NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか?
ダニエル・カーネマン(著)
,オリヴィエ・シボニー(著)
,キャス・R・サンスティーン(著)
,村井章子(訳)
/早川書房
作品情報
保険料の見積りや企業の人事評価、また医師の診断や裁判など、均一な判断を下すことが前提とされる組織において判断のばらつき(ノイズ)が生じるのはなぜか? フェアな社会を実現するために、行動経済学の第一人者たちが真に合理的な意思決定のあり方を考える
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この作品のレビュー
平均 4.1 (24件のレビュー)
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標的の裏側から見るとわかる
冒頭で、2つのエラーである"ノイズ"と"バイアス" の違いを説明しているのだが、熟練の奇術師のように劇的だ。
ABCD、4チームの射撃結果の結果から両者のエラーの違いを図で鮮明に示した上で、「じゃあ…これを裏から見たらどうでしょう?」と、軽やかに反転させて標的を消し去る。
すると、"標的について何もわからなくてもノイズが認識できるようになることがこれでわかりますよね"と説明し、さらに後では、結果を待たなくても計測可能であるのだと畳み掛ける。
「ノイズの計測に必要なのは、標的の裏側から見ることだけ」なんですと。
憎たらしいほどうまい。
射撃結果の着弾のバラツキを見るまでもなく、我々はすべからく射撃下手で、身の回りもそこら中でノイズが溢れている。
そもそも脳の機能からしてバラツキがあるし、ニューロンも2度と同じようには働かない。
それなのになんでノイズを目の敵にするのか、望ましいバラツキだってあるじゃないのかという声もあるが、同じ重罪犯の量刑が、裁判官によって、一方で3年、もう一方が7年だったりしたら、公平な正義が下されたと言えるのか。
あるいは、ある保険会社で同じ案件なのに、担当者によって、一方では保険料率が高すぎ、もう一方では安すぎても、均したら結果オーライと言えるのか。
平均すれば正しいなんてことには決してならない。
ノイズが生じさせるエラーに関しては、足し合わされるものであって、決してお互いに打ち消し合うものではない。
ノイズの多いシステムとは、結果、高くつくものなのだ。
個々人がどうせノイズまみれなんだったら、"文殊の知恵"じゃないけど、集団なら少しはまともになるのではないかと思うかもしれないが、一握りの発言者の意向や、最初の意見の影響が後々まで集団の判断に影響を与えたり、個々人の当初の考えよりも集団の意思が極端な方向に振れやすい「集団極性化」の特性もあったりして、なかなか厄介だ。
最終的には、人間の判断なんて当てにならないんだから、ノイズフリーのAIや機械学習アルゴリズムをもっと積極的に使いましょうよっていう結論なんだけど、どうかね。
機械的予測の精度は人間の判断を一貫して上回っているし、大量のデータを食わせた分析は「折れた足」のように、いままで発見が困難だった極めて稀な要素も見つけることができるし、と。
なぜもっとアルゴリズムを使わないのか不思議だ、きっとそこには専門家と抄する人たちの直感への偏愛と、人間性の喪失に対する恐れがあるんだろうと分析しているが、どうなんだろな。
大リーグでも、各チームがデータ分析に力を入れて、極端なシフトを敷いた守備が取られているが、ときおり普通に守っていればアウトにできたんじゃないかっていうゴロが、がら空きのフィールドを転がっていく様を見ると、投げている投手だけでなく、見ている観客も白けさせる。
「アルゴリズムはパーフェクトであってもらいたい」し、「一度でも判断ミスをしようものなら、すぐさま信頼を失って」、退場を命じられるものなのだと著者は指摘しているが、それは人間の過剰な期待によるせいなのか、はたまた人間の感情を無視しているからなのかよくわからない。
本書で最も面白いの「理解と予測」のところ。
調査対象を長年にわたって深く分析し、よく理解したと思っている専門家が、どうして精度の高い予測を行なうことができないのか?
もっと踏み込んで言えば、なんで人口や家族問題に精通し世間から引っ張りだこの社会学者が、勇んで政府の少子化対策の審議会に入っても、一向に問題は改善しないのか、といったことがよくわかる。
どうして社会科学者は、社会問題の因果連鎖を突き止めたことで、現実を理解したと錯覚し、予測も可能だと自信を深めてしまうのか?
後知恵解釈と予測可能性の錯覚の関係は、必読だろう。続きを読む投稿日:2022.08.10
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このレビューはネタバレを含みます
# 意思決定の精度に関する秘孔を突いた一冊
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## 面白かったところ
- 「狙った的が外れる」という事実は見る切り口を変えたらカテゴライズでき、「バイアス」と「ノイズ」で表現されていて膝を打った
…- 「一晩寝かせるといいアイデアが浮かぶ」というアレの正体の根源が「群衆の叡智」であると力説していて面白い
## 微妙だったところ
- 正規分布や公式など、統計学を始めとした、大きな主語で言う「数学」の知見が多く散りばめられていて難しい
## 感想
組織が正しく前に進むための決断について興味があったため読み始めたが、かなり面白い。
人間という1単位で見た場合と、組織で見た場合では決断の際にバイアスがかかる。初めに発言した人間の意見が通りやすいのは、それ以外の人のシステム1が起動してしまうからと言う理屈も興味深い。
人はコンピュータのように様々なカテゴリの数値を分析することは難しいが、階層的にハンドリングしやすい数値で比較することは割りと得意という論も納得がいった。20種類のピザのランキングを付ける際も、闇雲に20種類レビューするんじゃなくて、「魚介系」「肉系」のようにカテゴライズして評価点をつけるほうがやりやすいのは自分でもわかった。
絶対評価ではなく相対評価のほうがマシ。ということである。これはストーリーポイントの概念にも通ずることがあるな。
書いてある内容や引用してある概念は簡単ではないが論じられている内容はかなり面白いため、下巻も楽しみである。続きを読む投稿日:2023.10.25
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