私たちのサステイナビリティ まもり,つくり,次世代につなげる
工藤尚悟(著)
/岩波ジュニア新書
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第1章 サステイナビリティを「知る」
1 「サステイナビリティ」と聞いて思い浮かぶもの
2 語源は「下から支える」
3 「持続可能な開発」という考え方
4 サステイナビリティの描き方
5 サ…ステイナビリティの存在と実在
第2章 サステイナビリティを「問い直す」
1 「持続可能性」という和訳を問い直す
2 主語を問い直す
3 自然のとらえ方を問い直す
第3章 サステイナビリティに「取り組む」
1 サステイナビリティの実践
2 和食給食応援団――日本の食文化を次世代につなぐ
3 タイニーピースキッチン――家庭料理のレストラン
4 シェアビレッジ――貨幣経済の外側でつながる仕組み
5 考えの道筋を示してサステイナビリティを社会に実装していく
第4章 サステイナビリティを「学ぶ」
1 サステイナビリティ学のススメ
2 サステイナビリティ学のはじまり
3 サステイナビリティ学の特徴
4 サステイナビリティ学を学んだ人が習得しているスキル
5 次世代のための社会をつくる人になる続きを読む投稿日:2022.04.13
〇岩波ジュニア新書で「学校生活」を読む⑨
工藤尚悟『私たちのサステイナビリティ』(岩波ジュニア新書、2022)
・分 野:「学校生活」×「社会科」
・目 次:
はじめに
第1章 サステイナビリ…ティを「知る」
第2章 サステイナビリティを「問い直す」
第3章 サステイナビリティに「取り組む」
第4章 サステイナビリティを「学ぶ」
おわりに
・総 評
本書は、SDGsなどの文脈で用いられる「サステイナビリティ」という概念を改めて検討した本です。著者は国際教養大学の准教授で、大学院時代からサステイナビリティ学を専攻してきた専門家です。
サステイナビリティは、一般的に「持続可能性」と訳されますが、その内容はよく分からないという人も多いでしょう。そこで著者は「サステイナビリティを自分の言葉に置き換えながら理解していく過程」を示すことで、より実態に即した理解を促そうとしています。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点にまとめます。
【POINT①】サステイナビリティを「持続可能性」と訳すことの問題点
サステイナビリティの語源は、ラテン語の「sastinere」という言葉で、その意味は「下から支える」というものです。しかし、これを「持続可能性」と訳してしまうと、下から支えるのは誰か(who)といった視点や、どのように(how)支えるのかといった視点が欠けてしまいます。持続可能かどうかといった「結果」のみが注目され、具体的な内容は専門家に任せる――その結果、私たちは「サステイナビリティに対して当事者意識を持てずにいる」と言います。従って、まずは、あるテーマに取り組むことが、なぜサステイナビリティに取り組むことになるのかといった「仕組み」を理解する必要があると著者は指摘します。
【POINT②】サステイナビリティとは「まもる・つくる・つなげる」こと
著者はサステイナビリティの訳語として「まもる・つくる・つなげる」というキーワードを挙げます。即ち、今日まで私たちの社会のなかで大事にされてきたことを「まもり」ながら、これから新しく私たちの社会のなかで大切にされてほしいことをきちんと大切にできる仕組みを「つくり」、さらにそのような考え方を次世代に「つなげる」ということです。ただし、何を「まもる・つくる・つなげる」のかは人それぞれであり、時には対立する場合もあります。そこで、サステイナビリティの主語は「私」ではなく「私たち」として、お互いに尊重しながら「無理なく、複数の異なる回答を持つ」ことも重要だと著者は指摘します。
【POINT③】サステイナビリティを「実践」する――和食給食応援団のケース
本書では、実際に「サステイナビリティ」=「まもる・つくる・つなげる」を実践している企業を3例ほど紹介しています。そのうちの1つが「和食給食応援団」(合同会社五穀豊穣)です。どのようにサステイナビリティを「実践」しているのかというと...
①「まもる」
農業と漁業に携わる人たちが自分たちの仕事で稼ぎを得て暮らしていけるようにする。
②「つくる」
和食給食を全国に広めることで、食に関心やこだわりを持つ次世代を育成する。
③「つなげる」
自分たちの国の食文化の特徴と価値を理解する大人が増え、やがて農業や漁業に携わる人たちの生活を支える消費者となる。
以上のように整理することができます。特に②「つくる」の部分が、企業としてのオリジナリティーが発揮されるところであり、著者も「その実現のために必要な仕組みを提案し、その実現のために必要な行動を起こしています」と評価しているので、詳細は本書を読んで確認してみてください。
本書では、これまで私たちが“当たり前”だと思っていた「サステイナビリティ=持続可能性」という訳語について再検討し、その言葉のイメージが持つ問題点を指摘しています。確かに、著者が新たに提案している訳語(「まもる・つくる・つなげる」)の方が、より「自分たちが行動していく」というイメージを持ちやすいと思います。SDGsという言葉はよく目にする/耳にするけど、結局、何をすればいいのか分からないという人は、是非本書を読んでみてください。
(1521字)続きを読む投稿日:2022.09.18
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