【感想】私の男

桜庭一樹 / 文春文庫
(586件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
142
197
139
40
12
  • 嫌いではないが吸った気もしない。葉巻の様な物語。

    結末の曖昧な物語は葉巻に似ていると感じました。
    肺に入れずに味と香りだけを愉しむんだと言われても、煙草との根本的な愉しみ方の違いに戸惑うばかり。
    それ自体は嫌なものでもないのだけれど、煙草吸いには芯の所で相容れない、満足できない、そんな感覚。
    グロテスクだけど純粋な性愛、現在から過去へと遡っていく形式、秘められた謎。
    綺麗な文体とも相まって先へ先へと読ませてくれたのですが、やはり人が一般的な概念から道を外すにはそれなりの理由、つまり結論が欲しくなってしまう。
    嫌いではないが吸った気もしない。
    そんな感じの物語でした。
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    投稿日:2014.08.28

  • 「血」のつながりについて考えさせられる1冊

    このタイトルの気恥ずかしいまでのストレートさで、選ぶのをためらっていました。

    でも、その解釈は、間違いでした。

    「私の男」というタイトルが表しているのは、相手に対する所有としての表現ではありません

    複雑な状況から表される、とりわけ、血のつながりが関係する表現だと、感じました。


    読み始めてみると、時間を遡りながらストーリーが展開されていくため、そこ(ラストであり最初に辿り着く過程を愉しみながら読めます。

    主な舞台は、北海道の紋別で、海に関する表現が頻繁に出てくるのですが、これだけ不気味な表現がよくできるものだな、と作者の筆力に感心するほどです。

    でも、読後感としては、悪くなく、血のつながりがどういうものかを、改めて考えさせられました。

    そして、家族がいて、当然という意識を持っている人には、この話を完全に理解するのは難しいかもしれません。

    私も完全には理解できなかった一人です。
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    投稿日:2014.07.05

  • 人間の業と性の奥深さを痛感させられる作品。再読してこそわかる深い味わい

    この小説は、40年以上もの読書歴の中でもひときわ衝撃的ものだった。その構成法、扱われているテーマ、そして登場人物。汲めどもつきない深いものだった。
    まず、その構成は斬新だ。現在から過去へ15年間(ヒロインは24才から9才へ)遡る。主人公二人はある事情から逃避生活を送る。現在だけでは二人の関係、意識そして行動は、常識では疑問符のつく事ばかり。しかし、章を一つ一つ進める(時間が過去にもどっていく)ことにより、そうした疑問が解き明かされ得心させられる。
    また、そのテーマもかなりショッキングだ。人間の業と性の奥深さを痛感させられる。大人の男と少女の、しかも養父と養女の禁断の関係。それは濃密で社会通念上許されざるものだ。登場人物いわく「獣の行為」だ。
    しかし、それもこの男の少年時代の過酷な体験による愛の渇望感。そして少女の身に降りかかった自然の猛威による想像を絶する喪失感。このお互いの心にポッカリと空いた空洞は、形のない精神的なものだけではだめで、互いに確実に触りあえる肉体でしか埋められないほど深いものだったのだろう。
    できるだけ早く映像化されたものが見たい。モスクワ国際映画祭で最優秀作品賞をとったとのことだが、この衝撃的な小説がど
    う脚本化され、北海道のあの冬の情景のもとどう映像化されたのか、とても興味深く楽しみだ。
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    投稿日:2014.09.06

  • 現代のタブーを描いた作品

    時系列がうまく書かれていて、舞台の情景も頭に浮かびやすい作品です。
    でも、内容はかなり重いので読破するのに気力を使います。

    それは、やはり現代のタブーを描いているから。
    フィクションだからいいとかは通用しない内容です。
    特に女性の方は不快感を感じる人も多いと思いますが、
    本は本、現実はまた違うと線引きのできる方にはオススメします。
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    投稿日:2014.09.12

