【感想】グイン・サーガ1 豹頭の仮面

栗本薫 / ハヤカワ文庫JA
(85件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
42
20
16
1
0
  • 文章表現に対する誇りと責任

    正伝130巻、外伝21巻、しかも未完のまま、作者が逝去。
    はたして読み始めてもよいものか・・・と迷っていた作品。

    実はちょっと違う意味でこの第一巻に関心を持っていた。
    それは、「文学作品と差別表現」という観点から。

    たとえ差別的な表現であっても、それ自体が時代を表し、世界観を表し、
    「文学」の一部であることから、言葉の置き換えは行わないのが一般的である。
    が、本書の場合、「癩病」に関する描写を巡って、ハンセン病患者の団体から抗議があり、改訂版を出したという。

    読んでみると、なるほど、と思う。改訂版なので「癩伯爵」→「黒伯爵」となっているが、
    彼の業病は「空気感染する」ものであり、「その伝染力はきわめて強い」、
    故に狂気じみた道を歩んでいく。

    これは、ハンセン病の症状とは全く異なり、こうした病を「癩病」と言ってしまっては、
    偏見を助長することになるであろう。

    が、「黒伯爵」ヴァーノン公は、恐ろしくも哀しい、本シリーズの冒頭を飾る重要人物。
    あくまでも架空の世界の恐ろしい話として、この部分は外せない。

    栗本薫は改訂についてこのように語る。

    「私が自分の文章表現に対して誇りと責任をもち、無用に人を傷つけることを非とし、
    この場合の私の過ちを認めたからこそこのような徹底した方法を進んでとった」

    私は、作者のこの姿勢に対して好感を持った。
    もし、「癩病」のままだったら、おそらくヴァーノン公が出てくるたびに、
    ハンセン病の患者に対して、どこかやましいものを感じてしまっただろう。
    改訂版は、「現実」ではなく、「グイン・サーガ」の世界。
    すっきりと、世界にひたることができる。
    しかも、電子版。150冊以上の置き場を心配する必要もない。
    未完であるのが残念だが、やはり2巻以降も読んでいこうと思った。
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    投稿日:2014.11.01

  • 日本出版史上最長の物語

    総巻数が150を超える、ギネス級の壮大、長大な物語。作家の急逝により、未完の大作となってしまった。

    モンゴール軍の奇襲により、パロ国は滅亡の危機に。家臣は王家に太古より伝わる物質転送装置で、王太子レムスと双子の姉リンダを転送しようとするが失敗。敵のまっただ中へ送り込まれてしまう。
    そこに突如として豹頭の戦士グインが現われる。

    豹頭の戦士グインを主人公に、130巻分(正伝)の登場人物たちが複雑に絡み合う一大叙事詩であり、ときにグインが20巻近く登場しないことも。ファンタジー、SF、歴史ものの国盗り物語とジャンルを自由に横断し、展開されるドラマティックな出会いと別れ、喜びと悲しみが堪能できる。
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    投稿日:2013.12.27

  • これから「グイン・サーガ」の長い長い物語を体験出来る自分は幸せかな

    作者が亡くなり未完成作品となったが、続編プロジェクトによりこれからも継続することになったそうで、
    何十年もの時を超えてまずは1巻からと読みすすめてまいます。
    世界観や生い立ちなどは簡潔に最小限にまとめられてて、そのおかげでストーリーに集中して没頭出来ます。
    150巻以上?!もあるらしいので、1年で10巻ずつ。読み続けて・・・、10年以上も楽しめそうです
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    投稿日:2015.12.06

  • 愛しい愛しい、もうひとつの世界の入り口

    紙の本で四半世紀かけて1回。電子版でもう一度、全150冊を都合2回読みました。

    気軽に読めるペーパーバックといえばペーパーバックなのですが、これだけのボリュームを持って、この世ならざる世界の物語を書いたのは空前絶後でしょう。これだけの時間付きあえば、パロやケイロニアについて実在の外国以上に詳しくなれますし、グイン、リンダ、イシュト、ナリス、ヴァレリウス、ゴタロやオロにいたるまで……おそらく何千人という登場人物が、現実世界の知人以上に親しい存在に感じられます。

    もし、気に入れば150冊の間楽しめるのですから、とりあえずこの1冊だけでも試してみてはいかがでしょうか? 私は電子書籍化で、この150冊をいつも持って歩けることが一番うれしいです。



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    投稿日:2013.09.25

  • まだグイン・サーガを読んでいない人は幸せである

    これからこの超素敵な物語を新鮮な驚きや興奮を持って長く読めるのだから。
    実際長い長い物語で、手を出すことに躊躇いを感じる人もいると思いますが、いったん読み出したら長さなど気にならなくなります。というか、まだまだこれだけこの物語を楽しめるんだと、うれしく思うに違いありません。
    栗本さんは亡くなられてしまい、物語は未完ですが、グインについての謎は最後の外伝22巻「ヒプノスの回廊」で一応明かされてはいます。好ましい正体ではないと感じる方も多いようですが。
    私は中学2年生の時に、当時24巻まで出ていたこの物語に出会い、それからすでに4半世紀以上、この世界を楽しませてもらいました。現在は続編プロジェクトも進行し、いよいよ本編の続編も始まっているようですので(実はまだ読んでいません)、これからは異伝、みたいな感じで読み続けていこうと思います。ある親子の行く末がとても気になるので。
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    投稿日:2013.12.08

