土偶を読むを読む
望月昭秀(著)
,小久保拓也(著)
,佐々木由香(著)
,山科哲(著)
,山田康弘(著)
,金子昭彦(著)
,菅豊(著)
,白鳥兄弟(著)
,松井実(著)
,吉田泰幸(著)
/文学通信
作品情報
「土偶の正体」は果たして本当に解き明かされたのか?竹倉史人『土偶を読む』(晶文社)を大検証!考古学の実証研究とイコノロジー研究を用いて、土偶は「植物」の姿をかたどった植物像という説を打ち出した本書は、NHKの朝の番組で大きく取り上げられ、養老孟司ほか、各界の著名人たちから絶賛の声が次々にあがり、ついに学術書を対象にした第43回サントリー学芸賞をも受賞。「『専門家』という鎧をまとった人々のいうことは時にあてにならず、『これは〇〇学ではない』と批判する“研究者”ほど、その『○○学』さえ怪しいのが相場である。『専門知』への挑戦も、本書の問題提起の中核をなしている」(佐伯順子)と評された。しかし、このような世間一般の評価と対照的に、『土偶を読む』は考古学界ではほとんど評価されていない。それは何故なのか。その理由と、『土偶を読む』で主張される「土偶の正体」、それに至る論証をていねいに検証する。考古学の研究者たちは、今、何を研究し、何がわかって、何がわからないのか。専門家の役割とは一体なんなのか、専門知とはどこにあるのか。『土偶を読む』を検証・批判することで、さまざまな問題が見えてくる。本書は、縄文研究の現在位置を俯瞰し、土偶を読み、縄文時代を読む書でもある。執筆は、望月昭秀、金子昭彦、小久保拓也、佐々木由香、菅豊、白鳥兄弟、松井実、山科哲、山田康弘、吉田泰幸(順不同)。【『土偶を読む』の検証は、たとえれば雪かきに近い作業だ。本書を読み終える頃には少しだけその道が歩きやすくなっていることを願う。雪かきは重労働だ。しかし誰かがやらねばならない。(望月昭秀)・・・はじめにより】
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この作品のレビュー
平均 4.4 (19件のレビュー)
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雪かきは重労働だ。しかし誰かがやらねばならない。(「はじめに」より。)
考古学本としては異例のベストセラーとなった『土偶を読む』(竹倉史人)を徹底的に検証した本である。
今までこの手の本に本格的な…検証本は出てこなかった。いくつかは「言ったもん勝ち」になっていた。学術者は見事に沈黙を守ってきたのが普通だった。ただ、今回は事情が違ったようだ。2021年のサントリー学芸賞、みうらじゅん賞を受賞、子ども向け図書「土偶を読む図鑑」が全国学校図書館協議会選定図書になった。「土偶は縄文時代の植物をかたどったフィギュアである」ホントにそうなのか?このまま、「土偶の正体は解明された」ことになってしまっていいのだろうか?いや、いいわけがない。
ただ出来上がった本を一通り読んでわかったのだけど、検証本を作るということは、かなりしんどい作業なのだ。
検証論文だけではダメなのだ。
どうしてこういう現象が起きたのか、各界、各人からきちんとした論文を取ってこなくてはならない。本ができてもダメで、本を元に当の本人と公開議論を挑まなくてはならない(結局、本人は拒否したようだ)。それよりももっともっと大事なのは、この本が売れなければならない。そうでなければ、悪貨は良貨を駆逐するではないが、本を出した意味がなくなる。あの、土をコツコツ掘るしか能がない学者たちにどうしてそんな芸当ができようか?
