)と言っているが僕は19の時の高麗の女じゃないかと思う。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • mysterymanbo

    mysterymanbo

    なぜ戦国時代に武力社会と対極にある静の文化、茶の湯がもてはやされたのか、そしてその中心人物とされる利休とは一体何者だったのか?
    作者独自の視点で利休が自害するまでの経緯が解き明かされる意欲作で、第140回直木賞受賞作品。
    本書には工夫がある。まず、秀吉から切腹を命じられる場面からどんどん遡っていく倒叙法を採用している点、従って早くから利休が心底愛した一人の女の存在が明かされるが、そこまで辿り着くまでの長いこと、それだけにその女の登場には、「待ってました!」と膝を打つ。
    また、「侘び寂び」という曖昧模糊とした概念を作者は本書のあらゆる場面で言語化しているが、それが取りも直さず権力者が茶道に傾倒する理由の説明にもなっている趣向。
    そして白眉は、後半の「白い手」以後から始まります。明らかに小説としての面白度合いが違っており、作者自身が書きながら愉しんでいたに違いありません。
    最後に蛇足、本書の解説は宮部みゆき氏ですが、宮部氏が願望を込めて言うように「利休が最も愛した女性は宗恩」ではなく、やはり高麗女でなければなりません。人は、存在しないものに余計に執着し、勝手に心中で美化する生き物だからです。とはいえ、肌身離さず利休が持っていた莫大な価値の高麗女の忘れ形見、緑釉の香合を躊躇なく粉々に砕いた宗恩の気持ちを考えると、「利休を最も愛した女」なら宗恩で間違いないでしょう。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.14

  • 豆読

    豆読

    気付けば3度目の再読。
    利休の内に秘めているものの強さ、愛おしさ、儚さ。
    宗恩の、嫉妬なのか悲しみなのか、怒りなのか。
    何度読んでも、物語が美しいなと感じる。
    利休に何をたずねて、そのこたえは何なのか。毎回謎解きな気分。続きを読む

    投稿日:2024.03.03

  • Anno

    Anno

    己の美学だけで天下一の茶頭へと昇りつめた千利休。しかし、その鋭さ故秀吉に疎まれ、切腹を命じられる。
    肌身離さず持っていた緑釉の香合の秘密とは。研ぎ澄まされた感性と気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、いったいどのようなものだったのか。


    茶道を大成し、茶聖と呼ばれた茶人・千利休と、彼を取り巻く人々について、千利休切腹の当日から19歳の若かりし頃まで、時代を逆行する形で描く時代小説です。
    市川海老蔵さん主演で映画化もされた一作。

    時代をさかのぼって書いていくことにより、後の(読者的には事前に読んだ)行動・言動に背景や伏線が生まれたり、逆により謎を際立たせたりしているのが上手いです。
    ひりつくような美への執着や希求、それに対する周囲の妬みや羨望。どんな逆境でも折れない美学と自尊心。文章からも張り詰めた美しさを感じます。
    タイトルである「利休にたずねよ」。読み終わった後、利休にいったい何をたずねたいかは人によって変わるかと思いますが、私はその美への情熱の根源をたずねてみたい。

    あまり歴史に詳しくはないのですが、それでも読みやすく、一人の伝記やヒューマンドラマ、恋愛小説としても興味深く読めました。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.29

  • あきちさん

    あきちさん

    茶の湯?武士のお気楽な愉しみ?ぐらいのアホな認識しか有りませんでした。ハズカシイ。
    千利休という名前は皆が知っているけど、さてどんな人だったのかと問われると困ってしまう人物。
    最後の日から周りの人の視点で遡り、浮き上がってくる利休。
    作品内でもありましたが、「三毒の焔」を誰よりも熱く持ち、「美」へと昇華させたモノはなにか?
    戦国から安土桃山時代はどうしても武将に目が向いてしまいますが、こんなにも熱くて魅力的な人物の物語を読めて感謝です。
    利休にたずねることを、じっくりと考えてみたいと思います。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.26

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。