【感想】宿命の女(電子復刻版)

山田正紀 / 徳間文庫
(1件のレビュー)

総合評価:

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  • うらぶれたバーから始まる、とんでもないスケールの話

     雨、港横浜、うらぶれたバー、カウンターに座るくたびれた男。
     ハードボイルド感満載の、こんな感じで始まるストーリーが、ラストには、その内容だけでなく、実際の大きさも、とてつもないスケールの話に発展していくお話です。単なる詐欺まがいのサスペンスかと思いきや、いつしか話はナチスドイツの秘密の世界へ。
     最初の鍵は、幻の女の自画像。これを追い求めていく内に、とりつかれたように主人公は深みにはまっていきます。語り手は、主人公本人です。
     「自分が何事かをなし得る人間だということを自分自身に証明したい。」これは閉塞感にあえぐ、現代人が誰しも抱く感情かもしれません。最後まで一気読み必須の作品なのですが、映像化はまず無理な作品です。
     と言うのも、ラストに示されるのが、「芸術作品であり、何よりも抑圧者を告発し、国家というものを全身で否定している怒りのモニュメントとしての建造物」なのであります。もし、このようなものが実際に具現化、ビジュアル化出来る人がいるとすれば、それはもはやジネット・マリス、彼女そのもの。天才以外の何者でもありません。だから、これを読者各々が、その姿形を想像するほかないのです。でも、ちょっと実際に観てみたい気もしますね。サスペンスロマンが好きな人にお勧めできる小説です。
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    投稿日:2015.07.04

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