いじめを考える
なだいなだ(著)
/岩波ジュニア新書
この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
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人間関係の問題は生きていると必ずつきまとってしまうものだ。子どもではいじめと呼ばれていたものが大人ではハラスメントと呼ばれるものに変わっている。なだ先生が書いていた時にもあったと思うが、これほどのもの…ではなかったと思う。
人間には強い力を持った時に、思い通りになることへの愉悦からそれを弱いものに向けたり、自身の欲の開放に用いたりする。大人は年数を重ねた分だけ、それを制御する術を身に着けてくるが、子どもはそれをまだまだ身に着ける段階にあるから、いかんなく発揮してくる。軍隊はまさにその強い力を誇示するところにある。人間のもつ、無意識、生物的、身体的な部分の特徴といってよい。
そのこと自体はともかくとして、そうした強い力をもった際に人間が行うことをどのように取り扱ってきたか。予測と制御の脳化が進んだ社会でどのようにこの問題は隠蔽・抑圧されてきたか。
ひとつは軍隊のような場に取り残された。軍隊は解体されたとはいえ、今でも自衛隊の死者は自殺の方が多いのではないか。もうひとつは教育という名で学校に取り残された。このふたつの場に限ってはいじめの範囲が犯罪レベルから軽微なものまで広範にわたるものとなり、聖域のようにその外に出すことが難しくなった。
この点に関しては職場という場も同じであったと思う。それがいじめ防止法やハラスメント防止法というものとしていけないことだと言えるようになってきたということは、強いものが弱いものにむやみに力をふるってはいけないということを言いやすくなった、そういう行為はあってはならないと言えるようになった、人権意識の進歩と言っていいか。
戦争を経験した者であり、希望を信じる者である以上、そのように語らざるを得なかったのかもしれない。そうであると信じたいというのはなんとなくわかる気がする。あるいは、ソクラテスがうまい具合に善さというところに落とし込まざるを得なかったようなそんな気がする。弱者もまた、徒党を組んで力をふるっていくことで、何でもかんでも取り締まり罰を与えようとするそんな怨嗟の感情で動いているところがあるような気がしてならない。それはある意味で弱いということがある種の力になってそれを行使しているという同じことの繰り返しなのかもしれない。
最後に彼は、時間をかけてある種の物語として人生という物差しの中でいじめを取り込んで成長していくと締めくくっている。ひととひとが生きている以上、こうした軋轢や本能は避けられない。自分もまた誰かにそうしてしまっているのかもしれない。どのような経験もそのひとの人生の成長のひとつとなる。そうした経験があるからこそ、それはいけないとか、同じ境遇にあるひとに対していたわれる。だからこそ、受ける側ではなく、する側も同時に扱わなければならない。関係性の問題はどちらか一方にアプローチするのでは役に立たないのだ。する側もされる側も行為を時間の中で成長を支えるより他ない。それらが、社会全体で当たり前のものとして身近な大人が示せるそんな世界を願ってやまない。続きを読む投稿日:2021.06.05
ソクラテスとプラトンの対話編を感じさせるような対話でいじめの本質を平易な言葉で明らかにしていく。
根源的な話から、歴史、文化、社会を考察し、いじめを真正面から捉えている。投稿日:2016.04.14
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