火中に栗を拾ったのは、縄文ZINEというフリーペーパーを発行している望月昭秀さんだった。前半の検証論文は大きな筋は既にwebに出ていることの上書きだけど、「図鑑」批判もあり、全体的に精緻を極めている(当然学者たちの査読は済んでいる)。読んで欲しい。因みに、検証するということは、土偶の特徴をおさらいするという事と同義である。結果、(ちょっと詳しい)土偶解説書にもなっている。
「土偶を読む」は偶然か意図的かわからないけど、様々なメディアから好意的に取り上げられた。しかし問題があった。NHK「おはよう日本」で文化庁主任文化財調査官・原田昌幸さんの「‥‥興味深い」とのコメントは、意図とは全く違う切り取りをされたと本人は証言している。その前に「これは個人の思いつきに近いもので、学術的に見るところはない」と言っていたのである。
「読む」を縄文時代の権威的な学者はどう読んだのか。歴博の山田康弘教授のインタビュー記事も載っている。当初は山田氏も、本人がダイジェスト版持って売り込みにきた時「歴博研究報告」の研究ノートに(発想は面白いので)載せるのも面白いかなと思ったらしい。しかし、詳しく読むと「学術的には成立しない」と話は流れた。「読む」批判への批判として「自由な議論ができなくなる」ということがある。このことに対しては「学術研究書として出てくるのでは、それは当たらない」とキッパリ。更には「考古学者のイメージは、変わり者、偏屈な人、世捨て人と見られている。でも、これだけ世間一般に対して門戸を広げている学問分野はないんじゃないか。一般の方が、講座にどんどん入っていって、ごくごく気軽に話を聞ける」と、考古学は閉鎖的だという意見に反駁している(←これは私が自信を持って賛同する)。
本書は全くもって盛りだくさんだ。望月昭秀さんが雑誌編集者なので、サービスしすぎで、写真は多いは、真面目な論文だけでなく、インタビュー、対談、「私もやってみた」企画、まである。詰め込みすぎて、ちょっと専門的になりすぎて、文字ポイントも小さい論文が出てきて、かえって一般人は敬遠するかもしれない。でも楽しい本だ。特に「読む」を読んでいなくても、特に「縄文」に興味なくても、10以上の発見はあると、私が保証する。
おまけ。
小山修三による縄文時代人口密度研究によると、東北(46,700人)、関東(95,400人)、中部(71,900人)、北陸(24,600人)に対して、中国(1,200人)、四国(200人)、九州(5,300人)、近畿(2,800人)だったという。西日本の縄文人口は圧倒的に少ない。これほどとは思わなかった。縄文時代、中国地方でコミュニティ以外の人々が出逢うことは奇跡的なことだったのだ。弥生時代になって爆発的に人が増えていった。もしかしたら「古事記」の、神様がその飛び散った血からさえもポンポンと子供が出たのは、その記述は、案外(当たらずとも遠からず)現実的な表現だったのかもしれない。
続きを読む投稿日:2023.08.15
「土偶を読む」を読んで、考古学会批判が結構書かれてて、それはどうなんだろう、と思っていたら、なんと「土偶を読むを読む」という考古学会の視点からどう捉えてるのかを書いた本があると言うことで、これは両者の…言い分を聞かないと失礼なので、読みました。
読んで改めて思ったのは、批判本は嫌いだなと。批判するのはいいのだけど、批判の仕方がなんか子どもじみてるというか、相手を馬鹿にしてる感じがして嫌でした。
コトを批判して、人格を否定しない
批判の時に相手をバカにしない
こういうことは注意したい
でも、「土偶を読む」のように、一つのストーリーで土偶を語るのは、ただ我々がスッキリしたいと言うだけで、ある側面でしかないのかもな、と「読むを読む」を読んで思いました。
わからなさと向き合う
結構大事なことだと僕も思っていて、科学の発展でわかることは増えてきてるけど、全てを分かろうとはせず、少しずつ教えてもらえることを喜んでいきたい。
あと専門領域の難しさを感じました。
議論の蓄積があって、やっぱりそれを前提にした議論をしていかないと、過去の研究者たちに失礼だし、だからと言って、膨大な研究領域を調べ切ってからしか研究できないのも違うと思う。この塩梅をどうしたらいいのだろうと思いつつ、お互いが歩み寄るしかないのかな、って気がします。
オレがオレが、みたいにならず、閉鎖的にもならず、閉鎖的になってないつもりが実はなっていることにも自覚的になり、お互いがちゃんとアウフヘーベンできる土台ってできないだろうか。
巨人の肩にどこまで乗って、どこから降りるのか。
哲学では、哲学カフェとか、結構オープンな活動ができてるので、こういうのが参考になるのかな続きを読む投稿日:2024.04.08
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