水と茶
斉藤志歩(著)
/左右社*
作品情報
とにかく、作者が楽しそうであり、俳句を通じて人生を面白そうに眺めている――岸本尚毅秋や手に文鳥の来てすこしにぎる第八回石田波郷新人賞受賞の著者、待望の第一句集。二〇一四年から二〇二二年までの二五六句を収録。〈収録句より〉セーターにあやしき柄のありにけり妹の駒はみづいろ絵双六夕東風へ黒板消しを打ち合はす紫陽花や銀の器に歯の軽さうつむきて夏着の縞を数へゐし船遊び手を振れば手は風を受くやすめればからだよくなる九月かな宴とほく月の廊下にすれ違ふ紐引いて橇の散歩は木の間ゆくこの宿のシャンプーよろし雪あかるし
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この作品のレビュー
平均 5.0 (2件のレビュー)
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第8回石田波郷新人賞の俳人、斉藤志歩さんの第一句集です。プロフィールによると30歳そこそこの若手のようですが、芯のしっかり通った安定の読みごたえでした。とはいえ堅苦しさは一切なく、むしろユーモラスでさ…えあります。お茶のおともにぱらぱらめくって、時々クスッと笑わせてもらえる、そんな親しみやすい句集です。
以下、わたしの好きな句を3つご紹介します。ただ、わたし自身は俳句未経験で句集を読むのも初めて。古文も苦手で、作者の句を正しく読めているかどうか微妙です。だから、ここに書くのは鑑賞文ではなく、ましてや批評ではなく、感想文あるいは二次創作のようなものと思ってください。
◯秋風やきりんの舌のよく見ゆる
この句から思い浮かぶのは、たとえばこんな情景です。ある日、作者は友人たちと動物園に行きました。きりんの前でのやりとりです。
A「うわ、でけぇ」
B「背たかーい」
C「首ながーい」
斉藤「舌が赤い」
ABC「そこ?!」
アウトラインよりディテールが気になるのは作者の特性なのでしょうか。世間一般との感覚のズレがユーモラスな句です。
「いや斉藤さん、きりんだよ?よく見てよ」
「だから、よく見ている」
「いや、そういうことじゃなくてさ…」
という会話の続きまで空想してしまいました。あくまでもからりとした秋晴れの日の出来事です。
◯好きらしく栗飯の栗先に食ふ
ほくほくに炊けた栗ごはん。秋限定のお楽しみですよね。子どもの頃に栗だけほじって食べた経験、誰にでもあるんじゃないでしょうか。
でも、この句で栗だけ先に食べているのは作者ではありません。家族や親友でもなさそうです。よく知る間柄なら嗜好は把握していますから「好きらしい」とはふつう言いません。
栗が好きなのは初めて知った。この句にはそんな発見のニュアンスが含まれています。栗ごはんを食べているのは作者にとって、嗜好は把握しきれてないけれど無関心ではいられない人なんです。箸の上げ下ろしまで、つい詳細に観察してしまうほどに。
栗ごはんの栗だけ先に食べてしまう、子どもっぽいところのある人。作者とどんな関係なんでしょうね?
◯とんかちの音はるかなる日永かな
春のうららかな日、どこかで家でも建てているのでしょうか。とんかちの音が遠くまでひびいてゆく。のどかな日常の風景を詠んだ、すがすがしい句です。
一方で、つい深読みしたくなる句でもあります。芥川龍之介の箴言集『侏儒の言葉』に次のような一節があるからです。
〈打ち下ろすハンマアのリズムを聞け。あのリズムの存する限り、芸術は永遠に滅びないであろう。〉
個々の芸術家は滅びても、芸術は必ず民衆の中に種子を残している。そう芥川は書き遺しています。アーティストとしての強烈な自負を感じさせる一文です。
で、この句は芥川へのオマージュかも、と一瞬思ったのでした。芥川が蒔いた芸術のタネが、斉藤さんに根付いて芽吹いてこの句を詠ませたのだったら面白い。九割方わたしの妄想ですけれど、そんな悠久の営みをも感じさせる、のびのびした句でした。
レビューフルバージョンはこちら↓
https://shiosato.hatenadiary.jp/entry/2023/01/28/211430続きを読む投稿日:2023.01.22
この方の目線が好きです。つい余白を想像してしまう…装丁も可愛いのでおすすめです。
十句選
ストーブにあたるからだのうらおもて
雪解や瞼の覆ふ目のかたち
後ろから卒業式の椅子を蹴る
皿よりもピザ大き…なる花見かな
冷蔵庫の明りの中でハムを食ふ
瓜刻む窓に火星の低くあり
待合せの出口がちがふ晩夏かな
やすめればからだよくなる九月かな
宴とほく月の廊下にすれ違ふ
くしやみしてくしやみの音を真似されて
続きを読む投稿日:2023.04.25
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