ディストピア禍の新・幸福論
前野隆司(著)
/プレジデント社
作品情報
【内容紹介】
ディストピア禍の新・幸福論
パンデミック、気候変動、格差拡大、侵略と戦争・・・・・・
混迷と分断の“ディストピア禍”に問う
心とは、生きるとは、幸せとはなにか?
慶應義塾大学大学院教授の「幸福学者」が書き尽くした入魂の書!
コロナショック、大規模な気候変動、苛烈さを増す自然災害、経済的な格差の拡大など、不幸の連鎖が止まらない。そのうえ、人類は21世紀になっても戦禍の中にいる。
そんな時代に、わたしたちは幸せに生きることができるのか?
そもそも幸せとはなにか?
どうすればあらゆる人が幸せに生きる世界をつくれるのか?
「幸福学」の第一人者である著者・前野隆司氏が、それらの問いに正面から取り組んだのが本書である。
科学と宗教、洋の東西、人間とロボット・・・・・・一見相反する領域をダイナミックに架橋しながら、力強く本質を掘り下げていく。
思索の果てに辿り着いた「幸せの正体」は、「いま」を生きるすべての人の希望となるだろう。
――本書では、脳神経科学・心理学・統計学・工学を中心とした様々な科学的研究の結果として、その結論を導いていく。
【著者紹介】
[著]前野 隆司(まえの・たかし)
1962年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)教授。1984年、東京工業大学工学部機械工学科卒業。1986年、東京工業大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より現職。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。認知心理学、脳神経科学、倫理学、統計学、工学などの研究を統合した「幸福学」を提唱し、個人と人類の幸せ(well-being)について研究している。主な著書に『脳はなぜ「心」を作ったのか 「私」の謎を解く受動意識仮説』(筑摩書房)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社)、『ウェルビーイング』(共著、日本経済新聞出版)などがある。
【目次抜粋】
第1章 前提条件:心はない
パンデミックという人類滅亡リスク/資本主義は限界を迎えたのか?/日本というガラスの城/「ウェルビーイング産業」への転換を/自殺を「悪」と切り捨てていいのか?/日本人が見落としがちな「無意識」の利他性/心はすべて、幻想である/意識は「記憶のための劇場」である/「脱人間」という不安の超克 etc.
第2章 必要条件:死を想う
心がなくて本当によかった/いま死んでも、あとで死んでもたいした違いはない/ふたつの本能――「怒り」と「共感」/他者を「許す」ことはなぜこんなに難しいのか?/一生の長さはたったの0.1ミリ/人間には、過去も未来もない/わたしたちには「いましかない」し「いまはない」/主観的には死は存在しない/あなたは本当に「あなた」なのか? etc.
第3章 幸せの連立方程式
生きてよし、死してよし/幸福学――幸せは原因にも結果にもなる/「ありのままに!」――他人と自分を比べない/「やってみよう!」――主体的に生きる/「なんとかなる!」――未来を信じる/「ありがとう!」――ともに生きる/戦いのエンジンから愛のモーターへ/「ルールに従う」という思考停止/サイエンスとしての倫理学 etc.
第4章 解:わたしは、地球であり宇宙である
わたしは地球の一部以外の何者でもない/蔓延しているのはウイルスか、それとも人間か?/人類は「安心安全」かつ「不幸」になった/「一番大切なこと」を一番大切にしよう/中心に無がある国、日本/近代科学が見つけた、近代的価値観の限界/そして、東まわりと西まわりが出会うとき/すべてを包摂する「ウェルビーイング資本」主義 etc.
第5章 分岐点:愛するか、滅びるか
心の地動説/「世界中の生きとし生けるものを愛す」ことは可能か?/人間という合体動物/世界はあなたである/世界を100パーセント愛することをイメージしよう/敵は消え去る/「自利利他円満」というひとつの円/あなたが幸せでありますように etc.
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この作品のレビュー
平均 3.4 (6件のレビュー)
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日本人の孤独
心配性遺伝子 内向きの鬱積 110万以上の引きこもり
現代、自由度は増したが、普通の人へのセーフティネットの多様化が不十分
人を個人としてではなく、みんなと見ている
欧米:強い…個が自発的な利他行動 日本:無意識な集団主義の利他性
心は幻想
意識=脳が無意識に行っている処理をエピソード記憶するためのもの
過去も未来も幻想 今しかない 主観的には死は存在しない
幸せの因子
ありのままに 他人と比べない どうなりたいか?
