この作品のレビュー
平均 4.2 (14件のレビュー)
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これは筆者が旧ソ連のモスクワ大学で教鞭をとっていた頃とソ連科学アカデミーに出入りしていた頃の記録です。『ソ連崩壊』を歴史、神学、思想の面から考察されていて非常に面白かったです。彼らの事を知る為の一冊。…
これは、『外務省のラスプーチン』こと現在は作家の佐藤優氏が外務省入省後、旧ソ連のモスクワ大学哲学部で教鞭をとっていた頃と、ソ連科学アカデミー民俗学研究所に出入りしていた頃の記録です。『ソ連崩壊』を歴史、神学、思想の面から考察されていて、非常におもしろかったです。筆者はこれを日本の大学生に読んでほしいと書いておりますが、個人的な見解だとこの本を読みこなせる日本の大学生はいいところ5%いるかいないかではないかと思っております。その理由としてはやっぱり難しい。特に民族問題にかかわる箇所は単行本の『甦る怪物(リヴィアタン)』だったときも含めて今回で3回目になりますが、いまだに理解できないものがありますし、大学生は恋愛なども含めて楽しいものや出来事がいっぱい回りに溢れておりますから…。
それはさておき、最近、プーチン氏が大統領に再選され、原油や天然ガスの高騰を背景として定刻として復活を遂げ、不気味な存在感が増してきたロシアですが、この本に出てくるモスクワ大学の学生は現在、国家の中枢として屋台骨を支えているという現実から考えてみても、彼らのことを知るための一冊として、是非オススメしたいと思います。
今回、新装版として文庫に書き下ろしで収録されてある『文庫版あとがき』は非常に濃ゆいもので、彼がロシアの地で明日のエリートを担う学生たちと真摯に向き合ってきたことを読みながら連想してしまいました。そのときのことが筆者のの専攻であるプロテスタント神学を機軸としてモスクワ大学の彼が教えた学生たちとの対話が描かれる前半部、最初に描かれるのはアフガンからの帰還兵あるベルトとその婚約者のレーナ。彼が筆者に告白する自身のアフガンでの体験は漫画『憂国のラスプーチン』に描かれてもいるのですが、よくあれを漫画化したもんだなと読んだときは度肝を抜かれ、アルベルトが『佐藤先生、僕は救われたいんです』という言葉がいかに切実なものであるかが本当によくわかりました。
閉鎖極秘都市出身の学生であるナターシャは成績優秀な学生で、将来有望な研究者となるはずでしたが、ソ連崩壊の混乱から彼女が選んだ選択肢も、また僕の心の中に重いものを残してくれました。
さらに筆者は『ソ連科学アカデミー民俗学研究所』に『院生』として出入りすることになります。ここは旧ソ連の超エリート期間で、後半部に延々とユーラシア大陸の複雑な宗教や民族問題がつづられ、セリョージャやチシュコフ、アルチューノフなどのまさに『精鋭』とも呼ぶべき『頭脳』との対話は非常にスリリングなものでありました。
『バクー事件』では「民族問題を力で解決した」ということで、ここからソ連は崩壊への坂を転げ落ちていくことを暗示し、『主権宣言』では宗教とマルクスと民族・領土問題をハイレベルな意見交換をセリョージャと交換し、彼から筆者は『境界線上の人間』といわれ、これが筆者の今後の作家活動の『視点』につながっていくのだな、ということを感じました。
ゴルバチョフ大統領がクーデターがおき『ぎっくり腰』で政権が取れないという騒ぎになっていたころに筆者はマルクスへ立ち返ることの必要性と意味を問い直すところで単行本では終わっておりました。しかし、あとがきとして追加収録されてある『プーチン論』ではふー鎮台跳梁が2012年に大統領に再選され、『甦る怪物』として21世紀に強大な『帝国主義国家』として存在感を増しつつあるロシアとプーチンとを、彼がかつて教えていたモスクワ大学の学生や政治家のゲンナジー・ブルブリス氏との対話を基に考察されていて、そのあまりのディープな世界にのけぞりつつも、これを読み解くことが重要なことだなと思って、ここに紹介する次第です。続きを読む投稿日:2012.09.12
ソ連崩壊前後のロシア知識人層との対話談。前半はモスクワ大哲学部の学生との知的交流で、広範は民族学研究所でソ連と民族論について語る。最後のプーチン論は必読。当時はインフレで学生の生活が苦しく、著者は翻訳…等の助手を頼んでいたそう。エリート層が外資の小間使いをしている様子が描かれていた。
ソ連崩壊については「最後の転落」と重なる部分が多い。遠隔地ナショナリズムは初出だったが、ソ連の周辺から崩壊していくというのは共通認識に思えた。トッドは衛星国だったが、本作は連邦内の共和国の民族問題だ。マルクスにはない(?)民族理論をスターリンが密かに導入し(回教)、普遍的な共産主義と調和するためインテルナツィオナリズム(ユダヤとツィガン以外の民族間友好主義)を推進した(民族籍の話や宗教問題はその典型?)。トッドが指摘したような理由でエトノクラチヤ(民族独裁主義・内向きの人種主義)が発展し、共産党エリート以外が立場を窺うようになった。
そんな中起きたナゴルノカラバフの紛争から、バクー事件・トビリシ事件を通じて問題がバルト三国に飛び火して主権宣言乱立を経てソ連崩壊へと繋がっていく。
結局、ソ連崩壊は民族問題だったと思う。普遍的な共産主義の全体主義体制を構築したのに、中途半端に全体主義を維持しようとしてペレストロイカを遂行した結果、ロシアならではの民族主義の復活を招いてしまったということ。でも自由化による資本主義の荒波を受けて国家機能強化が叫ばれているという。ロシアを中心とした地域経済圏を構成するユーラシア主義(ファシズム?)。ソ連も本質的にはユーラシア主義かもしれないと。共産主義という建前とユーラシア主義という本音で見ると面白いかも。共産主義というメッキが剥がれて軍事主体の帝国主義も経済主体の保護主義も同じで、外資に蹂躙されない強い国を取り戻すということだろう。著者はソ連が非共産帝国ロシアとして甦ったと表現している。ここで伏線回収!とても気持ちよかった。TPPも大東亜共栄圏と同じく地域ブロック経済圏と考えるのは当然といえば当然だが新鮮。
神学やマルクスについての話は知識が足りなかったので敬遠したが、教養が付けば再挑戦したい。外交官でなくても自国/世界の思想的素養は大事だということ
小説風だったので雑記が多かったが、エッセンスは抽出できたのではないかと思う。2021/9/20続きを読む投稿日:2022.03.23
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