父から娘への7つのおとぎ話
アマンダ・ブロック(著)
,吉澤康子(訳)
/東京創元社
作品情報
イギリス南西部の建築事務所で非正規社員として働くレベッカは、幼いときに父親が家を出ていっていしまい、母親に育てられた。父親のレオには20年近く会っていない。ある日、男性記者エリスが取材目的でレオの行方を尋ねてきた。レオはかつてBBCの子ども番組に出演していた人気俳優だったのだ。エリスはレオが現在どこにいるのか見つけられないという。父親など存在しないかのように暮らしてきたレベッカが母親や親戚に聞いても、「ろくな男じゃない」としか教えてもらえず、生死すらわからない。だが、祖母がこっそり一冊の本を渡してくれる。それは、父親が自分のために書いてくれたらしいおとぎ話の本だった。レベッカはエリスの取材に協力しつつ、本を手がかりに父親を探そうとするが……。〈収集家と水の精〉〈世界の果てへの航海〉〈魔女とスフィンクス〉……7つの奇妙なおとぎ話が収められた本が、知らなかった父親の想いを描き出す。本をこよなく愛する著者が贈る、切なくも心温まる家族の物語。
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この作品のレビュー
平均 4.4 (13件のレビュー)
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★5 幼い頃に失踪した父を探して…大切な人に胸の内を話したくなる名作 #父から娘への7つのおとぎ話
■はじめに
私には大切な家族がいます。愛すべき妻と中学生、小学生になる息子たち。家族みんなで食べる…ご飯は美味しく、たまの休日に遊びに行くと日ごろの疲れが吹き飛んでしまいます。ただ最近は私や妻は仕事で多忙になり、息子たちは友人との時間を大切にし始めるようになってきました。いつの頃か家族の時間が少なくなってきたような気がしています。
本書アマンダ・ブロック『父からの娘への7つの物語』は、そんな私に家族の大切さを再度学ばせてくれた素敵な物語でした。
■あらすじ
建設事務所で非正規雇用として働いているレベッカは、母子家庭で育てられて今や26歳。ただレベッカの父レオは、かつての名俳優でありながらも、現在は行方不明になっていたのです。
ある日レベッカの勤務先にネットメディアの記者エリスが訪れ、レオに取材をしたいと申し出を受けます。ただ母や家族に行方を尋ねてみても、レオに対しては罵倒の言葉しか得られずに孤独な気分になるだけでした。しかし祖母だけはレベッカに寄り添い、父から預かったという一冊の本を手渡すのです。その本は父が娘のためだけに書かれた「おとぎ話」の作品集でした。
■読書感想文
世界中どこにでもいる、悩み多き20代女性が主人公。幼いころに大きな夢を抱きつつも、現実には非正規な雇用形態で働きながら、慎ましく生活しています。母方の家族には愛され、大切な友人もいるけど、残念ながらボーイフレンドには縁がありません。そんな彼女は、これまでの人生ずっと父親のことがなんとなく引っかかって生きてきました。記者エリスとの出会いや祖母からの本をきっかけに、徐々に父に対しての情熱が膨れ上がってくるのです。
すでに社会に出て、大人の常識や前向きに生きる力を持ち合わせてもいる彼女ではありますが、心の奥底ではいつも繊細な胸の内が揺れ動いています。すべてを受け入れてくれる誰かを待っているようで、生き物としての脆弱さが露骨に伝わってきました。
しかし、そんな彼女に寄り添う家族や友人たちの優しさには、読んでいて心が暖められました。母方の家族がレベッカを守るために、どんなに誠意を尽くしてきたか。そして友人エイミーとの乱雑な会話は、私を青春時代を引き戻してくれる素敵なものでした。さらに記者エリスの友人であるキャムの包容力の高さは、もはや世の中の男子全員が読んでおくべき内容に違いありません。
彼女のボーイフレンドの候補となる記者エリスですが、二人の距離感がなんとも絶妙です。優しく誠実な男ではありますが「心配しないで、すべての責任を負う」と胸を張って言ってくれる関係性ではありません。彼にできないというわけではなく、覚悟というボタンを押す気持ちがあるかだけなのですが、彼はまだ押してくれないのです。レベッカが持つ乙女の心室細動が明々と伝わってきて、胸が張り裂けそうになりました。
本書は父からの「7つのおとぎ話」が物語をけん引してくれます。おとぎ話には、父の人生とともに、人生の優しさや厳しさ、家族や友人の大切さ、勇気や挑戦、社会の怖さや不条理さが描かれています。そのメッセージによって娘は父への想いを膨らませていくのですが、重要なのは単なる娘へのメッセージでは終わらないということです。どんな想いで父が物語を綴ったのか… 既に若くない私ですが、力強い勇気をもらったのでした。
そして物語の終盤、とても涙を流さずに読むことができません。すべての真相が明らかになりますが、なによりレベッカのこの物語に決着がつきます。うす暗い世界で迷い続けてきた彼女が、世界中を敵に回しても味方になってくれる人を感じられた時、さらなる成長と活気のある人生が迎えられたのではないでしょうか。
■さいごに
私はかつて受験に失敗し、就職に失敗し、失恋や友人の怒りを買うなど、いくつもの失敗を経てきました。それでも地を這うような地味な努力を続け、なんとか人の親になることができたのです。自身の失敗から学んだことを家族に伝えていくことで、間違いなく子どもたちは成長すると信じてきました。しかし今回この本を読んで、それは大きな間違いということに気づかされたのです。
家族を愛するということは、子どもたちの成長や幸福に寄与するのではなく、それはすべて自分自身にも帰ってくるということを。
夏休みもあと一週間で終わりです。明日のお休みには、家族でかき氷を食べに行こうと誘ってみようと思いました。続きを読む投稿日:2023.08.25
幼い頃から父親を断絶して成長したレベッカが主人公。俳優として名高い父親の取材を申し込んだ記者との接触により独自で父親探しを始めた主人公が行き着く先は?と言うミステリーっぽい作品。結果はどうれあれ、プロ…セスがとても良かったし、忌むべき父親像を恋うる対象に格上げした雰囲気も良かった。
続きを読む投稿日:2024.03.02
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