  • 道ならぬ絆

    奥尻の津波で家族を亡くし、9歳で独りぼっちになった「花」。彼女を引き取り養父となったのは、淳悟という遠い親戚の25歳の青年だった。
    花の結婚から始まり、津波で引き取られ親子になるまで、年月を遡って描かれている。
    花と淳悟には沢山の秘密がある。その秘密を共有することによって、絆が強く強く結ばれていく。
    花は津波で家族を失い、淳悟は父親を海で、母親を病気で亡くしている。そういう欠損家族だった者同志が、お互いを守りあい、お互いだけを必要としていく。それは親子という道を踏み外すものだとしても。
    単なるアダルトチルドレンのお話と片づけられるのかもしれないけれど、絆を切望する気持ちはとてもわかる。
    守られたい。安心できる場所・人が欲しい。
    きっと、それは誰だって同じ。
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    投稿日:2014.09.19

  • 父と娘だから愛し合った

    奥尻島を中心とする北海道南西沖地震によって、めぐり合った父淳悟・と娘・花(当時小学生)が生活の中で、お互いの存在を必要なものと感じ、恋愛感情を抱き男と女の関係になっていく。花はその事実を知った世話役の町の有力者を死に至らしめ、二人は東京に逃げていく。そして、そこで父淳悟が新たな殺人を犯す。
    ストーリは花の結婚から始まり、出会いの章で終わるという、時系列を逆に描かれている。また、各章が登場人物のそれぞれの主観で描くような文体である。
    内容は父親による性的虐待を描いたものと言えるかもしれないが、相互の恋愛感情を考えると複雑な感情がそこに存在するのであろう。なぜ殺人で捕まらないのか?どうして証拠となるカメラをもっていたのか?などとなぞの部分は多いが、推理小説ではないので、この程度で良いのかもしれない。このどろどろとした人間関係を映画化できたと感心する。ただし、実際に映画を見たが、いたるところ原本と異なる。映画化に関しては賛否が分かれるところだろう。
    続きを読む

    投稿日:2014.07.13

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ブクログレビュー

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  • たこやき

    たこやき

    すごかった。何かが違う何かが漂ってるような雰囲気が終始あった気がする。こんな愛の形が存在するのか、そう思わせてくれた小説だった。ずっと暗い雰囲気で私の好きなタイプの本だった。

    投稿日:2024.03.23

  • stardancer

    stardancer

    直木賞受賞作なので読んでみました。とても面白く桜庭さんの実力の確かさを感じますが、内容的には結構すごい事だと思います。そう、嫌悪感を感じてもおかしくない内容なのに文章の美しさに捕らわれてしまう。いっきに読んでしまいます。続きを読む

    投稿日:2024.03.15

  • ぐら

    ぐら

    なかなか普段読まないタイプの小説。あんまり主人公に共感できなくて、深くこの世界に没入することはできなかった。
    でも静かに謎が解けていく感覚、気持ちがキュッとなるところがあって、次の展開が気になった。なかなか読む手を止められず読み続けたら、1日で読み終わった。没入はできなかったけど、それくらい夢中にさせられた。続きを読む

    投稿日:2024.02.25

  • 午年生まれのいちばん目

    午年生まれのいちばん目

    「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」に魅了されて、読みました。
    時間を遡りながら、過去が赤裸々に明かされる展開が面白く、花の狂気とも云える愛とその理由に目が逸らせなくなってしまいました。
    また淳吾の魅力と愛情表現は、同性の私にとって標になりそうです。続きを読む

    投稿日:2024.02.05

  • まべ

    まべ

    うーん…苦手だな。人の知られたくない、誰にも見せたくない部分を強制的に見せられてるようで居心地の悪さを感じました。

    投稿日:2024.01.23

  • bbb

    bbb

    このレビューはネタバレを含みます

    映画を見た後、結末をどう解釈したらいいのかわからなかったので小説を読んでみたけど、さらによくわからなくなった。

    単行本を読んで思ったのは、過去から現在に進む映画より、現在から過去に遡る小説を何も知らない状態で読んだ方が、物語の衝撃を味わえてよかったんだろうなぁということ。

    読後感がスッキリじゃないので、疑問が色々湧いてかなり引きずっている。自分の解釈だけではどうにもできず、色々書評を読み漁ったら、”近親相姦は連鎖する””花の母親=淳悟の母親”というのを見つけて、あぁ確かにその方が、淳悟の花に向ける血、家族、母親への執着に納得がいくなぁと思ったり?でも時系列的にどうなんだ?となったりでやっぱりわからなくて迷宮入り。解決しないので、諦めて次の本を読み始めようと思います。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.01.21

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