【感想】フランケンシュタイン

メアリー・シェリー, 山本政喜 / グーテンベルク21
(1件のレビュー)

総合評価:

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  • この作品は巨人の苦悩を描いた文学作品である。

    息子が小さい時アインシュタイン博士の写真を見て「フランケンシュタインだ!」と言っていた。私は「フランケンシュタインは怪物だよ」と教えた。
    あぁしかし、フランケンシュタインは若き科学者であった。その若き科学者は無生物に生命を与えることに成功したが生まれた巨人が異様な風貌であったため研究を捨て逃げた。
    残された巨人は森を彷徨いながら人間を観察し言語を習得し人間同士の情愛を知る。
    私達の知っている怪物とは違う心優しい姿がそこにあった。
    特に森の中で拾った本(ウェルテルの悩みであった)を読んで人間愛を感じるなど感動的なエピソードが続く。
    この作品はホラーやSFではなく人間から阻害された巨人の苦悩を描いた文学作品である。
    ヨーロッパの田舎はヘッセの世界のように美しく、庶民の暮らしはトルストイの世界のように純朴で、巨人の覚醒の過程はアルジャーノンのように切ない。
    巨人は覚醒したが故に自分の醜悪な姿と孤独を認識した。生まれた時から巨人だったので子供時代の思い出すらない究極の孤独であった。無知な時は苦しくても死の概念が無かっただけ幸せでだった。
    そんな心優しい巨人を人間は誰もかれも怖がり人命救助さえも誤解して迫害しようとする。
    中盤で語られる巨人の身の上話と深い心理描写がこの作品の中枢であり映画では描写しきれていない美点である。
    終盤は悲しくて何度も泣きそうになって休みながら何とか読了した。それにしても長い間の勘違いがここに修正されたことは喜ばしいことである。
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    投稿日:2017.12.12

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