【感想】陰陽師 醍醐ノ巻

夢枕獏 / 文春文庫
(41件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
12
14
6
0
0
  • どの物語もおもしろうて

    陰陽師のシリーズで、相も変わらず陰陽師の安倍晴明と源博正の話です。
    二人が関わる様々な人の念とそれによって興るモノノケがいかに解消されるのか?
    読み始めるとあっという間に物語の世界に呑み込まれしまうのです。誠に呪は怖い…
    このシリーズに必ず出てくるシーンが二人で酒を飲む情景で、読んでて自分もついつい呑みたくなるのです。
    何冊かにしか感想を書いていませんが全巻お勧めです。平安の世界を楽しみましょう。
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    投稿日:2015.03.04

ブクログレビュー

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  • G. S.

    G. S.

    いやぁもう絶対付き合ってるじゃんこれ と何度つぶやいてしまったか。「ゆこう」「ゆこう」の予定調和が相変わらず(久々に読んだけれど)楽しい。シリーズの他の作品が好みならば絶対に外れない。
    本作に限った感想としては、晴明の兄弟弟子にあたる賀茂保憲が「身内の絡む問題」を晴明に依頼しにきたシーンで、彼らが陰陽師と出家者(宗教者)のスタンスの差異を語るところが印象に残った。続きを読む

    投稿日:2022.08.19

  • 夕芽

    夕芽

    このレビューはネタバレを含みます

    『陰陽師 醍醐ノ巻』 夢枕獏 (文春文庫)


    陰陽師シリーズ第11弾。


    「百足小僧」で、えいやっ!と宙に身を躍らせ、地に降り立ちざまに、ぱん!と呪符を妖しの者に張り付ける。
    なんともかっこいい晴明が見れて、いいぞいいぞと一人盛り上がった。

    で、その「百足小僧」ですが。
    藤原実貞という人が実にお気の毒なことになっていた。

    百足の精気を口から注がれて百足になってしまうという。
    人間の体のまま足がたくさん生えて、全裸でかさかさと床下を這う藤原実貞。

    妖物に取り憑かれる系の話の中でもこのダントツに悲惨な見た目は、平将門の事件のときの平貞盛に次ぐ気の毒さで、ちょっと笑える。

    実貞の屋敷の家人たちも、本来ならば退治をしたいところが我が主となればそうもできず、晴明が来るまで、実貞さん全裸のまま遠巻きに放っておかれる。(笑)

    気の毒なんだけどやっぱり何だか笑える話だった。


    博雅の笛にまつわる物語は多いが、「笛吹き童子」は、これまでになく博雅のコアな部分に踏み込んでいて、なかなか読み応えがあった。

    ある日、博雅の笛に勝るとも劣らない笛を吹く童子が現れた。
    その音色を聴いた博雅が、自分よりも上手いと思い、悩む。

    実はその童子は、博雅の笛の音に感応し、博雅の吹いたとおりに笛を吹いていた音声(おんじょう)菩薩であったのだが、もちろん博雅にわかるはずもない。

    知っていたのは、晴明、蝉丸、葉二の元の持ち主である朱雀門の鬼、蘆屋道満たちで、博雅が自分でそのことに気付くまで、何も言わず皆で温かく見守るという、とてもいい話だ。
    みんなに愛されている博雅にほっこりする。


    博雅の優しさと無私の心は、「夜光杯の女」では、杯に憑いていた楊貴妃と阿倍仲麻呂を昇天させたりもしてしまう。
    今回も大活躍の博雅なのである。


    「犬聖(いぬひじり)」も、とてもよかった。

    賀茂保憲の兄、心覚上人の話である。
    心覚は、元は保憲や晴明と同じく陰陽師であったのだが、あるとき道心をおこして僧となる。

    この心覚、あまりにも真面目でありすぎたために、様々な騒ぎを起こしていた。
    騒ぎの一つを収めるために、保憲が晴明に仕事を頼みに来るのだが、そこでの二人の会話には、いつもの晴明×博雅の会話とはまた違ったプロ同士の研ぎ澄まされた空気がびんびん感じられて、鳥肌が立った。

    陰陽師は呪(しゅ)を唱えるが祈るということはしない。
    陰陽の道をゆくには“もの”や天地の理を見抜く才が必要であり、仏の道に必要なのは才よりも信心なのだと。
    つまり、心覚には保憲や晴明に見える“もの”が見えなかった。
    そしてそれを一番よく分かっていたのは、心覚自身だったのだ。

