白夜に沈む死 上
オリヴィエ・トリュック(著)
,久山葉子(訳)
/創元推理文庫
作品情報
石油景気に沸く沿岸の町ハンメルフェスト。町に侵入するトナカイをめぐりトナカイ所有者と住人とのトラブルが絶えない。そんななかトナカイ所有者の青年が、本土から島の餌場にトナカイを移動させている最中に狼湾(ヴアリギスンド)で事故死した。数日後、同じ湾で市長が死体で見つかる。偶然かそれとも? 腑に落ちないものを感じたトナカイ警察のクレメットとニーナだったが、青年が死亡した日にクレメットの叔父が撮った写真に怪しげな動きの人影が写っていた。日の沈まない夏の北極圏、北欧三国にまたがり活躍する特殊警察所属の警察官コンビが事件を追う。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 〈トナカイ警察〉シリーズ
- 著者
- オリヴィエ・トリュック, 久山葉子
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 創元推理文庫
- 書籍発売日
- 2023.01.20
- Reader Store発売日
- 2023.01.19
- ファイルサイズ
- 2.4MB
- ページ数
- 296ページ
- シリーズ情報
- 既刊4巻
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.8 (4件のレビュー)
-
ノルウェー北部。北極圏を舞台にした『影のない四十日間』に続くトナカイ警察シリーズ第二弾が登場した。個性という意味ではこれ以上ないほど珍しい舞台設定。観たこともない大自然の環境。入り組んだフィヨルドと…沈まない太陽。辺境ゆえの捜査の困難さ。アイヌ民族やエスキモー同様、同和政策により絶やされようとしている先住民族サーミ人の血脈。あまりにも独自な材料を溢れるほど携えて、新鮮この上ないミステリーを展開してくれる圧巻のシリーズである。
前作では、太陽がまったく昇らない冬の四十日間を背景にしていたのが驚愕であった。本作では、春を迎えた同地域を舞台に、太陽が沈まない白夜の季節を背景にして、またまた物語世界の辺境性に興味を注がれることこの上ない。しかも石油開発景気に沸く海辺の小村を背景に、潜水夫という極めて特殊な作業に携わる男たちの宿命に焦点を当ててゆく物語。ページを開いた途端、強烈に引き込まれるのは、登場する人物たちの個性でもあり、石油景気という異常なまでの状況ゆえでもあろうか。
ノルウェー南部から派遣され、同じ国内でありながら極めて異質な日照時間や生活環境に圧倒されるニーナ。彼女とペアを組むトナカイ警察のクレメットはサーミ人の血を引く先輩警察官。二人の主役コンビは、スノーモービルで、氷が解けかけた危険な水辺や雪原を疾駆しつつ、辺境の仮野営設備の小屋を拠点に、日々を過ごす。あまりにワイルドな職場環境に圧倒されながら、彼らならではの活躍に胸躍らされるのが、本シリーズの個性でもある。
今回は、石油開発を背景にした海辺での事故を探るうちに、思いがけぬ過去の暗闇や亡霊の存在が浮き彫りにされてゆくという内容である。原作者がそもそもノルウェー駐在のフランス人ジャーナリストであるゆえに、彼の取材活動から浮上してきたであろう様々な事実が、作中でも生々しい。先住民のサーミ人は国境や私有地を持たず、トナカイを放牧させて暮らしてきたのだが、開発や同化政策が進むにつれ、土地の私有化や企業誘致が進む北辺の村では、古い歴史と新しい文明との利害が様々な形で衝突し合うようになった。
中でも石油開発が端緒に着いたばかりの近海では、巨大資本をバックにした企業と、町の政治家たち、先住民と新住民との文化的対立、その他ノルウェーが現実に山積みにしてきた問題が、様々な階層で浮き彫りになりつつあった。本書の凄みは、ミステリーとしての構造を確立させながら、知られざるノルウェー北部の現実を読者に突き付けてくるところである。登場人物たちの個性も素晴らしく、町そのものが良く活写されて見える点も好ましい。
我々は、ノルウェー南部育ちのヒロインであるニーナの眼を通して、改めてこの国の地理的、経済的、民族的問題を驚きや発見とともに体感してゆくことになる。ちなみに人口がノルウェー540.8万人、北海道が528.1万人。面積は、ノルウェーが385㎡、日本が378㎡。如何にノルウェーの人口密度が低いかがおわかりかと思う。一部が北極圏という特異な環境も大きく影響しているのだろう。
この国の北部。その暗夜と白夜と、二つを、作品で示してくれたこの作者。本書では潜水夫に課された驚くべき過酷な労働環境、後遺症などに関しても徐々に記述されてゆく。本書は、ジャーナリスト魂の十分にこもった、熱血作品でもある。作者の怒りや公平な視線を存分に感じながら、過去と現在を去来する壮大な物語と、二人のトナカイ警察たちのバイタリティ溢れる活躍とを、思い切り楽しんで頂きたいと思う。続きを読む投稿日:2023.02.14
このレビューはネタバレを含みます
・あらすじ
レビューの続きを読む
ノルウェー北部北極圏に近いハンメルフェストが舞台。
若いトナカイ所有者が事故で溺死、そして数日後に市長も同じ場所で死体が見つかる。
トナカイ警察のクレメットとニーナが事件を追う。
・感…想
続編らしいけどこの作品から読んでみたけど問題なし。
サーミ人については映画で観たこともあるからちょびっとだけ知ってた(サーミの血、という映画)
トナカイ放牧、トナカイ警察、北極圏の生活など初めて知ったことも多く、これがあるから海外翻訳小説は読むのが面白いんだよね。
どこの国にも近代化の波に勝てない風習があって、結局はそこに住んでる人が「何を求めるか」なんだと思う。
便利、簡便、インスタントなものが悪という訳では無い。
求めるもの、みてる景色、何を大事にするかの違いなんだろうな…。
上巻ではまだ起承転結の起承くらいなので謎だらけ。続きを読む投稿日:2024.03.02
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。