  • 日本を代表するファンタジー小説の傑作

    とにかく圧倒的な世界観。
    この世でいえばニューヨークを思い描くと自由の女神が浮かぶ、たとえればそんな感じみたいなんです、この世界は。
    出てくる国々の情景が地名を目にするだけで思い描ける、映像ではなく文字でこれができるのは凄いことだとおもいます。

    自分は70巻位以降からが特にワクワクさせられたんですが、やっぱり最初の5巻がほんとうに素晴らしいとおもいます。

    敷居の高い本だと思いますが、正伝の5巻までと外伝の1巻だけでも十分に読む価値はあると思いますので気になっている方は是非この6冊だけでも読んでみてはいかがでしょうか。
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    投稿日:2013.09.27

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ブクログレビュー

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  • あしげ

    あしげ

    最初にグインサーガに出会ったのが、1980年、中学生でした。
    ハワードの、コナンの世界が好きだったので、日本のヒロイックファンタジーで注目されていた「グインサーガ」(名前がいいですよね)、文庫本の表紙に惹かれジャケ買い(その当時、そんな言葉はない!)。実は惹かれたのは2巻の「荒野の戦士」なんですけど・・・。
    そこから、約30年、この長い物語を読み続けてきました。「月刊グインサーガ」のときはうれしかったですね。新しいグインが毎月読めたので。
    未完なのは残念ですが、タイムリーにグインサーガに出会えて感謝してます。

    他の作者さんで、書き続いているようですが、やっぱり栗本薫ではないグインは・・・。
    星マイナス1は、未完だから。
    予告通り100巻で終わっておけばなぁ。と思ってしまいます。
    (「ランドック」ってなんだったの。「アウラ」って何だったんだぁ!!)
    続きを読む

    投稿日:2023.03.02

  • ratsamee

    ratsamee

    グインシリーズって1分1秒全てを記録している
    テープレコーダー、ビデオカメラのような
    私たちは常にリンダやグインたちと同じ目線でいられる
    自分が冒険している気分になれる

    投稿日:2022.02.13

  • solala06

    solala06

    気にはなっていた…お恥ずかしながら、やっと拝読いたしました。
    まず、文体がファンタジークソオタクとしてはドツボに好みでした…。
    記憶を失った獣頭人身の屈強な戦士グインと美貌の少年王とその姉が翻弄され絡まる運命の糸…早く続きが読みたい。続きを読む

    投稿日:2021.10.03

  • ショーン

    ショーン

    5/10.
    期待したより面白かった!今まで読んだ昔の本(せめて2000年の前に発刊された本)は大変退屈で、もしかして日本の古い本は読む価値がないとまで思うようになってしまったところでグイン・サーガと出会った。長すぎた文もたくさんあったが、それでも割と想像しやすい描写が多かった。ストリーも面白いし、納得いかないところも少なかったし。良い本だ。続きを読む

    投稿日:2020.09.28

  • 雨のち晴れ

    雨のち晴れ

    勧められて読みました。
    最初はちゃんと頭の中に物語を描きながら読めるかと心配でしたが(出てくる言葉が少々難読なので)次第に映像を観てるかのように読み進められました。リンダとレムスとグインの今後がどうなるのか…かなりの長編みたいですが、少しずつ読んでいきたいと思います。続きを読む

    投稿日:2020.09.10

  • ikuyam

    ikuyam

    もう30年以上前になるが、中学生の頃夢中になって読んでいた。50巻ぐらいまで読んだ記憶があるが、
    だいぶ前に100巻を突破しており、ほぼ記憶に残っていないし、今から読むのはかなり覚悟が必要である。
    者が亡くなった際に未完で終わるのかと残念に思っていたが、複数の小説家が協力して継続している
    ようで是非完結してほしいと思う。置き場所を気にしなくて良い電子書籍で読み直してみたが、最近の
    ファンタジーにないスケールの大きさとグロテスクさが際立っているし、その当時の冒険小説の影響も
    垣間見えやはり面白い。当時ハンセン病に似た表現が問題になり修正が入ったようだが、今はちょっとした
    事でタブーな言葉が多過ぎてテレビも小説も魅力が半減してきていると思う。
    登場人物が多過ぎてなかなか覚えるのが大変ではあるが、それもこの作品の魅力である。
    1巻で亡くなるトーラスのオロも後に伏線があったりするので、そこも長編小説の魅力である。
    今や携帯でも気軽に持ち運べるので、少しずつ読み直してみたいと思う。
    続きを読む

    投稿日:2020.08.30

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