私の男

桜庭一樹 / 文春文庫
(527件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
129
175
127
34
10
  • 嫌いではないが吸った気もしない。葉巻の様な物語。

    結末の曖昧な物語は葉巻に似ていると感じました。
    肺に入れずに味と香りだけを愉しむんだと言われても、煙草との根本的な愉しみ方の違いに戸惑うばかり。
    それ自体は嫌なものでもないのだけれど、煙草吸いには芯の所で相容れない、満足できない、そんな感覚。
    グロテスクだけど純粋な性愛、現在から過去へと遡っていく形式、秘められた謎。
    綺麗な文体とも相まって先へ先へと読ませてくれたのですが、やはり人が一般的な概念から道を外すにはそれなりの理由、つまり結論が欲しくなってしまう。
    嫌いではないが吸った気もしない。
    そんな感じの物語でした。
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    投稿日:2014.08.28

  • 「血」のつながりについて考えさせられる1冊

    このタイトルの気恥ずかしいまでのストレートさで、選ぶのをためらっていました。

    でも、その解釈は、間違いでした。

    「私の男」というタイトルが表しているのは、相手に対する所有としての表現ではありません

    複雑な状況から表される、とりわけ、血のつながりが関係する表現だと、感じました。


    読み始めてみると、時間を遡りながらストーリーが展開されていくため、そこ(ラストであり最初に辿り着く過程を愉しみながら読めます。

    主な舞台は、北海道の紋別で、海に関する表現が頻繁に出てくるのですが、これだけ不気味な表現がよくできるものだな、と作者の筆力に感心するほどです。

    でも、読後感としては、悪くなく、血のつながりがどういうものかを、改めて考えさせられました。

    そして、家族がいて、当然という意識を持っている人には、この話を完全に理解するのは難しいかもしれません。

    私も完全には理解できなかった一人です。
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    投稿日:2014.07.05

  • 人間の業と性の奥深さを痛感させられる作品。再読してこそわかる深い味わい

    この小説は、40年以上もの読書歴の中でもひときわ衝撃的ものだった。その構成法、扱われているテーマ、そして登場人物。汲めどもつきない深いものだった。
    まず、その構成は斬新だ。現在から過去へ15年間(ヒロインは24才から9才へ)遡る。主人公二人はある事情から逃避生活を送る。現在だけでは二人の関係、意識そして行動は、常識では疑問符のつく事ばかり。しかし、章を一つ一つ進める(時間が過去にもどっていく)ことにより、そうした疑問が解き明かされ得心させられる。
    また、そのテーマもかなりショッキングだ。人間の業と性の奥深さを痛感させられる。大人の男と少女の、しかも養父と養女の禁断の関係。それは濃密で社会通念上許されざるものだ。登場人物いわく「獣の行為」だ。
    しかし、それもこの男の少年時代の過酷な体験による愛の渇望感。そして少女の身に降りかかった自然の猛威による想像を絶する喪失感。このお互いの心にポッカリと空いた空洞は、形のない精神的なものだけではだめで、互いに確実に触りあえる肉体でしか埋められないほど深いものだったのだろう。
    できるだけ早く映像化されたものが見たい。モスクワ国際映画祭で最優秀作品賞をとったとのことだが、この衝撃的な小説がど
    う脚本化され、北海道のあの冬の情景のもとどう映像化されたのか、とても興味深く楽しみだ。
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    投稿日:2014.09.06

  • 現代のタブーを描いた作品

    時系列がうまく書かれていて、舞台の情景も頭に浮かびやすい作品です。
    でも、内容はかなり重いので読破するのに気力を使います。

    それは、やはり現代のタブーを描いているから。
    フィクションだからいいとかは通用しない内容です。
    特に女性の方は不快感を感じる人も多いと思いますが、
    本は本、現実はまた違うと線引きのできる方にはオススメします。
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    投稿日:2014.09.12

  • 道ならぬ絆

    奥尻の津波で家族を亡くし、9歳で独りぼっちになった「花」。彼女を引き取り養父となったのは、淳悟という遠い親戚の25歳の青年だった。
    花の結婚から始まり、津波で引き取られ親子になるまで、年月を遡って描かれている。
    花と淳悟には沢山の秘密がある。その秘密を共有することによって、絆が強く強く結ばれていく。
    花は津波で家族を失い、淳悟は父親を海で、母親を病気で亡くしている。そういう欠損家族だった者同志が、お互いを守りあい、お互いだけを必要としていく。それは親子という道を踏み外すものだとしても。
    単なるアダルトチルドレンのお話と片づけられるのかもしれないけれど、絆を切望する気持ちはとてもわかる。
    守られたい。安心できる場所・人が欲しい。
    きっと、それは誰だって同じ。
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    投稿日:2014.09.19

  • 父と娘だから愛し合った

    奥尻島を中心とする北海道南西沖地震によって、めぐり合った父淳悟・と娘・花(当時小学生)が生活の中で、お互いの存在を必要なものと感じ、恋愛感情を抱き男と女の関係になっていく。花はその事実を知った世話役の町の有力者を死に至らしめ、二人は東京に逃げていく。そして、そこで父淳悟が新たな殺人を犯す。
    ストーリは花の結婚から始まり、出会いの章で終わるという、時系列を逆に描かれている。また、各章が登場人物のそれぞれの主観で描くような文体である。
    内容は父親による性的虐待を描いたものと言えるかもしれないが、相互の恋愛感情を考えると複雑な感情がそこに存在するのであろう。なぜ殺人で捕まらないのか?どうして証拠となるカメラをもっていたのか?などとなぞの部分は多いが、推理小説ではないので、この程度で良いのかもしれない。このどろどろとした人間関係を映画化できたと感心する。ただし、実際に映画を見たが、いたるところ原本と異なる。映画化に関しては賛否が分かれるところだろう。
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    投稿日:2014.07.13

