【感想】近頃の若者はなぜダメなのか~携帯世代と「新村社会」~

原田曜平 / 光文社新書
(44件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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11
3
1

ブクログレビュー

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  • kofsan

    kofsan

    タイトルと内容は風向きが異なる
    若い頃からケータイ電話でつながる生活をしている結果、若者の世界は村のようなつながりの多い生活になり、互いに気を使う生活に慣れてきている。
    その功罪として、広いネットワークを生かした活躍をするものもいれば、逆に、既視感のために、広い世界に出ず、地元の仲良し空間に引きこもるものも出てきている、という分析。続きを読む

    投稿日:2019.05.21

  • キミドリ

    キミドリ

     渋谷のセンター街、女子高生が何人か行動に座り込み、めいめいケータイ片手にマスカラ塗にいそしんでいる。あたりの迷惑も顧みず、大声で喋り続ける彼女ら。
     だが、メンバーのうちの一人がしゃべり始めると、ケータイやマスカラをいじる手はそのままに、ほかのメンバーたちは黙って聞いている、と仲間内で高度に「空気を読んだ」コミュニケーションをとっている。
     
     近ごろの若者(10代後半-20代前半)のコミュニケーションの形態は、30代と明らかに違っている。
     コミュニケーション能力が向上しお互いに高度に「空気を読」みあっている。

     彼らの特徴は「ケータイ」依存。PCではなく、ケータイであることがキモだ。
     これはは彼らが「情報取得<人間関係」となっている証左だ。
     そして彼らはケータイを駆使して「広い交友関係」を維持している。
     コミュニティも、SNS,HP,ブログ、(SNS付の)ゲームと、多種にわたり、「友達」の人数は数多く、その親密度にも濃淡がある。だが、この種のコミュニティーには継続性、義務制が生じている。
     さまざまなコミュニティでつながった「新村社会」。
     だが、その中ではいくつかのルールがある。
     いわく、「弱っている人を見てたら励ます」「正しさよりも空気」「愛想笑いを絶やさない」「コンプレックスを隠す」などなど。
     電子世界上に広がった、相互監視社会はあるいみ非常にムラ的な日本の社会ともいえる。
     キャラ立ちをして「プリズンブレイク」をはかるものもいるが、たいていはその不文律に縛られ、委縮するものも多い。

     「半径5キロ」以内で事足りる、あるいは事足らせる生活圏の狭い若者も多い。
     閉塞感を募らせる時代に生まれ落ちた彼らは、新しいことをする活力よりは、将来に対する漠然とした不安感から、保守と諦観に身を固めている。
     専業主婦を口にする女性も多いが多くは、「しんからなりたい」というよりも、上の世代の仕事と家庭の両立の苦汁を疑似体験した結果である。
     そんな彼らのアイドルは「益若つばさ」である。
     成功した芸能人にもかかわらず六本木といったステイタスのある地区ではなく、下町である足立区に住み続け、発言も「いつまで仕事があるかわからない」「金銭感覚を狂わせたくない」など将来に対する漠然とした不安に根差したものが多い。

     一方で、多様なネットワークを生かし、性別、学校、地域、家庭環境に違いを超えて、「つながる」人種も現れてきている。
     彼らは学校内では息苦しさを感じ、ネットワークを通じてしりあった友達とつるんで夜な夜な遊んだりし、オタクとギャルがつるむ例も珍しくなくなってきている。

     ある有名私立高校に通う男子生徒は、地元は偏差値が高くない地域である。だが、彼は上流(学校の友達)との交流で、勉強やバラエティに富んだネットワークに刺激を受けつつも、視野も行動範囲も狭いがピュアで勉強でなくファッションに時間をかける垢抜けた地元(下流)の友達との付き合いもバランスよくこなしている。

     この本も「超ネットワーカー」のひとりである男子大学生の協力も大きかった。彼は企業のオーダーに応じた学生を紹介し、学生も何かあると彼を頼るといった、世代、地域、国を超えてネットワークを使いこなしている。

     以上から見えてくるのは、現代の若者は「ネットワーク格差」にさらされている。
     そこで臆してしまうと狭いネットワークの中に閉じこもることになり、逆に活用できると世代、地域、国を超えて活躍することになる。
     それを可能にしているのは、ケータイを主役とする情報インフラの発達であり、それらはまた「高度に空気を読む」能力を若者に要求する。
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    投稿日:2018.12.22

  • rashita

    rashita

    若者論といえば、的存在になりつつある原田氏の著作。情報病という本で原田氏の存在を知り、チェックしていたので著者名一本買う。

    この本を読んで
    「近頃の若い者はダメだ」
    とは言えないあたりに、著者の皮肉が効いている。

    携帯世代(ケータイネイティブ)と新村社会の関係性。新村社会の性質とそこに中に存在することの意味。
    これらがメインのテーマである。

    実際の若者の言葉から、その関係性が部外者にもおぼろげにつかめるあたりは、力作と言えるのではないか。

    構成としては、まずネガティブな性質を洗い出しつつも、後半はポジティブな可能性と、そこに潜む問題を明らかにしていく。

    はっきりと言えるのは、人間関係の質的な転換がもうすでに起きているということだ。それは若者でなくてもTwitterをやっている人間ならば実感できるだろう。もちろん携帯でつながっている世代とTwitterをやっている世代は重ならない部分が多いかも知れない。しかし、今までの日本社会の人間関係が崩れる変わりに、新しい人間関係が生まれていることは確かだ。

    そこに潜む問題とは、それを有効に活用して個人の力を伸ばしていくような人間と、自分の好みの情報だけ寄り集め、タコツボ化していく人間との格差の問題であろう。

    ネットワークの格差は、旧来の環境による格差とは質的に異なるものだ。お金持ちであるからどう、といった事はあまり関係が無くなってきている。コミュニケーション能力と前向きな意志、そしてネットワークを維持拡大していくための労力を払える人間は、今までの「若者」が手にすることができなかった力を持つことができる。

    そういった世代に向けて私たちがどのようなメッセージを投げかけていくことができるのか。
    「近頃の大人ななぜダメなのか」といった電子書籍が発売されないように、そのメッセージについて真剣に考えてみるべきかも知れない。
    続きを読む

    投稿日:2018.10.09

  • もも

    もも

    若者がダメだとは言っていない。ダメな状況を作り出しているこの社会への一つの警告かもしれないと思う。心ある若者はいつだって苦しい。携帯のない世界があたりまえだった世代から、生まれたときにはすでに携帯があった世代への移行は試行錯誤だ。1000人の若者の話を聞いていることがこの本の強みである。続きを読む

    投稿日:2016.05.15

  • taka0726

    taka0726

    47都道府県1000人調査から見えてきたのは、つながりすぎた若者のネットワーク社会だった! 劇的に変化した彼らの生活と人間関係を明らかにする。

    投稿日:2016.03.10

  • おこめ

    おこめ

     携帯世代の私も携帯がもたらす村社会感を聞き知っていて、それが面倒臭すぎて当時流行ったHPもMixiもSNSも、リアルな友達に向けては一つもできなかった。
     携帯世代でもそうなのだから、今のスマホ世代はいったいどうなっているのだろう…と思うと、しんどいな。ただ、本書は悪い面ばかりではなく、良い面も書かれているところがいい。当然若者も捨てたものじゃないのだ。続きを読む

    投稿日:2015.11.28

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