世界史としての「大東亜戦争」
細谷雄一(編著)
/PHP新書
作品情報
本書は「大東亜戦争」を、日本史や日米関係史の視座、あるいはアメリカ政府の視座である「太平洋史観」から解放し、さらには戦前の日本が戦争の肯定を試みた「大東亜戦争史観」からも解放して、国際史の視点から再検討する試みである。例えば中西寛氏は1890年を20世紀の起点に置く歴史観を提唱し、大木毅氏は当初日本よりも中国との関係を重視していたドイツが日本と手を結んだ経緯を綴る。重層的な視点から「複合戦争」の全体像を俯瞰する。 ●細谷雄一[五一年戦争史観] ●中西寛[20世紀史のなかの第二次世界大戦] ●松浦正孝[日本にとって大東亜戦争とは] ●森山優[日米開戦という選択] ●村田晃嗣[ローズヴェルトの世界戦略] ●アントニー・ベスト[イギリスの対日観] ●家近亮子[蒋介石の外交戦略] ●大木毅[ドイツの「転換」] ●花田智之[スターリンの対日戦略] ●宮下雄一郎[ド・ゴールの闘い] ●加藤聖文[戦後の東アジア] ●小谷賢[日米英のインテリジェンス] ●リチャード・オヴァリー[民主主義の「勝利」と限界] ●板橋拓己[ファシズムの浸透と競合] ●森田吉彦[知識人たちの闘い]
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商品情報
- シリーズ
- 世界史としての「大東亜戦争」
- 著者
- 細谷雄一
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2022.07.15
- Reader Store発売日
- 2022.07.16
- ファイルサイズ
- 2.9MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (5件のレビュー)
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「先の大戦」と曖昧に呼ばれることの多い「大東亜戦争」をグローバルな観点から「複合戦争」として捉え、戦争の全体像を把握しようとした本書は、もともと月刊『Voice』の2022年1月号、4〜6月号に掲載さ…れた諸論考を編集したものである(第1章と13章、14章は書き下ろし)。レビュアーは『Voice』未見のため、どの論考も初見である。
「複合戦争」という視点は、本書への寄稿はないが、内閣府アジア歴史資料センター長の波多野澄雄氏らが主張しているものであり、真珠湾攻撃に始まる日米戦争、主に東南アジアを舞台とした日英戦争、1937年に始まる日中戦争、そして終戦間際の日ソ戦争という4つの戦争の複合戦争という意味である(p.7)。
第1章の中西寛氏による「20世紀史のなかの第2次世界大戦と日本」はこの戦争の始点を1890年に置き、半世紀余りに及ぶ大きな秩序変動過程のなかに位置付けようとしている。1890年は地球規模の国際的秩序の転機となった年であり、象徴的には、ドイツ帝国が帝国主義競争に本格参入したこと、マハンが「海上権力史論」を書いたこと、シベリア鉄道が開通したことなどが挙げられている。慧眼かと思う。同年、日本でも大日本帝国憲法が施行され、教育勅語が出され、維新以来の国家体制が整う。以後、1925年をヨーロッパの修正帝国主義秩序の安定をみた中間点としつつ、1945年の終点までにそれが急速に崩壊するという流れである。日本経済史を専攻するレビュアーにとっては、日本の「1890年頃に設立された体制は、西洋立憲主義の体裁をとり、天皇を君主として位置付ける大日本帝国憲法と、教育勅語に表現される、万世一系の神聖な天皇を中心とした伝統的な倫理的共同体意識が融合しないままに接着された点で脆弱性を内包していた」(p.29)という点がとくに重要な指摘かと思う。日本主義とアジア主義の緊張もそこに胚胎していたという指摘も然りである。また日本国内で「憲政の常道」が確立し、産業帝国の地位が確立した時点を1925年に取るのも賛成である。
と、この調子で紹介していくとえらく長くなりそうなので詳細な紹介はやめておくが、第2章松浦正孝氏の「日本にとって大東亜戦争とは」での満洲の位置付けに関する指摘(pp.48-49)や、すでに牧野邦昭氏の『経済学者たちの日米開戦』でも指摘されていることだが、第3章の森山優氏の「日米開戦という選択」での「真の対立軸は臥薪嘗胆(避決定)か外交・戦争(決定)かだったのである」(p.69)という指摘、などなど鋭い指摘が多い興味深い論考が並んでいる。
第4章の村田晃嗣氏の論考から第10章の加藤聖文氏の論考までの7章分は、それぞれアメリカ、イギリス、中華民国、ドイツ、ソ連、フランス、戦後の東アジアとの連続性、という観点から「大東亜戦争」を照射しようとするもので、いわば主要なプレーヤーから観た「大東亜戦争」論である。第11章は、インテリジェンスという視点から、さらに第12章と第13章はいわゆる民主主義対ファシズムの戦いと言われた第2次世界大戦を今一度最新の研究成果を踏まえてそれぞれ論じられている。最後の第14章は、地域主義にもとづく国際協調の試みが広域秩序論に意味転換していく過程で、知識人たちがいかに思想的な格闘を続けていくかの様子を垣間見ている。
それぞれの論考から刺戟を受けるものの、全体像としてはややまとまりに欠くきらいがあるのは確かだが、編者の細谷雄一氏が簡潔にまとめている序章の問題意識に立ち戻ることで本書の重要性は確認されよう。続きを読む投稿日:2022.08.05
「先の大戦」としか言いようがない。
太平洋を跨いだ日米戦争、東南アジアでは日英戦争、面倒くさい支那事変、最後のととどめ日ソ戦争。確かに、「太平洋戦争」と言ってしまうのは事実を表していない。
だからこ…その大東亜戦争。
まさに全世界を敵に回したんや。負けたんは、対米だけやけどな。
世界史の中で見れば、いろんな国の色んな思惑に振り回されていた、日本。その日本に確固たる方針がなく、縦割り完了社会で、しかも下手に現場が優秀だったから、完膚なきまでに霧散した。
結局、明治の元勲が残っている間だけがまともな国だったわけだ。
上が無能でも現場が優秀でなんとかしてしまって、出来るじゃんてもっと無茶を押し付けられて結局最悪な状況で破綻するのが、宿痾なんか。続きを読む投稿日:2023.02.18
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