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ブクログレビュー

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  • あとむ

    あとむ

    正当化してる感じとか色々と胸くそ悪かった。苦手なジャンルではあるけど、小説として読みはまったし、こういう人たちもいるっていう、勉強になりました。

    投稿日:2021.05.05

  • トロ

    トロ

    心して読まないと、重たい内容に押しつぶされそうになる。
    ザワザワと落ち着かない心情になりながら、それでも途中で読むのをやめる気にはならなかった。
    読み進めるうちに、次第に明かされていくそれぞれの生い立ちに思いを馳せ、淳悟の語られない心の中を知りたくてしょうがなくなる。
    最後まで読んで登場人物のことをひと通り理解した上で、もう一度最初から読み直したい。
    そうすれば、また何か違ったものが見えてきそうな気がする。
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    投稿日:2021.04.11

  • e5532

    e5532

    難しい事はよく分からないけど、とにかく話の構成が素晴らしくて、引き込まれてる自分が気持ちいい作品でした。
    ただし…
    内容はかなりグロテスクですが…

    「わたし、でも、自立なんてしたくないよ、って思うこともある。もっと、誰かとずっといっしょに、どうしょうもない生き方がしたいって……」
    こーゆー人のお話しですね。
    俗に言う良い事と悪い事の線引きをする人と、
    その線の引き方がわからない人。
    私は後者でありたい。
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    投稿日:2021.03.16

  • mmitomi666

    mmitomi666

    第138回直木賞受賞作。

    私の男であり、私の養父である、淳悟。
    娘・花が9歳の時、25歳だった淳悟に引き取られた。
    15年という時が経ち、花は結婚する事になった。
    ようやく、淳悟の元を離れる。離れたくないが、離れたい。
    誰にも言えない秘密を共有する2人は、離れても同じ「何か」を持ち続ける。
    淳悟と花を繋ぐものとは。。。

    ねっとり、である。
    本編全体に漂う、得体の知れない感覚だろうか。
    あと、寒い。北の大地の物語という事もあるが、何か寒々しい。
    ほのぼのとした描写もあるはずなのだが、
    どういうわけか「踏み外したら終わり」という、危なっかしい力を持つ小説である。

    簡単に書いてしまえば“近親相姦”の話だ。
    謎っぽい謎といえば、血縁の部分と淳悟の「お…」で始まる言葉の意味。
    それと彼ら親子が上京した理由か。
    その理由も後半で(ある程度予想できた形で)展開される。
    土地の実力者である大塩さんを、直接ではないものの殺めてしまった花。
    何故そんな事をしたのか。それは彼が、親子の絆を断ち切ろうとしたからに他ならない。
    一般的には「反道徳的」と思われる、その絆。
    これを良しとするかどうかで、この小説に対する評価も分かれる気がする。

    個人的には、あまり肯定的になれなかった。
    もっと有り体に言えば、「気持ち悪い」と。

    恐らく、花に対する淳悟の気持ちというものが一切書かれていないからではないだろうか。
    所々に「狂わされた」等と発言する部分もあるが、その程度である。
    淳悟は、娘に「母親」をも求めていたのだが、その理由も想像する他ない。
    (ここで『これは“花の実の母”への気持ちなんじゃなかろうか』と邪推したりもした)
    ただ、どうしてもそこに共感出来ない為、やはり気持ち悪さに繋がってしまったのだが。

    それと、やっぱり女性目線というか女性が共感するんだろうな、という感覚も持った。
    それは淳悟の外見の描写である。
    「髪が長く、スラリとしていて、寂しげだが社会に馴染み切れていない。
     でも純粋に自分にだけ愛情を注いでくれる」
    という存在。
    実在するかどうかはさておき、女性が望む“いたら嬉しい男性像”なんじゃなかろうか。
    小説なのだから当たり前だが、ちょっと都合が良過ぎるような気がする。

    読み応えはあった。が、やや人を選ぶ作品なんじゃないかと感じる。


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    投稿日:2021.03.14

  • くち子

    くち子

    泥を飲んだような気持ちになった。なんだろう、この読みやすいのに重い、気持ち悪いのに惹かれる、忘れようとしても忘れられないお話。

    最後の章を読み終わったときに最初の章に戻って来て、花が淳吾と同じ道を歩む様を示唆するような描写を読み返すと、もう淳吾はどこにもいないんだっていうことがわかって胸がギュってなっちゃった。章ごとに逆行していく手法がすごい。最後の章では「ずっとこのひとの隣にいるんだと思った」って花は感じて本は終わるのに、最初にされた未来の話では、それが実現しないってこと、読んでる人間はわかっているの。ほんと、すごい。

    倫理観とかほぼない。世間というものや良識の擬人化である(って勝手に思ってる)大塩さんがああ言うふうになるんだから。小町さんは俗世の擬人化。
    大塩さんや小町さんはかわいそうだが、それでも、読んでよかった。
    それにしても湿ったにおいの描写がすごいなあ。汗のしみた布団、湿気を多く含んだ冬の空気、指にまとわりつく女の気配、雨のにおいのする男。
    正直、めちゃ暗い話だが嫌な気持ちになるわけじゃなくて、やりきれん寂しさが残るようなお話だった。
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    投稿日:2021.03.09

  • さばのみそに

    さばのみそに

    暗い、気持ち悪い、そんな感情を抱きつつも、花と〝お父さん〟の関係には目を奪われる。
    簡単に言えば共依存の関係なのだろうけど、2人の間にはもっと黒くドロドロとし、そして北の海のような冷たさが感じられる。
    また忘れた頃にもう一度読みたい。
    続きを読む

    投稿日:2021.02.26

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