やってみよう 主体的に生きる 自分の道を歩むほどつながりやすくなる
なんとかなる 未来を信じる ポジティブ思考からポジティブな結果
ありがとう ともに生きる 社会貢献活動に関わる
合意できる上位の共通点
アメリカ:中心に愛と自由
日本 :中心に”無”がある (絶対真理がない) 無私
ウェルビーイング中心主義 世界人類を愛そう 100%
Ikigai 4つの円
1.好きなこと 2.社会が必要とすること 3.得意なこと 4.収入を得られること
4つの円が重なるところがIkigai
4つの円がひとつに一致=自己利他円満 =100%愛する続きを読む投稿日:2022.08.20
著者も、プロローグの部分で危惧している。
「本書を後半だけ読むと、奇をてらったトンデモ本に見えるかもしれない」と。
壮大な理想論だ。タイトルの通り「幸福論」、いや、もう、著者の願いというか、思い…があれこれと述べられており、もはやエッセイに近い。後半だけ読まないよう、順に前から読んでいけば、それなりに学術的な裏付けや、研究結果も付言されてはいるが、言いたいことを言い放ったものという感が強い。
けっして間違ったことは言ってはいないので、単なるトンデモ本ではないが、常に「だから?」という思いがよぎる。
「いずれにせよ、立ちも戻るべきは「死んだらなにもなくなる」という客観的事実である。」
その事実に立ち返ると、どうなる?
「人間の心にいきいきと湧き上がるクオリアも、わたしはすべて幻想だと考えている。クオリアがすべて幻想であること、それはすなわち、「心はない」ということだ。」
割りと序盤の記述だが、もうこのあたりで、そうなの?じゃぁ、どうすれば?と反問だらけ。
死について、心について、いかに捉えるか、いかに向き合うか、理想を語るが、そのために何をすれば、どう実践していけばという話がない。新・幸福論の概論故にか、あるいはガイドブックじゃないから、そこは書いてないということか。
「みんな、もっと自分のゲームをするべきだ。誰かが決めたルールに従うゲームに身を任せるのではなく、自分でゲームをつくるべきなのだ。」
それが出来れば誰も苦労しないよ。
心、死、そして幸せについて、多角的に考察し、著者自身の捉え方を示してはくれる。それが、“目の前の「視野の狭さ」から脱するためだ”と、言われて、「死ねばなにもない」「心はない」と得心して、どう行動に移せばよいのか、本書を読み終わったときに、さぁ、動き出そう、という思いには駆られなかった。
「地球的46憶年の視点や現生人類約20万年の視点から、いまという瞬間をたまたま生きる自身の存在の意味について、視野を広げて思考するためだ。その姿を、自分なりに捉えるためだ。」
要は、自分は小さな存在だと思えばよいことか?
という点では、冒頭に紹介されている、イギリスのシューマッハ・カレッジにある「Deep time walk」という、地球が生まれてから現在までの46憶年の歴史を、4.6キロメートルにたとえて歩く活動は、面白い試みだ。
「わたくしたち人類の歴史は、地球4.6キロの旅の最後のたった20センチなのだ。そして、農耕革命が1センチ、産業革命は0.26ミリだ。そして、あなたの歴史は、100年生きたとしても、0.1ミリに過ぎない。
あなたは、この0.1ミリの人生をどのように生きたいだろうか?」
たかが0.1ミリ、されど0.1ミリだ。
間違ったことは、言ってない内容だったが、心に届くかどうか? 私には響かなかった。
P.S. Ikigaiベン図は、ちょっと使えそう。だが、その中心にある「Ikigai」に手が届かないのが、世の中の大半なのだ。
「約80憶人の世界人類がこれをできる世界を目指せたら、まさに自利利他円満な社会である」
ごもっとも。間違ったことは言ってない。そこへのアプローチが示されていない、トンデモ本かな、やっぱり(苦笑)続きを読む投稿日:2023.08.02
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