    「晴明よ、我らに必要な才は、かなしいかな、信の才ではなく、疑の才じゃ。まずは、ものの表を疑い、裏を知ろうとする才じゃ」

    「はい……」

    疑の才。
    まず疑うこと。裏を暴くこと。

    保憲も晴明も、ときにはそんな才を悲しく思うことがあるのだろうか。
    保憲が信心にあふれた心覚を大切に思う気持ちと、晴明が博雅と酒を酌み交わす時間を大切に思う気持ちは、きっと同じものなんだろうな。

    「おれは、聖にはなれぬよ、博雅……」

    そうつぶやく晴明に、ちょっぴりうるっときてしまった。


    ところで、作者の夢枕獏さんは、還暦を過ぎておられるそうだ。
    晴明と博雅が酒を飲むシーンで交わされる会話の中に、時折、作者が垣間見えることがあって面白い。

    「不言中納言(いわずのちゅうなごん)」にて。

    「あれもやろう、これもせねばならぬと思うていたのに、そのどれも、ほとんど何もできぬうちに秋も過ぎ、もう、今年も終わろうとしているではないか。人は、こうやって老い、死んでゆくものなのかなあ、晴明よ」

    博雅、枯れすぎ(笑)
    いや私もほんとこのごろそう思いますけどね。


    会話といえばこれも。
    ぬしは名を残したいか、富が欲しいかと、博雅が晴明に問う。

    「おれはただ、おれの如くに好きなように生きるだけだからな。名も富も、その後に勝手についてくるだけのものだ。淡い夢の如きものさ。ついてくるならくるで、こぬならこぬで、いずれでもよいのだ……」

    これのすごいところは、富も名声もいらない、と言ってはいないところだ。
    いらない、と言ってしまったら、それはもう意識しているということだから。

    この晴明の真っ白な感じがとても好きだ。
    恨みや妬みや憎しみや呪いや、様々な負のものを呑み込んでなお、真っ白でいられる。
    すごい。


    「風は見えぬ
    しかし、草や葉が揺れるのを見て、人は風を見る
    刻(とき)は見えぬ
    人は、ゆくものを見て、刻を見る」
         

    晴明が発する言葉の数々は、何だか妙に今の自分にしっくりと馴染んで、優しく包まれているような気持ちになる。
    今回は、博雅よりも晴明がよかったなぁ。

    事象の中に原理を見る男、安倍晴明。

    かっこいい。 

    レビューの続きを読む

    投稿日:2022.08.09

  • 三田主水

    三田主水

    http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2011/06/post-492c.html

    投稿日:2020.06.13

  • naofumi_t

    naofumi_t

    妖物の元は人の心であるよに思う。

    陰陽師を読むとその想いを新たにする。

    その心の在り様で、妖物は神にも獣にも鬼にもなり得よう。

    投稿日:2020.04.16

  • solala06

    solala06

    「笛吹き童子」結局博雅・・・お前がナンバーワンだ・・・。
    「はるかなるもろこしまで」陰陽師シリーズにしては優しめノスタルジックな話だな・・・。
    「百足小僧」式神くれくれおじさんの子飼い登場の巻き。
    きがかり道人」こばなしぽくて好きだ。
    「夜光杯の女」楊貴妃に玄宗皇帝に阿倍仲麻呂・・・うーん中国古典浪漫。でも結局お前がナンバーワンだ博雅、という陰陽師クォリティ。
    「いたがり坊主」この恨み晴らさでおくべきか、という・・・。
    「犬聖」トラブルメーカー保憲殿、兄貴もトラブルメーカーだったでござるの巻。
    「白蛇伝」珍しくラブストーリーやん??
    「不言中納言」小さいもののけが大きなもののけに化けて人間を襲うのは定番。
    続きを読む

    投稿日:2019.06.08

  • akizm1215

    akizm1215

    短編9本。
    最近蝉丸の登場回数が増えたような気がします。
    純粋さゆえに物事が起きる「笛吹童子」など、博雅の天然炸裂!
    そりゃ清明の口元も緩むわけだで、あっという間に読了しましたとさ。

    投稿日:2018.02.05

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