完璧な病室

小川洋子 / 中公文庫
(96件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
15
29
35
6
1
  • 透明になれない私

    食べる、という行為なしには生きていけない生物である自分がなんだかひどく汚ならしいものに思えてしまう。

    ほとんどモノのない空間を整頓し尽くし、清掃し消毒された秩序ある静謐な世界…この人ほんとにこういうの好きだね。続きを読む

    投稿日:2016.06.21

ブクログレビュー

"powered by"

  • ブクログスタッフ

    ブクログスタッフ

    8/21はパーフェクトの日
    弟はいつでも、この完璧な土曜日の記憶の中にいる―病に冒された弟との日々を描く短編収録。

    投稿日:2019.08.29

  • nyan0620

    nyan0620

    この頃の小川さんは、なまくさい生である有機物とその対称にある無機物というのが一つのテーマだったのでしょうか。

    人の感覚を残酷なまでに繊細に、言葉を選んで描写しているのを読んでいると、霧のようなものに包まれて、この世でないところを浮遊しているような気分になります。これは、この作品集だけではないのですが。

    偶然にも、今、自閉症関連の本を読んでいて、知覚過敏といわれる人の感じる世界に思いをはせていたので、なおさら、だったのかも知れません。
    続きを読む

    投稿日:2019.06.27

  • 月湖

    月湖

    春が巡ってきてしまった。
    本書を再び開いたわたしは完璧な病室を持っていたし、それを失うかなしみも痛いほど知っている。
    食や生の匂いに満たされた生活の場である現実への嫌悪。音も匂いも時間もない非現実への憧れ。現実はあまりにも単調で代わり映えもなく淡々と過ぎていき、そして積み重ねられた日々の重さはときに耐えられないほど息苦しい。完璧な病室を設えたときから、遅かれ早かれ必ず壊れることを予感していた。二度と戻ってこないとはわかっているけれど、春の雨がやさしくて、記憶のなかの繊細な言葉に帰っていきたくなったのです。続きを読む

    投稿日:2019.03.10

  • そら

    そら

    『親しい友人の見知らぬ微笑』

    美しいな、美しい。でも私にはあまりにも高尚すぎて、目が焼けてしまう。理解を求められていないのがよくわかる。でも私の中で少しだけ言葉が浮かんで消える。やはり、美しい。美しいな。続きを読む

    投稿日:2019.01.26

  • 地球っこ

    地球っこ

    このレビューはネタバレを含みます

    わたしの好きな小川洋子さんがいたのは、『完璧な病室』と『冷めない紅茶』
    あやふやな世界に取り残されたのは『揚羽蝶が壊れる時』
    そして、とても印象的で残酷な気持ちになったのは『ダイヴィング・プール』

    『完璧な病室』
    死へと近づくガラス細工のように精巧で美しい輪郭を持つ弟と、生命力に溢れる逞しい胸の筋肉を持つS医師。2人の対比が死と生を表しているようでした。姉である「わたし」はS医師の胸の筋肉に閉じ込められることによって、弟との永遠の別れへの悲しみを癒やします。けれどずっと温かい腕の中にいることは出来ません。「わたし」は、これからも生きていかなければならないのですから。逆に、亡くなってしまった弟は、美しい姿を変えることなく「わたし」の完璧な土曜日の記憶の中で生きていきます。苦しくて悲しくて、弟のことを忘れることが出来たらいいのにと願いながらも、きっと「わたし」は彼のことを想い、考えることをやめることはないと思いました。

    『冷めない紅茶』
    生と死の世界がいつの間にか混濁し、自分がどこを歩いているのは分からない感覚に陥ります。死とは無縁の生活をしていたはずなのに、ふいに死神に魅入られたかのように、自分の中で死が堪らなく甘美な世界へと変わっていく様を見せられたような気持ちになりました。「わたし」はK君と彼女のいる世界を選んだのでしょうか。K君の彼女が夜になっても帰ってこなかったのは、「わたし」が図書室に本を返したことに関係あるのでしょうか。K君は本当に死神だったのかもしれない……
    読み終えたあと、いろいろと気になって想像してしまいます。しばらく抜け出せない世界観、好きです。

    『揚羽蝶が壊れる時』
    『妊娠カレンダー』を読んだときの、ぞくりとする精神のあやふや感を感じました。寝たきりの祖母。わたしのなかのベイビー。握りつぶした揚羽蝶。写真の中の彼女をわざと忘れた彼……
    わたしが異常なのか。祖母が異常なのか。
    それとも。誰が狂っているのでしょうか。

    『ダイヴィング・プール』
    彩のリエに対する残酷さよりも、純の方がわたしには恐ろしかったです。きっと純はサデスティックな一面を持っているんじゃないかとさえ思いました。純は、教会に住む孤児たち、また教会の子である彩にも、全ての人に対して優しい少年です。そして彼自身も孤児として教会で暮らしています。
    「リエちゃんは、知恵遅れの母親にトイレで生みみ落とされた、かわいそうな子だよ。」
    純がリエのことをそう言ったとき、ああ、この子は他の子をかわいそうだと思うことで、自分を生かしているんだなとふと感じたからです。彩のことも、鬱屈を抱いたかわいそうな子だと思っているのではないでしょうか。彩は純に自分の最低な姿を見られて、その上それを責められることもなく、これからも同じ教会でこれからも暮らしていかなければなりません。純は、彩が自分のことが好きなんだろうということは気づいているはずです。その上で、彩が絶対に立ち直れない方法をとったんだと思うのです。なんて残酷なことをしたのだろう。純の闇は果てしなく濃いものなのかもしれません。(ちょっと深読みしすぎたかな……)

    レビューの続きを読む

    投稿日:2018.07.17

  • 橘

    小川洋子さんの最初期のお話たち。
    とても好きだ…と思いました。
    生きていくことの残酷さとグロテスクさ。
    放っておいたら汚物になるものを食べて生きている、というような一文がすとんと心に落ちてきたので、小川ワールドに入り込み過ぎていると感じました。
    それぞれの形で少しずつ壊れていく登場人物たちに、静けさと儚さを覚えます。
    食べものエッセイを読むと食べたくなりますが、小川洋子さんを読むと食べたくなくなる。忙しないわたしです。
    続きを読む

    投稿日:2018.03.08

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

本棚の開き方(スマートフォン表示の場合)

画面左上にある「三」ボタンをクリック

サイドメニューが開いたら「(本棚アイコンの絵)」ボタンをクリック

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。